情報収集の罠から抜け出す方法。優秀な人が実践する『選択眼』の磨き方

オフィスのデスクで、頭上にノートパソコンをかざして身を守りながら「HELP!」と書かれた小さな旗を掲げ、助けを求めているビジネスパーソンの様子

同僚は簡潔に要点を整理して発言しているのに、自分は調べた情報をうまく活用できない。

後輩の方が的確な情報を選んで説得力のある提案をし、上司から評価されている。

会議室で感じる、あの居心地の悪さ。情報はたくさん集めたのに、肝心なところで使えない。調べれば調べるほど、何が重要なのかわからなくなってしまう。

実は、できるビジネスパーソンと「情報迷子」を分けるのは、情報を探す力ではありません。情報を選ぶ力です

しかも、それは才能でも経験でもなく、脳のクセと心理トリガーを知るだけで誰でも身につけられるスキルなのです。

本記事では、会議で一目置かれ、上司やクライアントから信頼される「情報選択力」を手に入れる3つの視点をご紹介します。

情報を集めても迷わない。そんな判断力を手に入れませんか。

良質な情報にたどり着くための3つの視点とは何か?

1. 問いを立てて、デジタルツールを活用する

私たちはふだん、無意識に「何が正しいんだろう?」と答え探しをしながらネットをさまよいがちです。目的があいまいなまま情報にふれると、判断の軸がなく、どれも「それっぽく」見えてしまう。みなさんも経験があるのではないでしょうか?

たとえば、スマホを片手に「効率のいい勉強法」を調べるとします。「ポモドーロ・テクニックがいいらしい」 「やっぱり朝が最強」 「いや、夜のほうが集中力が高まる研究もある」 と、情報はどんどん出てきます。

つまり、そこに自分なりの問いがなければ、いつのまにか情報の迷子になってしまうのです。 そんなときに効くのが、「問いを立ててから探す」という視点。

じつはこの考え方は、文部科学省も推奨している学びのアプローチです。現在、全国の学校では「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」という方針が打ち出されており、「自ら問いを持ち、学ぶ」という姿勢を育てる授業づくりが進められています。*1

その「問い」を即戦力に変えるのが、デジタルツールです。

「何を知りたいのか?」と自問し、答え探しはデジタルツールを活用する

デジタルツールを活用した工夫例

AI検索アシスタントを使う
ChatGPT や Perplexity などに、まず自分の「問い」を投げかけて情報の方向性を整理する。

キーワード監視ツールを活用
Googleアラートを設定し、関心テーマの最新ニュースだけを受信。
「勉強法 集中力」「夜型 vs 朝型」などのキーワード登録で情報の流入を絞り込む。

ブックマーク・リーディングリストを整備
Chrome拡張「Save to Notion」でWeb記事をタグ&メモ付きで即保存し、情報を整理する。

こうした工夫と活用だけで「迷い疲れ」は激減。情報は探すものではなく、「問いから導くもの」として、情報過多から自分の軸を取り戻せるはずです。

PCの前で目を閉じて情報分析する女性

2. 反対意見にもあえて目を通す

一方、なにかを調べていて「あ、これわかる!」と思える情報に出会うと、人はつい嬉しくなります。 ですが、その瞬間こそ注意が必要です。 自分の考えと「同じ」情報ばかりを集めるクセは、誰にでもあるからです。

たとえば、あなたが「リモートワークのほうが生産性が高い」と思っているとしましょう。 検索で見つかるのは「在宅勤務のメリット5選」などの、自分に都合のいい記事ばかり。 そこで「やっぱり出社のほうが成果が出る理由」や「チーム力を下げるリモート環境」といった「逆側」の視点をあえて入れてみたら、どうでしょう?

