勉強の合間に気分転換する方法7選

勉強の気分転換が大事な理由1

勉強を頑張ることは大切ですが、たまには気分転換も必要。息抜きして気分をリフレッシュさせれば、やる気が回復し、集中力を保ちつつ勉強に戻れるため、結果としては効率的なのです。

勉強時間と休憩時間を繰り返し、効果的に勉強を進めましょう。おすすめの気分転換の方法を複数紹介するので、自分に合ったものを見つけてみてください。

勉強に気分転換が必要な理由

勉強に気分転換が必要な理由はいくつかありますが、最も重要なのが、脳の機能低下を防ぐためです。

勉強とは、集中してテキストを読解したり、情報を記憶したり、問題を解くために思考したりと、脳にかなりの負荷がかかる行為。気分転換せずに勉強を続けると、脳のパフォーマンスが低下してしまいます。

パフォーマンスの低下とは、具体的に言うと、脳の「ワーキングメモリ」機能の低下です。ワーキングメモリとは、一時的に情報を保持して処理する脳の働き。日常生活や仕事はもちろん、読み書きや計算といった学習を支える重要な能力です。そのため、ワーキングメモリがうまく機能しないと、テキストを読んだそばから忘れていってしまったり、複雑な問題が解けなくなったりしてしまいます。

教育心理学者の岩木信喜・准教授(岩手大学)は、ワーキングメモリは「情報を短期的に脳内に保持しつつ処理する作業」を行なっていると述べたうえで、以下のように語っています。

一般的に、扱える情報量が多い人ほど学業成績がよいことが知られています。すなわち、ワーキングメモリは学力の基盤と言えるシステムなのです。

(引用元:国立大学法人 岩手大学|憶えたければ思い出せ!:想起の学習促進効果 太字による強調は編集部が施した)

勉強の効果を高めるため、ワーキングメモリのパフォーマンス低下は避けたいところですね。

精神科医の西多昌規・准教授(早稲田大学)は、ワーキングメモリについて、「疲労や睡眠不足によって容易に機能が低下する」と語っています。睡眠を十分にとるのは当然のこととして、勉強によって生じた疲れをとることも欠かせないのです。

「受験医学研究所」の代表を務め、自律神経や脳機能を研究する心療内科医の吉田たかよし氏も、「適正な勉強時間を超えると、ストレスで脳の機能が低下」すると述べています。勉強時間は、長ければ長いほどよいというわけではないのです。

吉田氏によると、大事なのは、「勉強するときは思いきり勉強し、休息をとるときはしっかり休む」というメリハリ。みなさんも、勉強の合間に「ちょっと疲れたな」と感じたら、罪悪感を覚えることなく気分転換しましょう。

勉強の気分転換が大事な理由2

勉強の気分転換におすすめの方法

勉強の合間に気分転換する方法は、多くの有識者や専門家が挙げています。脳の疲れをとるものもあれば、体の疲れをとるものも。自分にとってやりやすい方法を見つけてください。

気分転換の方法を複数知っていれば、状況に合った方法を選択することができます。以下で紹介するおすすめの休憩法を、いくつか試してみてはいかがでしょうか。

座ったままストレッチ

骨盤矯正専門整体サロン「TASUKU」によれば、勉強に関わる作業は体の正面で行なわれるため、勉強に長時間集中していると猫背になりやすいのだそう。猫背になると、体が痛むだけでなく、集中力や記憶力が低下してしまうとのことです。

猫背の原因のひとつは、筋肉の凝り。凝った筋肉は、ストレッチをして意識的にほぐしてあげる必要があります。

「つつじヶ丘整体Gucchy's」の代表である関口圭氏によると、ストレッチには、血行をよくして脳の働きを活性化する効果もあります。関口氏の推奨するストレッチは、以下のとおり。座ったままでOKです。深呼吸しつつ、数回繰り返してください。

