
「もっとたくさん本を読みたい」
そう思っているにもかかわらず、実際に習慣化できていないのは、目標設定が適切にできていないせいかもしれません。
読書を習慣化するためには、“成果” ではなく “行動” を目標にすることが大切です。
いったいどういうことなのか、筆者の実践を交えながら説明していきます。
目標は “成果” ではなく “行動” を設定
読書を習慣化したいと思ったとき、「もっと多くの本を読んで知識を身につけ、会議で活躍したい」といった成果を目標にしてはいませんか? 成果は自分でコントロールできるものではありません。人が直接コントロールできるのは自分の行動だけです。
つまり、読書の習慣化を目指すならば成果を目標とするのではなく、自分でコントロールできる行動を目標にして取り組むのが効果的なのです。行動とは「本を1日5ページ読む」などとやることを決めることであり、その行動が成果につながっていくのです。
行動が成果につながった例として、ある個別指導予備校での事例をご紹介しましょう。
- 高頻度で自習室に来ている中学生を対象に、夏期講座中に任意で小テストを実施
- テストの点数=「成果」、テストを受けたかどうか=「行動」と定義し、夏休み終了時にテストを受けた回数(「行動」の数)を評価
- 成果よりも「行動」にフォーカスし、それをほめるサイクルを用いて「行動」に強化刺激を与え、テストを受けることを習慣化
その結果、これまで勉強でほめられたことのない成績下位の生徒が最優秀賞を獲得。毎日テストを受けるという「行動」が、結果的に成績向上という「成果」につながりました。
これと同じことが読書の習慣化においても言えるでしょう。読書を習慣化するためには、成果ではなく行動を目標にすると効果的なのです。
さらに、行動を目標にするにも、目標の細分化が必要となります。
一般社団法人リードマインドジャパン理事の村上隆昭氏は、「大きな目標だけを見据えていると、達成感を得るまでに時間がかかり」ますが、行動の細分化により取り組みやすくなると成功体験を積むことができ、目標達成につながると話します。*1よりまとめた
つまり、「1日5ページは読もう」といった細分化された目標は、達成しやすいという意味で有効なのです。
ページ数ではなく「読了冊数」のような大きなものを目標にしたい人もいるかもしれません。もちろん読了数を目標にするのもいいですが、読書が習慣化されていない段階では読みきることができずに、失敗体験となってしまう可能性があります。失敗体験が重なれば、自信を失い挫折につながりかねません。
挫折を防ぐためにも、行動がより細分化された「ページ数」を目標にしたほうが日々の小さな成功体験を積むことができ、取り組みの継続につながるはずです。

自分に合ったページ数を見つけよう
ページ数の目標設定をする際に大切なのは、自分に合った目標を設定することです。高すぎる目標は挫折する可能性を高めますが、低すぎる目標は達成感を得られません。まずは自分の読書ペースを把握し、高すぎず低すぎない目標値を探りましょう。
ここからは、筆者の実践を交えながらお伝えしていきます。
まずは、自分がどのくらいのペースでどのくらいの量を読み進められるのか、1週間ほど記録してみます。
記録は手帳のウィークリーページを活用し、読んだページ数をメモしていきました。

その日の忙しさ具合によってばらつきはありますが、平均すると1日約11ページが自分の読書ペースだとわかりました。この平均値を筆者の目標ページ数とします。
もう少し読めそうだとも思いましたが、目標ページ数を達成できなかったときに気持ちが挫けてしまいかねないので、無理をしないことにしました。
目標実現の専門家でメンタルコーチの大平信孝氏も、脳には「大きな変化は受け入れずに元に戻そうとする一方、小さな変化は受け入れる」性質があると話していたので、頑張りすぎないことも大切だと思ったからです。*2
読書を習慣化する際にはいきなりたくさん読もうとするのではなく、現時点での読書ペースを把握し、小さな積み重ねをもって習慣化していくことが大切です。
ChatGPTで進捗を管理
読書ペースがつかめたら、設定した目標ページ数達成に向けて取り組んでいきます。
モチベーションに左右されずに行動し達成感を味わいたいので、進捗を可視化しながら実践していきます。今回はChatGPTを活用することにしました。
まずChatGPTに目標と実績を伝えます。
【入力プロンプト】
読書を習慣化するために、毎日11ページを読むと決めました。モチベーション維持のために進捗を可視化したいです。読書記録を毎日送るので、後日、棒グラフにしてください。1月1日の読書記録は12ページです。

