
時間管理術を実践しても、なぜか「仕事がスムーズに運ばない」「時間が足りない」「忙しさが解消されない」と感じることはありませんか?
その原因は「扱う人の特性」と「時間管理術」の相性が悪いせいかもしれません。
どんなに効果が叫ばれていても、その時間管理術があなたに合っていなければ、ただただ無駄な時間を生んでしまうでしょう。
そこで本記事では、時間管理の王道とも言える「タイムブロッキング」と「時間管理のマトリクス」について、それぞれの特徴・メリットとデメリット、向いている人・向いていない人、そして向いていない人への代替となる時間管理術をご紹介します。
この記事を読むことで、自分の特性に合った時間管理術の選び方がわかります。
時間管理の王道「タイムブロッキング」とは
「タイムブロッキング」は、生産性とウェルビーイングのバランスをうまくとりながら、作業に集中する時間を効果的に確保できる時間管理術です。*1
1日をブロック(一定の長さの時間枠)に分け、各ブロックにタスクを割り当てていくやり方です。*1

このように1日の流れを事前に計画できれば、その時間は割り振られたタスクに集中でき、仕事のやりすぎも防止できます。*1
また、この時間管理術は計画倒れや先送りを防ぎ、マルチタスクを防ぐ効果もあります。
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タイムブロッキングのメリットと向いている人:柔軟な調整ができるタイプ
タイムブロッキングがピッタリなのは、予定通りいかなくても柔軟に調整できる人です。
なかでも、複数のタスクを抱えて時間の使い方が曖昧になりやすい人、自己投資や学習の時間もしっかりと確保したい人、軸がないと会議や打ち合わせをどんどん入れてしまう人などが最適です。
また、自分の集中力の「波」を自覚している人なら、計画も立てやすいのではないでしょうか。朝型・夜型など、自分のエネルギーが高い時間帯を知っている場合、適切なタスク配分ができるでしょう。
タイムブロッキングが向いていない人・デメリット:完璧主義者
一方、完璧主義者の場合、タイムブロッキングとの相性は最悪かもしれません。
なぜなら、たったひとつの予定がずれただけで、「計画が全て崩壊した=自分はダメだ」と感じてしまうリスクがあるからです。
心理学の研究では、完璧主義は「二分法的思考(白黒思考)」や「硬直性」と強く関連していることが示されています。*5 つまり、「完璧か、さもなくば失敗」という極端な評価をしやすい傾向があるのです。
予期せぬ出来事(会議延長、急な連絡など)で計画が破綻することなど、私たちビジネスパーソンにとっては当たり前のこと。柔軟な再配置が苦手な完璧主義者にとって、この時間術は大きな負担となるでしょう。
つまり、細密スケジュールは「守れなかった自分」を毎日量産する原因となり、自己肯定感を損なう可能性があるのです。
※ただし、「スケジュールを完璧に守ること」自体を目標にできるタイプの完璧主義者には、むしろタイムブロッキングが合う場合もあります。自分がどちらのタイプか見極めることが大切です。
タイムブロッキングが合わない完璧主義者におすすめの時間管理術:ピック・スリー
完璧主義な方には、Facebookの創業期メンバーで起業家のランディ・ザッカーバーグ氏が提唱する「ピック・スリー」がおすすめです。
人生を構成する主要な5つのカテゴリーWork(仕事)・Sleep(睡眠)・Family(家族)・Fitness(運動)・Friends(友人)から、毎日3つだけを選び、その日はその3つに集中します。*2
ポイントは、完璧主義を否定するのではなく、「今日完璧にする対象」を3つに絞るという発想です。
残りの2つは「失敗」ではなく、「今日の完璧対象から外した」だけ。明日また選び直せばいい。こうすることで、完璧を目指す欲求はそのまま満たしつつ、スコープを絞ってエネルギーを集中させることができます。
そしてメタ的には、「毎日3つ選んでそこに全力を注ぐ」というルール自体を完璧に運用することを目指せます。完璧主義者の几帳面さが、むしろプラスに働く手法なのです。
※ピック・スリーは学術研究に基づく手法ではなく、ザッカーバーグ氏自身の経験から生まれた実践的なアプローチです。ただし、「対象を絞ることで認知負荷を減らす」という考え方自体は、心理学的にも理にかなっています。
優先順位を決める時間管理術「時間管理のマトリクス」とは
日々やることが増えていく。でも時間は有限……。この状況をうまく運ぼうとするときに役立つのが「時間管理のマトリクス」です。
時間管理のマトリクスとは、重要度と緊急度を縦横の2軸にして、すべてのタスクを4領域に分類し、優先順位を明確にしていく方法のことです。*3

- 第1領域:納期直前・顧客からのクレームなど即時対応が必要な領域
- 第2領域:中長期計画・人材育成・技術開発など将来をつくる重要領域
- 第3領域:軽い電話・突然の来客対応など緊急だが重要ではない領域
- 第4領域:時間の浪費とも言える緊急でも重要でもない領域
これにより私たちは、限られたリソースを有効に配分し、生産性を向上させられます。
時間管理のマトリクスが向いている人・メリット:論理的思考が得意な人
時間管理のマトリクスがピッタリなのは、論理的思考が得意で「緊急」と「重要」の違いを冷静に見極められる人です。感情ではなく客観的な基準で判断でき、分類作業そのものを苦痛に感じないタイプとの相性が抜群です。
また、タスクの全体像を可視化し、優先順位の根拠を明確にしたい人にも有効ではないでしょうか。
特に「緊急対応」に追われやすく、重要だけど緊急じゃないことを後回しにしてしまう自覚がある人ほど、このマトリクスで長期的な成果につながる仕事の時間を確保できます。研究でも、人は重要なタスクより緊急なタスクを優先してしまう「単なる緊急性効果(Mere Urgency Effect)」があると示されています。*6
このマトリクスは、その傾向を意識的に修正するのに役立つでしょう。
ただし、タスクが5〜15個程度の中程度であることが前提。多すぎると分類疲れを起こし、少なすぎるとマトリクス自体が不要になります。
時間管理のマトリクスが向いていない人・デメリット:判断疲れしやすい人
私たちは日々、大小さまざまな判断を迫られています。そしてその判断は、誰にとっても「判断疲れ(Decision Fatigue)」として蓄積していくもの。心理学者のロイ・バウマイスターらの研究により、判断を重ねるほど意思決定の質が低下することが明らかになっています。*7
そして、その疲れをより強く感じてしまう傾向の人もいます。そうした「判断疲れしやすい」タイプの人にとって、この手法は相性が悪い時間管理術かもしれません。
なぜなら、新たに降りかかるタスクを毎回「これは緊急? 重要?」と判断して4領域に振り分けるという、新たな「判断」が加わることになるからです。
特にタスクが多い日は、分類作業だけで脳のエネルギーを消耗し、肝心の実行まで辿り着けない――なんてことも……!?
