「スキルはある」のに「評価してもらえない」人の特徴3つ。無意識の言動が足を引っ張っている

厳しい表情で資料を指差す男性と頭を抱えている女性

「今月のプロジェクトも無事完遂できた。技術力も上がってきたし、後輩からの相談も増えている。なのに、なぜか上司からの評価は期待したほどじゃない……」

そんな経験はありませんか?

仕事のスキルは確実に上がっているのに、なぜか職場で思うように評価されない。 同期が先に昇進していく姿を見ると、「自分の実力が正当に認められていないのでは?」という不安が頭をよぎる。

その原因は、あなたが無意識にしている「誤解を生む言動」にあるかもしれません。どれだけスキルが高くても、コミュニケーションのとり方次第で、周囲からの印象は大きく変わります。

今回は、実力はあるのに職場で評価されない人の特徴を3つご紹介します。あなたも知らず知らずのうちに、評価を下げる行動をしてしまっているかもしれません。心当たりがないか、ぜひチェックしてみてください。

1.「正論」を鋭く言いがち

こんな発言をしていませんか?
「その方法は効率が悪いですよ」
「もっと論理的に考えましょう」
「データを見れば明らかでしょう」
「それは間違っています」

たとえ正論でもストレートすぎる言い方をすると、評価してもらえなくなるかもしれません。株式会社クレディセゾン取締役の小野和俊氏は、「何かを変えようと思うなら、正論を振りかざすのはNG」だと言います。*1

こんなシーンを思い浮かべてみてください。

――対面での会議を好む上司に対してあなたが、「対面での会議は非効率です。オンラインを導入すべきですよ」と、会議のデジタル化を主張する――

このようなコミュニケーションは、相手の考えを完全に無視している点と、言い方が強すぎる点でNG。仮に意見が通ったとしても、上司や周囲はあなたに対し不快感を抱き、「今度からあの人の意見には賛成したくない」と思いかねません。いくらあなたが、知識や実力のある人材であったとしてもです。

スキルはあるのに誤解されやすい・評価されにくい人の特徴02

株式会社グロービスで論理思考系科目の講師経験がある御代貴子氏によると、正論を突きつけて相手を追い詰めることを「ロジカルハラスメント」と呼ぶのだそう。*2

ただし意見を論理的に述べること自体は、ハラスメントではありません。むしろ論理的な意見は、ビジネスコミュニケーションを円滑にするうえで重要なもの。問題なのは、相手の感情や状況に配慮せず、正論で圧力をかけることなのです。

たとえば、後輩から対人関係の悩みを相談されたとき、「要するにあなたの問題点は頼みを断れないことでしょ。アサーティブに断れば解決する」などと言ったらどうなるでしょう? 後輩はあなたの話を頭では理解できても、「そう簡単には……」と感情面では納得しないかもしれません。

御代氏によれば、会話をする前提条件は「相手の感情を否定しない」こと。正論を述べる前に、相手の立場や感情を想像してみてください。「あなたはそう考えているのですね」と理解した態度を示すように心がけましょう。

NG例:会議での発言

「対面での会議は時間の無駄です。すぐにオンラインに切り替えるべきです」
 

結果:上司は「自分の判断を否定された」と感じ、提案者への印象が悪化

OK例:相手を尊重した伝え方

「対面での議論は深い話し合いができていいですね。一方で、移動時間の短縮や資料共有の効率化も課題かと思うのですが、オンラインとの使い分けについてはいかがお考えでしょうか?」
 

結果:相手の考えを尊重しながら提案でき、建設的な議論につながる

スキルはあるのに誤解されやすい・評価されにくい人の特徴03

2.「批判」する癖がある

こんな発言をしていませんか?
「あの人のプレゼン、いつも要点がまとまってないよね」
「○○課長って決断が遅すぎる」
「新人は覚えが悪くて困る」
「△△さんって話し方がいつも回りくどい」

同僚や上司への不満を口にすることが多い人は、知らないうちに「批判癖のある人」として敬遠されているかもしれません。

自分に自信があるがゆえ、「部下は何かと問題が多くて困る」「上司は本当に融通が利かないよな」などと人を批判する癖がある人は、周囲から「面倒くさい人」だと認定されてしまう――心理カウンセラーの石原加受子氏は、こう指摘しています。*3

もちろん、部下が行なった業務へのフィードバックや、改善が目的の建設的な批判であれば、問題ないことも多いでしょう。

注意が必要だと石原氏が言うのは、仕事とは関係のないダメ出し。たとえば、同僚のSNS投稿を見て「もっとこうしたらいいのに」などと、本人の前であら探しをするような行動が、それに当てはまります。

スキルはあるのに誤解されやすい・評価されにくい人の特徴04

では仕事上のダメ出しであればどう行なってもよいかと言うと、そうではありません。ぜひ知っておきたいのが、「本人のいないところで批判する」という行為には大きなリスクがあるということ。

