“情報をつなげる“ 勉強術「KJ法」を試してみた|「記憶力が落ちた」と感じる人に最適

勉強している様子

仕事から帰って、疲れた頭のまま仕事の資料や資格の参考書をめくると——、そこには何度も引かれたアンダーライン。

「……また、同じページを読み返している」

社会人になってから感じる記憶力の衰え。仕事しながらの資格取得やリスキリングに挑戦しようとしても、何度読んでも頭に入らず、気がつけば同じページを行ったり来たり。「昔に比べて覚えが悪くなった」「効率的に勉強する方法があるはず」と焦りを感じているビジネスパーソンは少なくないはずです。

じつは、大人の記憶力を上げる方法は存在します。私たちの脳は、バラバラの知識を詰め込むのではなく、「情報と情報を関連づけて」覚えるように設計されているのです。

今回は、仕事しながら資格取得や新しいスキルの習得を目指す人に、特におすすめしたい関連づけのノート術である「KJ法」をご紹介します。記憶力が落ちたと感じている人でも、驚くほどスムーズに知識が定着する——その理由と具体的な活用法を、筆者自身の体験とともにお伝えしていきましょう。

勉強できる人は「関連づけ」で覚えている

「勉強できる人は記憶力が高い」という印象がありますよね。でも、彼らはもともとの記憶力が高いというよりも、関連づけて覚えることで記憶を定着させているのです。

勉強できる人の覚え方を知るには、東大生のノートがもっともわかりやすいでしょう。勉強内容は関連づけて覚える、と語るのは東大出身であり医学部予備校レユシール講師の片山湧斗氏。

例えば、体の部位を覚える時に、神経だったら神経のカテゴリ、筋肉だったら筋肉のカテゴリ、骨だったら骨のカテゴリと覚えていくことによって、ただ漠然と「ここに何があったっけ?」って覚えるのではなくて、自分で連想して「あっ、あそこにあの筋肉があったから、この筋肉も近くにあるな」というように、記憶の関連付けを作っていく。*1

ただ知識を反復して覚えておくよりも、バラバラの情報に関連性を見つけて、学習内容を一枚の図として脳に記憶しておくのですね。つなげて記憶していますから、ひとつ思い出せば芋づる式にほかの知識も浮かびあがるわけです。

そもそも「思い出す」ためには、何かのきっかけがないとできないものです。つまり、本来私たちは、関連づけをして記憶しています。

カリフォルニア大学の研究者らは、「思い出す」プロセスはエピソード記憶を再活性化させる可能性がある、と述べています。

研究者らは実験に参加した被験者たちに、学習した内容を思い出してもらいました。その際、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、脳のどの部分が活性化するかを検証。すると、内側頭頂葉と外側頭頂葉領域が活性化することが判明したのです。*2

じつは、この領域は「エピソード記憶」にあたる部位。つまり、私たちは知識をそのまま記憶しているのではなく、情報同士をつなげ、エピソード化して記憶に残しているのです。前出した東大生のノート術は、脳の仕組みからして理にかなった方法と言えますね。

脳が記憶している際のイメージ

関連づけに活用できる「KJ法」とは?

前項では記憶するためには、「関連づけ」が効果の高い方法だと紹介しました。そこで、今回ご紹介したい方法が「KJ法」です。

KJ法とは、1967年に文化人類学者である川喜田二郎氏が著書『発想法』にて、紹介した情報の整理方法です。もともとは、川喜田氏が文化人類学のフィールドワークで活用していたもの。東大の研究者や人材をサポートする、官民ファンドの東大IPCのサイトでは、KJ法を次のとおりに説明しています。

一般的に、KJ法では、カード状の紙(付箋)に1つ1つの情報を記し、そのカードを並べ変えたりグルーピング(グループ化)したりすることで、情報を整理していきます。*3

つまり——

  1. カード(付箋)にそれぞれ情報を書く
  2. そのカードを並べ変える
  3. グループ化して整理する

ポイントは連想しながら枝状に書くマインドマップと違って、始めから関係性を考える必要がない点です。関係性を気にせず情報を書き出し、カードを入れ替え図解化します。完成した図を見れば、ひと目で関係性がわかるでしょう。

