「私は文系だから、数学的なセンスが無くて……」 教育に携わっていると、折に触れて、このような発言を耳にすることがあります。 そこで今回は、巷でまことしやかに囁かれる「女子は数学が苦手」が本当かについて検証して参ります。
「数学的センス」とは何か
そもそも、数学的センスとは何を指すのでしょうか。 数学者の野崎昭弘氏は以下の様に述べています。
「数学的センス」とは、基本的には「言葉で、抽象的に考える」センスのことである
引用元:筑摩書房 | 日本人と数学的センス http://www.chikumashobo.co.jp/pr_chikuma/0705/070502.jsp
簡単な例で言うと、「12個のリンゴのうち4個食べたから8個残った」と具体的に検討せずとも「12-4=8」を理解できるということが数学的センスなのです。
では、本題に移りましょう。
男性と女性は脳の構造が違う
よく「男脳」「女脳」と言われますが、殊数学的センスにおいて男女の脳の違いはどのように影響するのでしょうか。
DIAMOND 男の健康 | なぜ「女の子」のほうが、言葉を早く話せるのか?--言葉の「女脳」と抽象力の「男脳」 には、以下のことが記されています。
・身体が大きい分、男性の脳の方が女性よりも大きいが、左右の脳を結んでいる脳梁の端の部分は、女性の方が男性より2割ほど大きい
・左脳と右脳の働き方をみると、女性は言語機能において左脳だけに任せず右脳をも使うが、男性は右脳、左脳を使い分けるとされる
・脳梁の後部にある膨れた部分(膨大部)の形を見ると、男性の脳は棒状をしているのに対し、女性のそれは球状に膨らんでおり、断面積において女性の脳が男性の脳を圧倒している
この記事では主に、左右の脳の連携が強いが故に、女性の方が男性に比べて言語機能に長けていることについて言及しています。 逆に、男性は左右の脳の連携が弱い、即ち左右の脳がそれぞれの機能に特化していることに因り、女性よりも抽象的に思考をすること(左脳を使うこと)が得意であると言えそうです。
社会・親の期待がもたらす「女子は数学が苦手」
一方で、このような記事も存在しています。
日経ビジネスON LINE |「女子は数学が苦手」は本当か 社会の期待、親の期待がもたらす学力格差
数学の成績における男女の差について、アムステルダム大学のトーマス・ブサー助教授、スタンフォード大学のムリエル・ニーデルレ教授、アムステルダム大学のヘッセル・オースタービーク教授が、オランダ、アムステルダム近郊の4つの学校で卒業間際の中学3年生362人を対象に実験研究を行っています。 その結果、女子生徒は数学の成績が男子生徒と変わらないにも関わらず、数学を難しいと感じており、自分は数学の成績が悪いと思い込んでいることや、自信がなく競争を好まないために、数学の難易度の高い専攻の選択を避けていることが明らかになりました。
記事によると、その理由の1つは、女子生徒と男子生徒では社会や両親の期待が異なるからであると考察されています。
記事中にも登場する世界経済フォーラム(WEF)発表の「男女格差報告2013年」において、日本は対象国136ヶ国中105位。先進国では飛び抜けて男女格差が大きいことが指摘されています。こうした男女格差指標の差が、両親や先生の生徒への期待の男女差など、社会的価値観を大きく反映しているものと考えられそうです。
先入観を排して、学業に取り組む
以上、2つの記事を見てきました。 確かに、脳の構造上の性差は存在するものの、男女の数学的センスの差異には社会的要因も大きく関係していそうです。
“アベノミクス”で女性の活躍が推進される昨今、こうした男女差を生み出す社会的価値観が変わっていくことが期待されます。 私が通う東京大学でも、女子学生の進学を促進する試みがなされています。
「男性に比べて女性は数学が苦手」「女性に比べて男性は国語(言語機能)が不得手」と言う先入観に捉われることなく、学業に取り組んで頂ければと思います。
最後に、恐らく典型的な「女脳」の私ですが、得意の言語機能で数学を乗り切る方法を考案しました。手前味噌で恐縮ですが、ご参考までにご覧ください。
参考: 恋に寄り添うサイトPROLO |こんなに違う!男子脳&女子脳 前編【恋愛科学】
東京大学 男女共同参画室 | 進学促進