  1. 両腕を後ろに回し、手を組む
  2. 胸を反らしつつ、腕を後ろに伸ばす
  3. 両腕を前に回し、手を組む
  4. 背中を丸めつつ、腕を前に伸ばす

椅子に座りながらできるストレッチなら、勉強の合間に取り入れやすいですね。腕や肩を動かすだけでなく、自分なりにストレッチをし、ほかの部分の筋肉も動かしてあげるとよいでしょう。

ホットアイマスク

勉強していて、目の疲れを感じる人は多いはず。眼科医の森岡清史氏によれば、目の疲れを放っておくと、集中力が低下するなど勉強にとってのデメリットが生じるのだそう。

効率的な勉強法をさまざまなメディアで発信しているメンタリストDaiGo氏も、「目の疲れはそのまま集中力の低下につながる」と断言しています。目の神経は脳とダイレクトにつながっているため、目が疲れると、脳も「疲れた」と「勘違い」してしまうのだそう。

目の疲れを解消することは、勉強をするうえでとても重要なのです。目の疲れがとれるような気分転換をしてみましょう。

目の疲れをとる手段として森岡氏がすすめるのが、ホットアイマスク。シートを剥がすと蒸気が出てくる、市販の使い捨てホットアイマスクはもちろん、水で濡らしたタオルを電子レンジで温め、顔に当てるのも効果的です。

パワーナップ

パフォーマンス向上を目的とした短い昼寝「パワーナップ」も、勉強時の休憩に最適です。パワーナップとは、米コーネル大学で教鞭をとっていた心理学者ジェームズ・マース氏が提唱したもの。20分間を限度とした昼寝です。

マース氏によると、昼寝は健康を促進し、パフォーマンスや注意力を向上させるそう。睡眠と疲労の専門家であるマーク・ローズキンド博士が率いたNASAとの共同研究の結果では、26分間の仮眠によって被験者のパフォーマンスが34%、注意力が54%向上したとのことです。

マース氏がパワーナップの限度を20分に設定する理由は、仮眠が長すぎるとむしろ悪影響が発生するため。眠る時間が長くなると、睡眠が浅い段階から深い段階へ移行します。深い睡眠中に目覚めると、頭がぼんやりしてしまうので、仮眠をとらないほうがましだそう。また、昼寝の時間が長すぎると、夜に眠れなくなってしまうとのことです。

勉強の気分転換として昼寝をするなら、アラームを設定して、20分以上寝ないようにしましょう。眠れなかったとしても、目を閉じて机に伏せたり横になったりするだけで疲労が回復します。

音楽鑑賞

勉強に疲れたら、目を閉じて音楽を聴くのもいいでしょう。自分が気に入っていて、気分がワクワクしたりリラックスできたりする曲ならなんでもOKですが、たまには「1/fゆらぎ」という観点で曲を選んでみてはいかがでしょうか。

1/fゆらぎとは、研究の第一人者である物理学者・武者利光氏によると、「パワースペクトル密度がフーリエ周波数fの逆数に比例するようなゆらぎ」のこと。自然界のさまざまな現象で確認でき、人間の脈拍の間隔や小川のせせらぎも1/fゆらぎだそうです。

1/fゆらぎは、一部の音楽にも含まれています。武者氏によると、1/fゆらぎをしている音楽は聴く人に快感をもたらすそう。1/fゆらぎは「生体の基本的なリズムのゆらぎ」に同調するためです。

1/fゆらぎの音楽といえば、クラシックです。ラジオ放送を利用して、「クラシック」「ジャズ&ブルース」「ロック」の各チャンネルを12時間ずつ録音して分析したところ、クラシック音楽が1/fゆらぎになっていたそう。

普段はクラシック音楽を聴かない人も、Spotifyなどのストリーミングサービスを利用して、勉強の気分転換としてクラシックに耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

お笑い

勉強の合間の気分転換には、楽しい動画などを見て思いっきり笑うのもいいでしょう。『みんなの健康 笑いの健康学』(三省堂、1999年)などの著書がある医師・伊丹仁朗氏によると、笑うことで脳内ホルモン「エンドルフィン」が分泌され、幸福感を得られるそう。

