うまい文章を書くために「あえて減らすべき」4つのもの。

うまい文章を書くためにあえて減らすべきもの01

書類やメールに書く文章。頑張って書いているのに、どこか “うまくない” 感じがする……。もっと読みやすく、理解しやすい文章を書けたらいいのに……。

文章力に自信がないのであれば、今回ご紹介する4つの “あるもの” を、文章から “減らして” みましょう。きっとあなたの文章はスマートに生まれ変わるはず。「文章がうまくなったね」と、職場でいい評価を受けられるかもしれません。

1.「一文あたりの文字数」を減らす

うまい文章を書くために減らすべきもの。その1つめは「一文あたりの文字数」です。

「必要以上に“長い文章”は、相手にとって迷惑」と断言するのは、「キャリア30年の編集者」で文章の書き方を教える赤羽博之氏。以下のように述べています。

必要以上に長い文章、ムダの多い文章は、忙しい相手の時間を奪うものであり、同じ内容を伝えるのであれば、なるべく相手にかかる負荷を減らすべき――。

(引用元:まいにちdoda|ビジネスパーソンに必要な「文章力」。ビジネス文書作成の際にやりがちな3つのNGとは? ※以下赤羽氏の見解は同資料より)

むやみに文章を長くしないこと。そのためには、文章から無駄を削ること――これが、読みやすい文章を書く重要ポイントだというわけです。

また赤羽氏は「60文字を超える文」を「長い」としているので、一文は60字以内で書くことを目指しましょう。たとえば以下の方法をとれば、一文をみるみる短縮できます。

  1. くどい表現を削る
    赤羽氏は、「同じような言葉が重なった」文章は「気持ち良く読めるスッキリとした文章とはいえません」と述べます。同じ表現、似た表現を一文のなかで連発していないかチェックし、あれば積極的に削りましょう。
  2. 文章を分ける
    単純に一文をふたつ以上に分けてしまえば、一文あたりの字数を少なくすることができます。

◆下手な文章例
来月に予定されているイベントにおきましては、大勢の人が来場されることが予想されるため、事前予約制をとらせていただくことにいたします。

◆うまい文章例1
来月のイベントでは大勢の来場が予想されるため、事前予約制にいたします。

◆うまい文章例2
来月のイベントでは大勢の来場が予想されます。したがって事前予約制にいたします。

うまい文章を書くためにあえて減らすべきもの02

2.「指示代名詞」を減らす

2つめに減らすべきものは、“これ” “それ” “あれ” などの「指示代名詞」。言葉の重複を避けたいときに便利ですが、使いすぎは禁物なようです。

文章コンサルタントの堀内伸浩氏は、指示代名詞について、「ひとたび使い方を間違えてしまうと、相手に疑問を残してしまう」と述べています(同氏の著書『きちんと伝わる文章の書き方』より)。つまり、上手に使えば読み手の理解を促せるけれど、誤って使うと読み手を混乱させかねないのです。

指示代名詞によって文意が伝わらなくなってしまう例を紹介しましょう。

◆下手な文章例
弊社サービスには「ベーシック」「スタンダード」「プレミアム」という3つのプランがあります。ヘビーユーザーにはこれがおすすめです。

(※堀内氏が著書で示していた文例をふまえ、筆者が独自に作成)

上の文章の「これ」は、3つのプランのうちどれを指しているのでしょうか? 特定するのは困難ですよね。そこで、以下のように改善してみます。

◆うまい文章例
弊社サービスには「ベーシック」「スタンダード」「プレミアム」という3つのプランがあります。ヘビーユーザーにはプレミアムプランがおすすめです。

確実に伝わる文章を書くには、具体的な言葉を逐一使うことも必要だとおわかりいただけたでしょう。

文章を短くしようと考えると、つい “これ” や “それ” に頼りたくなるもの。ですが、一文が短くなっても意味がわかりづらくては、意味がありません。「この文章に書いた『これ』は、ちゃんと意味を伝えられているかな?」と、つど考える癖をつけたいですね。

うまい文章を書くためにあえて減らすべきもの03

3.「否定形」を減らす

伝わりやすい文章を書くために、「否定形」も減らすようにしましょう。

出版コンサルタントで文章術に詳しい木暮太一氏いわく、「人間の頭は、否定形をイメージできない」(「言語化参謀 | 木暮太一|こんな文章はわかりづらい!(>。<) 」より ※以下木暮氏の見解は同資料より)。

たとえば、「会議をしない」様子をイメージしてみてください――と言われても、思い浮かべるのはかなり難しいはず。できるとしても、いったん「会議をする」様子をイメージし、その映像に取り消し線を引く……というところが精一杯ではないでしょうか?

「食べない様子」「遠くない場所」「赤くない色」など、あらゆる否定表現に同様のことが言えます。したがって、否定形を使うと、それだけで文章の意味をイメージしづらくなってしまうのです。

そんな否定のなかでも、 “~ないこともない” といった「二重否定」の表現を使うと、「もっとイメージしにくくな」ると木暮氏。二重に否定したところで、文章が複雑になるだけなのです。

ですから、木暮氏がすすめるように、二重否定文を書きたくなったときは否定の否定、つまり「肯定文」に直して書きましょう

◆下手な文章例
プロジェクトの問題点がないわけでもありません

◆うまい文章例
プロジェクトにはいくつかの問題点があります

また、そもそも人間は否定形をイメージできないのですから、二重否定に限らず否定表現自体を減らすことも、文をわかりやすくするのに効果的なはず。「提出期限を過ぎないでください」ではなく、「提出期限を守ってください」といった具合です。こうした少しの工夫で、文章はぐっと読みやすくなるのですね。

うまい文章を書くためにあえて減らすべきもの04

4.「修飾語‐被修飾語の距離」を減らす

朝日新聞編集委員・近藤康太郎氏は、うまい文章を書くための原則のひとつとして、「形容語と被形容語はなるべく近づける」ことを挙げています(「ニューズウィーク日本版|読む人の心を撃つ「うまい文章」を書くためのシンプルな三原則」より)。

形容語とは修飾語、被形容語とは被修飾語のこと。これらを近くに置くべき理由は、修飾語がどの言葉を修飾しているのかをはっきりさせるためです。

たとえば、こちらの例文を見てください。

◆下手な文章例
使いやすい省エネ機能つき家電をご案内します。

この文章にある「使いやすい」ものとは、「省エネ機能」でしょうか? それとも「家電」でしょうか? 文章の書き手は「使いやすい家電」を意図していたのだとしても、「使いやすい」という修飾語と「家電」という被修飾語の距離が離れているために、文意が伝わりませんね。

上記のような失敗を防ぐには、修飾語と被修飾をなるべく近づけて書きましょう。

◆うまい文章例
省エネ機能つきの、使いやすい家電をご案内します。

***
文章力に不安があるなら、以上4つのものを文章から減らしてみてください。伝わりやすくスマートな文章表現を目指しましょう。

(参考)
まいにちdoda|ビジネスパーソンに必要な「文章力」。ビジネス文書作成の際にやりがちな3つのNGとは?
堀内伸浩(2012),『きちんと伝わる文章の書き方』, 大和出版.
言語化参謀 | 木暮太一|こんな文章はわかりづらい!(>。<)
ニューズウィーク日本版|読む人の心を撃つ「うまい文章」を書くためのシンプルな三原則

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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