ここからは、毎日読書記録を簡単に送信していくだけです。
【入力プロンプト】
1月2日の読書記録は48ページです。
1月3日の読書記録 17ページ

何日か続けてみて、現在の目標ページ数だと余裕がありすぎるように感じました。もう少し、読むページを増やせそうです。
そこで、目標を再設定するためにChatGPTに相談してみました。
【入力プロンプト】
毎日11ページを読むのを目標にしていましたが、余裕があるので目標ページ数を増やしたいです。読書の継続に負担がかかり過ぎない範囲で、どのくらい目標ページ数を増やせばいいですか?


ChatGPTは一日に25ページ読むことを新しい目標としてすすめてきました。
このような目標の再設定をお願いしても、ChatGPTならすぐに具体的な目標値を示してくれて納得感があります。
こんな調子で読書を進めていき、1週間分の記録がたまったので実績を可視化してみました。
【入力プロンプト】
1月1日〜1月7日までの実績を棒グラフにしてください。縦軸がページ数、横軸が日付です。余白に1週間の合計ページ数も記載してください。

作成されたグラフがこちらです。1週間の読書量がパッと見ただけでわかり、「これだけ読めたんだな」という達成感を感じます。
読書記録を1週間、1か月、1年などの単位で積み重ねていけば、達成度が可視化されて読書習慣の安定化を図れるでしょう。
さらに、ページ数だけでなく「自己啓発本」「実用書」といった読んだ本のジャンルも記録しジャンルごとの読書量をグラフ化すれば、自分の知識や関心の幅の広がりに気づき自己成長の実感も得られそうです。
読書管理アプリも便利ですが、このようにパーソナライズされた読書記録をしていけるのが、生成AIを活用するメリットだと今回実践してみて感じました。

負担を軽減して無理なく楽しく
先ほどの筆者の実績のグラフを見てもわかるように、読める量は日によって波があります。最初に設定した読書目標11ページはギリギリ達成できていましたが、仕事が忙しい日などはそれすら難しい日もあるでしょう。
その場合は、「残業で遅くなった日は休みにする」「1ページでも読めればOKとする」など、例外ルールを設定して無理なく継続できる工夫が必要だと思います。
習慣化コンサルタントの古川武士氏も「人は行動目標をサボると自己嫌悪に陥りがちですが、例外ルールさえ設定すれば、挫折せずに済」むと話します。*3
また、継続が習慣化されてくると、慣れから飽きてしまう気持ちが生じるかもしれません。そんなときは並行読書をして気分転換を図るといいでしょう。別のジャンルの本を読んでみたり、自分が好きな作家の本を読んだりしてみるのです。
ちなみに筆者は、分厚い本を読んで疲れてきたときは、薄くてすぐに読み終えられそうな本を選ぶようにしています。
たとえば、最大16ページで10分程度で読み終えられる「文鳥文庫」がおすすめです。
日本文学が多く取り扱われているので、教養としての読書にも役立つと感じています。
ほかにも、エッセイや小説など楽しみながら読めるものを選ぶと気分転換になっていいでしょう。

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自分に合ったページ数の目標設定で行動を管理し、無理なく継続することで、読書習慣を身につけていけます。本記事があなたの行動を習慣化し、成果につなげるためのお役に立てれば幸いです。
※引用の太字は編集部が施した
*1 一般社団法人リードマインドジャパン|行動までのステップを細分化しよう
*2 東洋経済オンライン|意志の力は不要!「すぐやる人」になるコツ2つ
*3 NewsPicks|【習慣化の法則】三日坊主は、あなたのせいじゃない。“変わりたくない脳”に打ち勝つ方法
*4 月間「事業構想」オンライン|1作品最大16ページ 出版業界を驚かせた「文鳥文庫」誕生秘話
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。