「習慣を変えるにはどうしたらいいんだろう……」と悩んでいませんか? スマートフォンでだらだらと動画やSNSを見るような悪習慣をやめて、その時間をもっと有意義に使えたら、仕事や勉強がもっとうまくいきそうですよね。
この記事では、悪い習慣をやめ、新しい習慣を身につける方法を14個紹介しています。あなたにぴったりの「習慣を変える方法」を見つけてみてください。
習慣を変える方法~悪い習慣を断ち切る~
まずは、よくない習慣を変える方法を紹介します。
ベネフィットとコストを書き出す
「やめたほうがいいとはわかっているんだけど、なかなか……」
そんな習慣があるなら、その習慣の「ベネフィット」と「コスト」を紙やメモアプリに書き出してみましょう。
- ベネフィット:その習慣がもたらす利益
- コスト:その習慣がもたらす損失
たとえば、「ついお酒を飲んでしまう」という習慣があるなら、ベネフィットとコストは次のようになります。
- お酒を飲むベネフィット:
気分がよくなる、ストレスが解消する、コミュニケーションが円滑になる - お酒を飲むコスト:
二日酔いになる、健康を害する、お金がかかる
ベネフィットとコストを見比べれば、「コストが大きいわりに、得られるものが少ないなぁ……」と気づけるはず。「このまま悪習慣を続けても得がないな」と自覚することが、習慣を改善する第一歩なのです。
制御刺激を設ける
NPO法人・ヒューマニティ代表でカウンセラーの小早川明子氏によると、一度ハマってしまった行為をやめる手段として「制御刺激」があるそう。制御刺激とは、悪習慣の誘惑を抑えるアクションです。その動作をすることで、「ゲームで遊びたい!」「SNSを見たい!」といった欲求を抑えることができます。
制御刺激となるのは、自分で決めた言葉と動作です。小早川氏によると、制御刺激によって欲求を抑える方法は以下のとおり。
◆制御刺激で悪習慣を断つ方法
- 制御刺激の言葉と動作を決める
【例】「私はゲームをしない」と言いながら、親指をぎゅっと握る - 悪習慣を行ないたくなったら、制御刺激を実行する
- 悪習慣を行なわない時間をつくる
- 1~3を一日20回以上行なう
この手順を繰り返すことで、脳が「刺激を受ける→欲求を抑える」という流れを学習します。2週間程度の期間で、ほとんどの人が欲求を制御できるようになるそうですよ。
レコーディング法
悪習慣をやめる方法として脳神経外科医の奥村歩氏が推奨しているのは、行動を記録する「レコーディング法」です。その行動を行なってしまった時間を記録したうえで、本当に必要だった行動なら青ペンで、時間を無駄にした行動なら赤ペンで丸をつけます。
◆レコーディング法のやり方
- やめたい行動(例:スマホいじり)を行なった時間を記録する
【例】7:00~7:20 ニュースチェック、7:20~7:50 ゲームアプリ - 必要だった時間には青ペンで○をつける
【例】ニュースチェック、仕事上の連絡 - 無駄だった時間には赤ペンで○をつける
【例】SNSチェック、ゲームアプリ
このように記録すると、「一日中スマホを触っているなんて……」とみじめな気持ちになり、不快感が生まれるはず。その不快感こそ、レコーディング法のキモです。「不快になりたくない」という気持ちが、あなたを悪習慣から遠ざけてくれます。
不快感はもうひとつあります。「悪習慣を行なうと記録しなければいけない」という面倒くささです。2種類の不快感がブレーキとなり、悪習慣を抑制してくれますよ。
儀式スイッチ法
同じく奥村氏によれば、悪習慣の前に特定の行動を挟む「儀式スイッチ法」も有効だそう。皿洗いや片づけといった、体を動かす単純な作業を「儀式」として定め、悪習慣への欲求が起こったときに実行します。
- ゲームで遊びたい!→その前に皿を洗う
- お酒が飲みたい!→その前に部屋を片づける
- お菓子を食べたい!→その前に洗濯物をたたむ
何も考えず作業しているうち、脳のDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)が活性化するそうです。
DMNが活性化していると、目の前の快・不快に流されず、長期的な視点で物事を考えられます。「○○がやりたい!」という、悪習慣への衝動を冷静に抑えられるのです。
周囲に宣言する
習慣化コンサルタントの古川武士氏は、悪い習慣をやめる方法のひとつとして「周囲に宣言する」ことを提案しています。家族や友人に、「今日から酒を飲まない!」などと言って回りましょう。
宣言したことを守らなければ、ウソをついたことになってしまいます。「自分で言ったことも守れない人なんだ……」と思われるのは嫌ですよね。レコーディング法と同じく、「不快になりたくない」という心理を利用して悪習慣から遠ざかるのです。
古川氏によれば、上司や家族など、特に信頼を失いたくない相手に宣言するのがポイント。口頭で伝えるだけでなく、SNSやブログに投稿するのも有効です。
目標は肯定文にする
同じく古川氏によると、脳は「否定語を認識できない」のだそう。「お酒を飲まない!」と意識しても、「ない」という否定語が認識されず、「お酒を飲む!」というイメージが強くなってしまうのです。
そのため、悪習慣を断つ目標を決めるときは、「○○しない」ではなく「○○する」と肯定文にしましょう。
◆目標を否定文から肯定文に
- お酒を飲まない→お酒を飲みたくなったら、紅茶を飲む
- ゲームをしない→ゲームをしたくなったら、音楽を聴く
- テレビを観ない→テレビを観たくなったら、テレビのコンセントを抜く
具体的習慣を洗い出す
スタンフォード大学の行動科学者、B・J・フォッグ氏は、悪習慣をやめたいなら、その習慣を構成している行動を具体的にリストアップすべきだと言います。