精神科医の西脇俊二氏も、エンドルフィンの効果について「副交感神経を優位にし、心身をリラックスさせる働きがあります。ストレスから解放してくれるのです」と語っています。笑うことで、集中して勉強した疲れを緩和できるでしょう。

伊丹氏は、笑うことのメリットとして、「海馬の活性化」も挙げています。海馬とは、新たな情報を記憶するときに使われる脳の部分。海馬を活性化させることで、記憶力が向上するそうです。勉強の息抜きとしては最適ですね。

思いっきり笑うためには、YouTubeでお笑い動画を検索してみるといいでしょう。2020年現在、多くのお笑い芸人がYouTubeで自身のチャンネルを開設しています。「落ち込んだときの立ち直り方4選」でおすすめのチャンネルを紹介しているので、合わせてご覧ください。

カフェモカ

勉強の合間には、飲み物を飲んでリラックスするのもおすすめ。コーヒーやお茶など、人によって好みは異なるでしょうが、たまには「カフェモカ」を試してみてはいかがでしょう?

カフェモカとは、エスプレッソコーヒー・ミルク・チョコレートからつくる飲み物。コーヒーとココアの両方の性質を兼ね備えていると言っていいでしょう。

心理学者のアリ・ブーラニ准教授(米クラークソン大学)らが2017年に発表した実験では、被験者たちに以下の飲み物を飲ませたあと、複数のテストで認知機能を測定しました。

  • ココア
  • カフェイン入りココア
  • 色と甘みをつけたカフェイン入りの水
  • 色と甘みをつけた水(プラセボ)

実験の結果、以下のようになりました。ココアの含むテオブロミンと、カフェインの効果が見てとれます。

  • ココア→正答数が増加
  • カフェイン入りココア→不安レベルが低下、正答数が増加
  • カフェイン入りの水→不安レベルが上昇

カフェイン入りココアの場合は、ココアと比べて誤答数も少なかったそうです。論文では、カフェイン入りココア中のテオブロミンが精神をリラックスさせると同時に、添加されたカフェインによって課題遂行の正確さが増したと考察されています。

もっとも、実際のコーヒーは「カフェイン入りの水」とは異なるので、香りや味でリラックスできる人もいるでしょう。けれど、たまにはカフェイン入りココア、すなわちカフェモカを飲んでみてはいかがでしょうか? コーヒーにチョコレートシロップを入れてみたり、コーヒーとココアを混ぜてみたりすると、いつもとは違う気分になれるかもしれませんよ。

散歩

気分転換といえば、散歩。勉強は、基本的に室内に閉じこもって行なうものなので、ずっと勉強していると外に出たくなりますよね。

散歩は、勉強の合間の気分転換にぴったりです。精神科医の樺沢紫苑氏いわく、日光を浴びたり歩いたりすると、「癒やし」や「リラックス」に関係する脳内物質・セロトニンが活性化されるとのこと。ずっと室内にこもっていると、セロトニンが不足してしまうので、たまには意識して外に出る必要があるのです。

散歩には、血行を促進して脳機能を向上させる効果もあります。姿勢改善を専門とする、いとう鍼灸整骨院の院長・伊藤勇矢氏によると、椅子に座った状態では太ももの血管が圧迫され、血流が悪くなるそう。そして、血流量の減少は、脳機能の低下につながります。

脳機能を研究し、スポーツ健康科学の博士号を持つ塚本敏人氏らの論文「自発的過換気による急性の脳血流量の減少が認知機能に及ぼす影響」(2014年)の実験によると、脳血流量の減少した被験者は、通常時に比べて認知機能を測定する課題における反応速度・正答率が低かったそう。つまり、座りっぱなしでいると血流が滞り、脳の働きが低下してしまうのです。

しかし、立ち上がって歩くことにより、下半身に再び血がめぐり、脳にも十分な血流が行き渡り、低下していた脳機能が回復します。そのため、勉強の気分転換として、散歩は最適なのです。