詳しい手順については、次の項目で筆者の実践とともに見てみましょう。

マーケティング戦略の勉強にKJ法を試してみた

今回筆者は「デジタルマーケティング」を学ぼうと、このテーマでKJ法を活用してみました。

付箋の写真

付箋の大きさに迷ったものの、一枚に情報を多く記入したいと考えたため、短冊状の付箋ではなく、「75×75mm」の付箋を選びました。これなら、一枚に収められそうです。

付箋に情報を書き出す

まず始めは、付箋に情報を書き出します。そもそも、「デジタルマーケティングとは?」と聞かれてもひと言で答えられない筆者。調べながら付箋に簡単にまとめてみます。

「デジタルマーケティング」についてざっくりまとめて付箋に書き出した

「デジタルマーケティング」のザックリとした意味を書きましたが、まだ理解は十分ではありません。であるなら、似ているものと比較するために「WEBマーケティング」の意味も書き出し——

「WEBマーケティング」の意味も付箋に書き出した

調べるうちに未知の用語があれば書き出し、もちろん効果や将来性なども付箋に書き出します。できるだけ付箋に書き出したものをボードに貼ったのがこちら。

関連する単語を書き出し、ボードに貼った

付箋をグループ化

次は前項で作成した付箋をグループ分けにします。類似している情報の付箋を重ねて貼り、ひとつの塊にします。

付箋をグループ化した

「マーケティング」「チャネル」「種類」……など、関連性のあるものをグループ化。グループ化したら、付箋の塊同士も関連性の似ているものを近くに配置します。

記号を用いて図解化

グループ化したものを、記号を用いて関係性を図解化します。筆者は主に「→」を使いました。

グループ化したものを、記号を用いて関係性を図解化した

たとえば、Webに特化した「Webマーケティング」は「デジタルマーケティング」の一部。「大(デジタルマーケティング)→小(Webマーケティング)」の関係性があるため、以下のとおりに記しました。少々見づらいかもしれませんが以下をご覧ください。

グループ化したものを、記号を用いて関係性を図解化し、アップで撮影した

右ページもアップで撮影してみました。上部ではマーケティングオートメーションとCRMについて、下部では将来性についての情報をまとめています。

ノート紙面をアップで撮影した

ノート紙面をアップで撮影した

文章化する

最後に図解化したものを文章にまとめます。東大IPCのHPによると、重要度が高いと思われる情報から順番に文章化するとスムーズに進みやすいとのこと。*3 筆者も重要度の高いデジタルマーケティングの定義から始めて、要約してみました。

最後に図解化したものを文章でまとめた

デジタルマーケティングはデジタル技術を活用したマーケティング戦略。Webマーケティングとは違い、(リアルもネットも)幅広くチャネルを使う。種類はデジタルサイネージ、SNSやアプリ等でユーザーのデータを取得してニーズを得る
(MAとCRMは業務や管理を自動化する特徴がある)

AIの台頭で分析の効率化が進み、市場規模も拡大。加えて情報通信業では、人材が不足しているため、この分野の仕事は将来性がある。

いつもなら、未知の情報の要約に手こずる筆者。始めから文章構成を考えなくとも、すんなりまとめられましたよ。

KJ法なら多くの情報を一度で覚えられる

通常なら筆者は情報収集しても、知識を何度も繰り返し目にしなければ覚えられません。でも、今回のKJ法では「一度で覚えられる」ことを実感しました。その理由は、情報と情報の「関係性をじっくり考えられる」からです。

関連づけの方法にはマインドマップもありますが、KJ法は始めから関係性を考えず、全体の情報から付箋を張り替えてグループ化します。さらにマインドマップと比較して、ひとつの付箋に情報量を多めに書けるのがメリットです。

ただ、デメリットは時間がかかる点。たとえば、場所を選ばなくてもできる単語の暗記なら、スキマ時間に反復するほうが効率的でしょう。一方、KJ法に適しているのは、複雑な概念や広範囲な知識など、暗記より深い理解を必要とする勉強です。

時間的なコストはかかるとはいえ、グループ化の最中は形や色の合うブロックをまとめていくゲーム感覚も得られます。ぜひ、お試しください。

***
大人の勉強法は、単純に頭に叩き込むのではなく「情報に文脈をもたせる」方法が、もっとも効率的です。情報のグループ分けを楽しみながら、勉強内容を覚えてみてくださいね。

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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