判断疲れしやすい人におすすめの時間管理術:Eat That Frog!
そうした状況に陥らないためには、最初の段階で迷いをなくしてしまうことです。
おすすめは、「Eat That Frog!」という手法。
直訳すると「カエルを食べてしまえ!」ですが、もちろんその言葉どおりではありません。これはつまり、最も苦手なタスクや難しいタスクに最初に取り組んでしまおうという考えです。*4
それさえ完了してしまえば、残りのタスクが楽になり、1日中前向きで生産的なマインドセットを維持できるということ。先延ばし癖の克服や、集中力と生産性を高めること、ストレスの軽減などに効果的だと説明されています。*4
実際、2020年に発表された心理学研究では、難しいタスクを先に片付ける戦略が自己効力感を高めることが実験で確認されています。*8
興味深いことに、多くの人は「簡単なタスクから始めた方がやる気が出る」と予測しますが、実際には逆だったのです。
そして肝心なのは、「最も嫌なタスクを朝イチで片付ける」というルールが固定されていれば、判断疲れしやすい人の天敵 "選択肢" を減らせるという部分です。
必要に応じて優先順位を入れ替えながら、どんどん "カエル(嫌・苦手な仕事)を食べていけばいい" だけなのですから。
※ただし、この手法は「朝に集中力が高い人」を前提としています。夜型の人や、朝にエンジンがかかりにくい人は、自分のピークタイムに合わせてアレンジするとよいでしょう。
自分の特性に合った時間管理術を選ぼう
時間管理術は万能ではありません。効果が高いと評価されている手法でも、あなたの特性と合わなければ、かえって時間を奪い、自己肯定感を損なう可能性があります。
本記事では、代表的な時間管理術であるタイムブロッキングと時間管理のマトリクスについて、メリット・デメリット、向いている人・向いていない人、代わりに試したい時間管理術(ピック・スリー/Eat That Frog!)を紹介しました。
- 柔軟に予定を組み替えられる人や、自己投資の時間をしっかり確保したい人には、タイムブロッキング。
- 完璧主義が強い人には、「今日完璧にする対象」を絞るピック・スリー。
- 論理的に優先順位を整理したい人には、時間管理のマトリクス。
- 判断疲れしやすい人には、「一番難しいタスクから片付ける」Eat That Frog!。
大切なのは、自分の思考パターンや行動特性を理解し、それに合った時間管理術を選ぶことです。
柔軟性があるのか、完璧主義なのか、判断疲れしやすいのか――自分を知ることが、最適な時間管理術を見つける第一歩です。
あなたに合った方法で、持続可能な働き方を手に入れましょう。
*1: Forbes JAPAN|米国58%の労働者が取り入れる時間術 タイムブロッキングを今日から実践
*2: ランディ・ザッカーバーグ著,三輪美矢子翻訳(2020),「ピックスリー: 完璧なアンバランスのすすめ」,東洋経済新報社.
*3: 富士フイルム|Future CLIP|仕事の優先順位を見きわめる「時間管理のマトリックス」
*4: Austin Peay State University|The "Eat the Frog" Technique - Handout 2025
*5: Egan, S. J., Piek, J. P., Dyck, M. J., & Rees, C. S. (2007). The role of dichotomous thinking and rigidity in perfectionism. Behaviour Research and Therapy, 45(8), 1813-1822.
*6: Zhu, M., Yang, Y., & Hsee, C. K. (2018). The Mere Urgency Effect. Journal of Consumer Research, 45(3), 673-690.
*7: Baumeister, R. F., & Vohs, K. D. (2007). Self-Regulation, Ego Depletion, and Motivation. Social and Personality Psychology Compass, 1(1), 115-128.
*8: Kupor, D., & Tormala, Z. (2020). To build efficacy, eat the frog first: People misunderstand how the difficulty-ordering of tasks influences efficacy. Journal of Experimental Social Psychology, 91, 104032.
髙橋瞳
大学では機械工学を専攻。現在は特許関係の難関資格取得のために勉強中。タスク管理術を追求して勉強にあてられる時間を生み出し、毎日3時間以上勉強に取り組む。資格取得に必要な長い学習時間を確保するべく、積極的に仕事・勉強の効率化に努めている。