もしソクラテスがあなたのキャリアコンサルタントだったら——古代哲学者に学ぶ「なぜ?」の力

パソコン作業の合間に何かを思う、爽やかなビジネスパーソン

キャリア診断を受けても「なんとなく納得できない」「具体的にどう行動すればいいのかピンとこない」という経験はないでしょうか?

じつは、他者の視点を借りて自分に問いかけるという簡単な方法で、驚くほど深い自己理解が得られるのです。本記事では、古代ギリシャの哲学者ソクラテスの対話法をヒントにした、まったく新しい「キャリア診断」をご紹介します。

上司や同僚、友人の何気ないひとことから始めて、「なぜ?」を重ねるだけ。それだけで、従来の診断ツールでは見えてこなかった自分の強みや価値観が浮かび上がってきます。

ソクラテス式問答法とは? そしてキャリア診断への応用

ソクラテス式問答法は、古代ギリシャの哲学者ソクラテスが使った対話法です。「なぜそう考えるのか?」「その前提は本当に正しいのか?」と問いを重ねることで、相手が自分の考えを深く見つめ直し、新たな気づきを得られるようになる手法です。

ただし、本来のソクラテス式問答法は誰かに質問してもらう必要があります。そこでキャリア診断では、自分がソクラテス役を演じて自分に問いを投げ、その答えに対してまた問いを重ねるという応用版をご提案します。

診断ツールが「結果」を与えてくれるものだとしたら、ソクラテス式を応用した「キャリア診断」は「問い」を通して自ら答えを見つけにいくプロセスと言えるでしょう。

対話をするソクラテスの線画イラスト

さまざまな視点からの問いで、自分の考えを深掘りする

では実際に、ソクラテス式を応用した「キャリア診断」の実践例をご紹介します。この手法のポイントは、他者の視点を借りて自分への問いをつくることです。

上司、先輩、同僚、友人、取引先――。それぞれが自分をどう見ているか、どんな情報を与えてくれたかを思い出しながら、その視点に立って自分に問いかけてみるのです。ひとりでは思いつかない角度からの質問が生まれ、驚くような気づきが得られるはずです。

🔵 上司・先輩の視点を活用した問いかけ

まずは上司や先輩から得られる情報を元に、「組織」や「成果」を軸にした問いを自分に投げかけてみます。

評価面談や1on1で聞いた内容、普段の指導を振り返りながら、実際に問いを重ねてみましょう。

【問いを重ねる実例】

「上司が『新人研修の担当をお願いします』と私を指名するのはなぜだろう?」

「教えるのが上手だと思われているからかな」

「でも、なぜ教えるのが上手だと思われているんだろう?」

「後輩によく質問されるし、分かりやすく説明できているからかも」

「なぜ分かりやすく説明できるんだろう?」

「相手の立場に立って、どこで躓くかを想像してから話すからかも」

「それって、私の本質的な強みなのかな? ほかの場面でも活かせているだろうか?」

 
 
対話を深めるコツは、ひとつの答えが出たら「なぜそう思うのか?」「本当にそうだろうか?」とさらに問いを重ねること。たとえば「私は企画力が強みだ」と思ったら、「なぜ企画力が強みだと思うのか?」「その企画力は本当に組織が求めているものなのか?」と掘り下げていく。

この問いかけにより、自分のキャリアが「組織目線」からどう見えているのか、そして自分がそれを “どうとらえているのか” を深く理解できるはずです。普段の評価面談よりもずっと率直に、内面に迫るやり取りを自分自身と行うことができるでしょう。

1on1あとの上司との対話

🟠 同僚・友人の視点を活用した問いかけ

同僚や友人からの率直な意見を思い出しながら、今度は「人となり」に寄った問いを自分に投げかけてみましょう。

【問いを重ねる実例】

「友人に『今日のプレゼン、すごく生き生きしてたね』と言われたのはなぜだろう?」

「普段より表情が豊かだったのかな」

「なぜ今日は表情が豊かだったんだろう?」

「内容が自分の得意分野で、自信を持って話せたからかも」

「ということは、自信があるときの私はまわりにもよい印象を与えているということ?」

「自分の得意分野って具体的に何だろう? それを活かせる仕事や役割はほかにもあるかな?」

 
 
対話を深めるコツは、感情や感覚的な答えが出てきたときこそ、「なぜそう感じるのか?」「その感情の根本にあるものは何か?」と論理的に掘り下げること。感情は重要な手がかりですが、そこで止まらずに言語化を続けるのがポイント。

気心知れた相手の視点だからこそ浮かび上がる、思いもよらない「強み」や「価値観」を発見し、自分のキャリア像に厚みを出していきます。

友人との対話、カフェにて

🟢 取引先の視点を活用した問いかけ

取引先との会話を振り返りながら、「第三者的・客観的な視点」からの問いを自分に投げかけてみます。外部の目だからこそ客観的で意外な発見を与えてくれるのではないでしょうか。

【問いを重ねる実例】

「取引先の方に『○○さんとの打ち合わせはいつもスムーズですね』と言われたのはなぜだろう?」

「事前準備をしっかりしているからかな」

「でも、ほかの人も準備はしているはず。何が違うんだろう?」

「相手が知りたい情報を先回りして用意しているからかも」

「なぜ相手が知りたい情報がわかるんだろう?」

「相手の立場や課題を想像してから準備するクセがあるからかな」

「この『相手の立場で考える力』は、社内でも活かせているだろうか? もっと伸ばせる強みなのかもしれない」

 
 
対話を深めるコツは、外部の視点は客観的なので、自分の思い込みや固定観念を揺さぶる材料として活用すること。「自分の弱み」だと思っていたことが外部では「唯一無二の魅力」として映る場合もあるため、その差に注目して問いを深めていく。

外から見た自分像は客観的で意外な発見も多いため、とても参考になるはずです。自分では気づかなかった価値や可能性を発見することで、キャリアの選択肢が広がってくるでしょう。

取引先との打ち合わせ後の対話

気づいたこと:問いこそがキャリアをつくる

筆者も実際にこのソクラテス式を応用した「キャリア診断」を実践してみました。最大の効用は「相手に答えをもらうこと」ではなく、「問いを通して自分が考え抜くこと」にあると実感できました。

それぞれ異なる視点からの情報を足がかりに、自分に問いを投げかけることで、私のキャリア像がさまざまなレイヤーから照らし出されたのです。

診断ツールのように明確な結果が出るわけではありません。しかし、自分でキャリアの方向性を確信を持って決められるようになるのは大きな力です。

本来のソクラテス式問答法は、相手を「無知の自覚」に導く手法でした。つまり、「自分が何も知らないことを知る」ことから真の学びが始まるという考えです。

キャリア診断への応用でも同様に、まず自分のキャリア観の曖昧さや矛盾を自覚することから始まります。そして問いを重ねることで、自分の中にあった言葉を引き出し、キャリアを自分の言葉で語れるようになる——これこそが、このアプローチの最大の効用なのです。

まずは、ご自身がやりやすい方法から試してみてください。

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キャリアに迷ったとき、答えを外に求めすぎるとモヤモヤが残ります。

でも、ソクラテス式を応用した問答を取り入れると、「自分のなかにあった答え」が少しずつ輪郭をもって立ち上がってきます。

上司、先輩、同僚、友人、取引先、そしてAI。様々な立場の視点を足がかりに自分と対話することで、キャリアの地図はより豊かに描き直されていくでしょう。

「問い」がキャリアをつくる。そんな実感を得られるのが、ソクラテス式を応用した「キャリア診断」の醍醐味です。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

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