「え、それほんとにそう?」と疑いながらも読んでみることで、自分の思考に広がりと柔軟さが生まれてきます。

私たちには、自分の信じたい情報だけを集めてしまう脳の仕組みがあります。それを心理学では「確証バイアス」と呼んでいます。この「確証バイアス」により、知らず知らずのうちに、私たちは視野が狭くなってしまうのです。

生活総合情報サイト「All About」では、確証バイアスの対策として「意識的に反対意見を取り入れること」が有効だと紹介されています。*2

自分の考えと違う意見にあえて触れることで、思考にゆらぎが生まれ、より深い判断につながるのです。

「あれ、これ本当に正しいのかな?」という客観的な視点は、情報選びだけでなく、思考力そのものを鍛える第一歩です。

すぐできる工夫

  • 納得した記事を読んだら、「逆の立場の意見」を検索してみる
  • あえて「反対意見」も含めてブックマークしておく
  • 会議の準備として、「わざと自分の立場に反論する」練習をしてみる

確証バイアスは、誰にでもある思考のクセです。思考が偏っていないか? 盲点はないか? を意識して反対意見もぜひチェックしてみてください。

3. 人に説明する前提で情報を見る

「なるほど」「参考になった」「すごい情報を手に入れた」

そのあと、誰かにその情報を説明しようとした瞬間、頭が真っ白になる。そんな経験、ありませんか?

これは、「分かったつもり」の落とし穴です。 人は、説明してみて初めて「どこが理解できていなかったか」に気づきます。

ノーベル物理学賞を受賞したリチャード・ファインマンは、 「本当に理解しているなら、誰にでも説明できるはずだ」と語りました。この考え方から生まれたのが「ファインマンテクニック」という学習法です。 情報を自分の言葉で人に説明しようとすることで、どこがわかっていて、どこが曖昧なのかが明確になります。

さらに、説明する前提で情報に触れることで、脳が「記憶しよう」「構造化しよう」と働き、情報の「芯」だけを抽出できるようになります。

たとえば、あなたが「マインドフルネスが集中力に効く」という記事を読んだとします。そのまま「へ~!」で終わると、ただの知識止まりです。

しかし、同僚に「マインドフルネスって、何が集中に効くの?」と聞かれて説明しようとしたとき、「えっと、呼吸に集中することで……脳の……」とつまずいてしまったら、それは理解が浅い証拠なのです。

このときに、もう一度要点を調べて、「呼吸に意識を向けることで注意が現在に戻り、集中が持続しやすくなるんだよ」と自分の言葉で整理して伝えられたなら、その情報は本当にあなたの知識になったということです。

「ファインマンテクニック」に関して、STUDY HACKERの記事でたびたび紹介していますので、ぜひこちらも参考にしてください。*3

参考記事:『ファインマンテクニック』で、"わかったつもり" を克服。人気の読書術を実際に試してみた。 - STUDY HACKER(スタディーハッカー)|社会人の勉強法&英語学習

すぐできる工夫

  • 読んだ情報を同僚や友人に1分で説明してみる。
  • AI に「この記事を一言でまとめて」と入力し、自分の理解度と AI の要約を比較する。
  • SNS でシェアする際は「自分の要約」を添えて投稿する。

情報との付き合い方をアップデート

知識を「理解して終わり」にせず、「伝えられるもの」にしていく意識をもてば、情報の取捨選択力も磨かれていきます。 情報を「ストックする」のではなく、「人に届けられる情報」にすることが、選び抜く力につながっていくのです。

情報が多すぎて迷う。 何を信じればいいのかわからない。 そんなときは、探し方を変えるのではなく、情報との向き合い方そのものを見直してみてください。

***

情報があふれるこの時代、 本記事でご紹介した「問いを立ててから探す」 「あえて反対意見を見る」 「説明する前提で読む」、この3つの視点を意識するだけで、「よい情報」にたどり着きます。今日から、あなたの「情報との付き合い方」を、ちょっとだけアップデートしてみませんか?

【ライタープロフィール】
橋本麻理香

大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。

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