勉強の気分転換が大事な理由3

勉強の気分転換におすすめできない方法

反対に、勉強の気分転換としておすすめできない休憩法もあります。PCやスマートフォンでSNSを見たり、ゲームで遊んだりすることです。

いろいろな欲求を抑えて勉強に取り組んでいると、休憩中にSNSをチェックしたり、動画や通販サイトを見たりしたくなるかもしれません。しかし、森岡氏によれば、近くのものを見続けていると目の周囲の筋肉が緊張してしまうため、自律神経が乱れてしまいます。さらに、液晶画面の強い光も、交感神経の働きを強めるため、長く見ていると自律神経が乱れやすくなるとのこと。

つまり、PCやスマートフォンの使いすぎは、自律神経の乱れにつながります。自律神経とは、交感神経と副交感神経の2種類で構成されるもの。自律神経が乱れる(=交感神経と副交感神経のバランスが崩れる)と、体のだるさや不眠、疲労感など、さまざまな不調が現れます。

自由時間ならまだしも、ただでさえ脳や目を酷使する勉強の休憩時間にやることとしては、パソコンやスマートフォンの使用は不適切なのです。勉強の気分転換としては、おすすめできません。

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休憩せず、時間を惜しんで勉強を続けるのは、じつは非効率的。適度に気分転換したほうが、かえって効率的なのです。自分に合った気分転換の方法を実践してみてください。

(参考)
児童・生徒のワーキングメモリと学習支援|「ワーキングメモリ」とは
国立大学法人 岩手大学|憶えたければ思い出せ!:想起の学習促進効果
東洋経済オンライン|「休めない」日本人の生産性が著しく低い理由-従業員の健康に気を配らない企業は負ける
骨盤矯正専門整体サロン TASUKU 神田町店|受験シーズン間近、「姿勢」について
Benesse マナビジョン|勉強疲れを劇的に解消! プロ直伝!体のこりをほぐすストレッチ法
朝日新聞デジタル|セルフケアで能率アップ!疲れ目スッキリ解消法
メンタリストDaiGo (2017), 『図解 自分を操る超集中力』, かんき出版.
JIJICO|健康を害する「座りっぱなし」のリスク
塚本敏人・橋本健志・平澤愛紹・長谷川博・小河繁彦(2014), 「自発的過換気による急性の脳血流量の減少が認知機能に及ぼす影響」, 日本生理人類学会誌, 19巻4号, pp.225-232.
東洋経済オンライン|「デスクでお昼を食べる人」の仕事が遅いワケ-昼休みの使い方が集中力を左右する
NIKKEI STYLE|スマホやPCで自律神経に不調 目のケアを習慣に
CBS News|The Art Of The 'Power Nap'
Business Insider|How to master the power nap
BBC News|Who, What, Why: How long is the ideal nap?
武者利光(1994),「1/fゆらぎと快適性」, 日本音響学会誌, 50巻6号, pp.485-488.
FUTURUS|人間を生かし、 名曲をも生み出す 「1/fゆらぎ」の謎【前編】
武者利光(1977),「1/fゆらぎ」, 応用物理, 46巻12号, pp.1144-1155.
サワイ健康推進課|“笑い”がもたらす 健康効果
ダイヤモンド・オンライン|ストレスをコントロールするセルフコンディショニング術、教えます
Boolani, Ali, Jacob B. Lindheimer, Bryan D. Loy, Stephen Crozier, and Patrick J. O’Connor (2017), "Acute effects of brewed cocoa consumption on attention, motivation to perform cognitive work and feelings of anxiety, energy and fatigue: a randomized, placebo-controlled crossover experiment," BMC Nutrition, Vol. 3, No. 8.

【ライタープロフィール】
武山和正
Webライター。大学ではメディアについて幅広く学び、その後フリーのWebライターとして活動を開始。現在は個人でもブログを執筆・運営するなど日々多くの記事を執筆している。BUMP OF CHICKENとすみっコぐらしが大好き。

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