産業・組織心理学者の山浦一保氏が、社会人300名を対象に実施した調査があります。それによれば、「職場での信頼関係崩壊を経験したことがある」と答えた194名が、信頼が壊れた理由として挙げたもののうち、最も多かったのが「辛辣でネガティブな言動を人づてに聞いた」というものでした。*4

山浦氏によると、これは「ウィンザー効果」によって説明がつくそうです。ウィンザー効果とは、面と向かって聞く「直接的な情報」よりも、第三者を通して伝わる「間接的な情報」のほうをより信頼する、という心理的傾向のこと。

たとえば、もしもあなたが第三者を通じて「〇〇さんが、あなたのミスが多くて使えないと言っていたよ」と伝えられたら、とても失望するでしょう。「どうして陰で言うんだろう。直接言ってくれたらいいのに」と、不信感も募らせるはずです。それと同じようなことを他者へしてしまわないよう、注意しなければなりません。

仕事仲間との信頼関係を崩さないために、批判の仕方には注意を払いましょう。前出の石原氏によれば、批判や意見を述べるべきタイミングは、アドバイスを求められてから。相手は自分の意見を欲しがっているのかどうか、先に確認する癖をつけるとよいとのことです。

同僚A
「今日のBさんのプレゼン、どう思った?」
 

NG な返答

「いつものように話がまとまってなかったよね。準備不足じゃないかな」
 

適切な返答

「プロジェクトの全体像は伝わったけど、もう少し具体的なスケジュールがあったらよかったかもしれないね。でも新しいアイデアは面白いと思ったよ」
 

スキルはあるのに誤解されやすい・評価されにくい人の特徴05

3.「自分の成果」に目が向きすぎている

こんな行動をしていませんか?
チームミーティングで自分の成果ばかり報告する
他人のアイデアに興味を示さない
同僚の悩みを聞いても「私なら○○するけど」と自分の話にすり替える

経験を重ねるうち「もっと実績を上げて高い評価をもらおう」と、より強い向上心をもつようになる人も多いでしょう。その向上心は間違っていませんが、「自分の成果」しか見ていないようだと、周囲から敬遠されてしまうかもしれません。

多摩大学大学院名誉教授の田坂広志氏は、仕事ができる優秀な人が突き当たる壁として「感情の壁」を挙げています。*7 これは、「実績を上げたい!」という感情に支配され、周囲の心がわからなくなってしまう状態のこと。以下のような状況がその一例です。

  • 企画会議で、自分の案を通したい気持ちが強く、他人の意見に耳を傾けない
  • 商談で、商品の魅力を伝えたいあまり、客の気持ちを考えず一方的に商品の説明をする
  • リーダーが「チームの成績を上げたい」と考え、無理なスケジュールをメンバーに要求する

田坂氏によれば、「感情の壁」に突き当たるビジネスパーソンは、仕事に対する意欲も責任感もあるとのこと。ところが、「評価されたい」「早く実績を上げたい」という向上心が強いあまり、自分のことしか見えず、周囲への配慮が欠けてしまうというのです。

スキルはあるのに誤解されやすい・評価されにくい人の特徴06

また、コミュニケーション・ストラテジストの岡本純子氏によれば、ビジネスで成功するには “有能さ” よりも “好感度” のほうが重要とのこと。*8 その根拠は、2005年に『Harvard Business Review』に掲載された調査です。 行動心理学者が10,000件に及ぶデータをもとに、組織内にいる以下4タイプのうち、どのタイプが「一緒に働きたい」と思われやすいかを調べたそう。

  1. 「愛されるスター」……好感度が高く、仕事もできる
  2. 「無能で嫌な人」……好感度が低く、仕事もできない
  3. 「愛される愚か者」……好感度は高いが、仕事はできない
  4. 「有能で嫌な人」……好感度は低いが、仕事はできる

「愛されるスター」が好かれ、「無能で嫌な人」が避けられるのは、言うまでもありませんが……驚くことに、残り2タイプを比べると、「有能で嫌な人」より「愛される愚か者」のほうが、一緒に働きたいと思われやすいことがわかったのです。

この結果が示唆しているのは、いくら実績がよくても対人関係能力がいまひとつだと、なかなか評価は得られないということ。これをふまえ岡本氏は、ビジネスの成功には「人たらし力」が鍵になると言います。

たとえば会話は、自分の知識を披露するよりも、相手の考えや関心事に耳を傾け “相手主役” で進めるといいとのこと。自分が発言する中身は、「相手に関することを8割:自分に関することを2割」にするのが目安だと言います。そして、やっぱり笑顔が重要だそうですよ!

部下
「最近、クライアントとのやり取りで悩んでいることがあって...」
 

自分中心の対応(NG)

「ああ、それなら私も経験がある。私が新人の頃は○○の方法でクライアントを説得したよ。私の場合は...」
 

相手主役の対応(OK)

「クライアントとのやり取りで悩みがあるんですね。具体的にはどんな場面で困っていますか? 相手からはどんな反応が返ってきているんでしょう? あなたはどう感じていますか?」
 

***
今回の記事を参考に、コミュニケーションを工夫してみてください。経験を積んだあなたが、本来の評価を得られることを願っています。

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
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