みなさんは、勉強を習慣化できているでしょうか。「勉強したほうがいい」となんとなく頭ではわかっていても、なかなかやる気が出なかったり、まとまった時間をとれなかったりなど、実行のハードルはたくさんありますよね。
そこで、今回は「マンダラート」と呼ばれる手法を紹介しつつ、勉強を確実に習慣化するための作戦をお教えしましょう。
習慣化の方法を考えるのにぴったりな「マンダラート」
「マンダラート」はもともと、仏教用語で「宇宙」を表す「曼荼羅(マンダラ)」と「アート」を組み合わせた造語。デザインコンサルタント今泉浩晃氏の著書『創造性を高めるメモ学入門』(1987年)が初出で、発想法の一種として普及しました。
マンダラートの基本形は、大きな正方形が3×3の9マス、大きな正方形ひとつのなかに小さな正方形が3×3の9マス、計81マスの表です。この81マスすべてを、目標やそれを達成するための戦略で埋めていきます。
現在はメジャーリーガーとして活躍する大谷翔平選手も、じつは高校時代にマンダラートを使っていたことがあるそう。彼は「ドラフト1位で8球団から指名される」を目標に掲げ、目標達成のための戦略をマンダラートに書き込んでいました。あの大谷選手も実践していたとなれば、みなさんもマンダラートがじわじわと気になってきたのではないでしょうか?
では、どうやってマンダラートを作成すればよいのか、次項で見ていきましょう。
マンダラート作成の手順
マンダラートは、以下の4ステップで作成することができます。
- 81マスの中心に、最終目標を書く
- 周囲の8マスに、最終目標の達成に必要な要素を8つ書く
- 最終目標の達成に必要な要素8つを、大きな正方形それぞれの中心に置く
- 各要素の周囲に、その要素から連想される言葉をさらに8つずつ書く
今回は、「勉強を習慣化する」を最終目標としたマンダラートを、この4ステップに沿って筆者が実際につくってみました。
【ステップ1】81マスの中心に、最終目標を書く
最初に、今回の最終目標である「勉強を習慣化する」を中心のマスへ書き入れました。このステップはこれで完了です。
【ステップ2】周囲の8マスに、最終目標の達成に必要な要素を8つ書く
次に、「勉強を習慣化する」という目標を達成するために考えられる方法を、周囲の8マスに書きます。筆者は「1日5分の勉強」や「ゲーム感覚で勉強する」といった方法を考えました。
このステップでは、最終目標を達成するために自分ができそうなことを設定するとよいでしょう。最終目標とこれら8つの要素がマンダラートの支柱になるため、この時点でハードルが高すぎたり、あまり現実的でなかったりする内容を書くのは避けることをおすすめします。
【ステップ3】最終目標の達成に必要な要素8つを、大きな正方形それぞれの中心に置く
そして3つめのステップでは、2つめのステップで設定した8つの要素を各方向にスライドさせ、外側の8つの大きな正方形の中心に置きます。
【ステップ4】各要素の周囲に、その要素から連想される言葉をさらに8つずつ書く
さて、最後のステップです。外側の正方形の中心に置いた8つの要素に関連するキーワードを周囲に書き出しました。勉強を習慣化するには、日常といかに連続性があるか、つまり普段の生活へ勉強をいかに取り込めるかが重要になります。場所や時間帯、より具体的な勉強法などを洗い出し、勉強へのハードルを低くすることを意識して、残りのマスをすべて埋めました。
「勉強の習慣化」に役立つポイント2選
「勉強を習慣化する」を最終目標に、マンダラートを作成することができました。ここで、習慣化のために重要な考え方をふたつご紹介しましょう。みなさんの勉強にもきっと役立つと思います。
1. できるだけ小さい目標を立てる
ハードルが高すぎる目標を設定すると、もし計画通りにいかなかった場合、勉強の習慣化にあっけなく挫折してしまう可能性があります。そんな状況を防ぐには、簡単で、気軽にできる小さな勉強の目標を立てることがおすすめです。
自己成長戦略の調査や執筆活動を長年続けているスティーブン・ガイズ氏も著書『小さな習慣』のなかで、「スクワットを毎日1回」といった、極端にも思えてしまうほどの小さな習慣を続けることが習慣化の秘訣だと伝えています。
たとえば今回、「1日5分の勉強」という方法をマンダラートのなかに書き入れました。1日たった5分で勉強を本当に習慣化できるのかと、不安に感じるかもしれません。しかし、最初から長時間勉強しようとしたら、毎日続けるのが嫌になってしまうに違いないでしょう。
たった5分という短い時間でも、集中して勉強できれば、その日は目標達成。それが何日も続くと、勉強時間よりも「継続した」という事実のほうへ焦点が当てられ、大きな達成感を抱くことができるのではないでしょうか? そうすれば、5分が10分に、10分が30分に、といったように、勉強時間を日に日に伸ばしていくことも可能なはず。最終目標として充分な時間勉強できるようになるために、まずはなるべく簡単で、気軽にできる小さな目標を立ててみてください。
2. 普段の生活に即した勉強法を実践する
先ほども触れましたが、普段の生活を大きく変えなければならないような方法はあまりうまくいきません。代わりに、日々の動作の延長線上で自然にできるような方法で勉強に取り組むと、楽に続けることができるでしょう。
たとえば、筆者はマンダラートに「コーヒーを飲んだら新書を5ページ読み進める」と書き入れました。この「コーヒーを飲んだら」のように、勉強へ自然と移れる引き金のような行為のことを「アクショントリガー」と言います。「この動作をしたら、こういった勉強をする」という流れを具体的につくっておくと、そうでない場合に比べ勉強に取りかかりやすくなるのです。
ニューヨーク大学教授のP・ゴルヴィツァー氏とチューリッヒ大学教授のV・ブランドスタッター氏は、大学生に「いつ・どこで・レポートを書くか」を尋ねる実験を行ないました。すると、その質問の答えを事前に書き出したグループは、書き出さなかったグループに比べて、課題達成率が2〜3倍になったそう。この結果からわかるように、「どんなタイミングで勉強をするか(=アクショントリガー)」を決めておくことは、勉強の実行、ひいては習慣化に大いに役立つのです。
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みなさんも、自分だけのマンダラートを作成して、毎日続けられる学習習慣を身につけてくださいね。
(参考)
今泉浩晃(1987),『創造性を高めるメモ学入門』, 日本実業出版社.
日経doors|絶対挫折しない勉強計画の立て方 習慣化のメソッドは
スティーヴン・ガイズ(2017), 『小さな習慣』, ダイヤモンド社.
Gollwitzer, Peter M. and Veronika Brandstatter (1997), “Implementation Intentions and Effective Goal Pursuit”, Journal of Personality and Social Psychology, Vol. 73, No. 1, pp.186-189.
横山典子(2003),「中高年者における運動教室への参加が運動習慣化個人的要因に及ぼす影響 ー個別実施運動プログラムと集団実施運動プログラムの比較ー」, 体力科学, Vol. 52, pp.249-257.
STUDY HACKER|1日 “最低1時間” 勉強するにはどうすればいいのか? 「マンダラート」で考察してみた。
【ライタープロフィール】
YG
大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。