たとえば、「お酒を飲んでしまう」という悪習慣は抽象的です。その悪習慣を構成している「具体的な行動」を、次のように洗い出しましょう。
- 夕食時にビールを飲む
- ドラッグストアに行くとお酒の棚に寄る
- コンビニで新しい缶チューハイを見かけると買う
- 夕食後にカクテルをつくる
- お酒のストックを切らさないようにしている
このようなリストのなかから、一番簡単にやめられそうな習慣を選んで取り組みましょう。ひとつやめることに成功したら、「このままできそう!」と自信がもて、もっと難しい習慣を断つことにも成功しやすくなります。
悪習慣のきっかけを絶つ
フォッグ氏は、悪習慣の「きっかけ」に着目するようすすめています。「お酒を飲む」という行動のきっかけを考えてみてください。
冷蔵庫にお酒が入っていることを思い出したり、おいしそうなビールの広告を目にしたりするからこそ、そのあとに「お酒を飲む」という行動が起きるのではないでしょうか? このような「きっかけ」をなくしてしまえば、そのあとに続く悪習慣もなくすことができます。
◆悪習慣の「きっかけ」に着目する
- 冷蔵庫にお酒があるから飲みたくなる
→お酒を買える場所に立ち寄らない - お酒の広告を見ると飲みたくなる
→インターネット上でお酒の広告が表示されるたびにブロックする - ストレスがたまるとお酒を飲みたくなる
→別の方法でストレスを解消する
悪い習慣を断ち切る方法を8個紹介しました。よくない習慣を変えるため、「これならできそう!」という方法を見つけてみてください。
習慣を変える方法~よい習慣を身につける~
悪い習慣を変えることに成功したら、次は「よい習慣」を身につけましょう。
チャンクダウン
新しい習慣を始めたてのときには、「そうだ、アレをやらないといけないんだった……」と面倒に感じるもの。そんなときは、行動を小さく分解する「チャンクダウン」を実践しましょう。
前出の古川氏は次のように言っています。
一見複雑に見える作業も、具体化して5分単位の小さなタスクに分解していけば、行動することへの心理的な負荷は下がります。
(引用元:プレジデントオンライン|なぜ、「明日からやろう」と毎日毎日思うのか?)
「曖昧さ、複雑さ、予測不能さ」を残したままでは、なかなか行動に移れないとのこと。チャンクダウンで「明確さ、単純さ、見える化」を実現することにより、行動するハードルが大幅に下がるそうです。
◆「ランニング」をチャンクダウンする例
- ランニングウェアを着る
- ランニングシューズを履く
- 外に出る
- 公園を1周だけ走る
かたちから入る
新しい習慣を身につけるには、かたちから入るのも効果的です。道具を買ったりセミナーに申し込んだりすれば、「せっかくお金を払ったんだから、やらないともったいないよね」という心理が生まれ、習慣を継続しやすいですよ。
◆「勉強」にかたちから入る例
- 高価な文房具や本を買う
- 試験に申し込む
- セミナーやスクールに通う
- 有料自習室の会員になる
◆「運動」にかたちから入る例
- 高価なウェアを買う
- トレーニング用具を買う
- ジムに入会する
変化を加える
習慣を続けているうち、「最初は楽しかったけれど、最近はな……」と飽きを感じるのは仕方ないことです。そんなときは、
- 方法
- 場所
- 道具
- 一緒に取り組む仲間
などに変化を加え、マンネリ感を打破しましょう。
◆勉強習慣に変化を加える例
- いつもと違う場所で勉強する
- 新しい文房具を買う
- 問題集を逆の順番で解く
- 新たに勉強仲間を募る
◆ランニング習慣に変化を加える例
- いつもと違う場所を走る
- 新しいウェアを買う
- 家族や友人を誘って走る
ただし古川氏によれば、マンネリ打破の目的で「パターンやルール」を安易に変えるべきではないそう。1日当たりのノルマや使う参考書、ノートの書き方など、習慣の根本的な部分はそのままにしましょう。
楽しむふり
習慣形成コンサルタント・吉井雅之氏によると、脳は行動に影響されやすいそう。「笑う」という行動につられ、脳は「楽しい」と感じるのです。心理学で「ジェームズ=ランゲ説」や「表情フィードバック仮説」と呼ばれています。
試しにいま、「ああ、楽しいな」と声に出し、ほほ笑んでみてください。なんとなく明るい気分になりませんか?
勉強に飽きたら、「勉強って楽しいなあ」とつぶやき笑ってみる。本当はつらいけれど、「ランニングって気持ちいいな!」と言葉に出してみる。「楽しいふり」をすることで、その習慣が楽しいものだと脳に学習させられるのです。
成功イメージを描く
前出の吉井氏によると、習慣を変えた先の「理想の自分」を明確にイメージすることでモチベーションが高まるそう。
「こうなれたら嬉しいな」「ちょっと憧れるかも」くらいでOKなので、将来のビジョンを手帳やメモアプリに書き出しましょう。「○○歳までにこうなっていたい」という書き方もおすすめです。
◆将来のビジョンの例
- 営業成績でトップになれるかも!
- 英語がペラペラになったら格好いいなあ
- スリムな身体になりたい!
- 38歳までに独立して、好きなことを仕事にできたら楽しそう!
想像するのが難しいなら、これまでの成功体験を利用しましょう。「中学時代、部活の試合で活躍できて嬉しかった」という経験があるなら、それを未来に置き換え「あのときのように仕事でも活躍したい」とイメージすることで、未来への “ワクワク感” が生まれます。
アプリを活用する
習慣化に役立ってくれるのが、スマートフォンのアプリ。たくさんのアプリから厳選した4つをご紹介します。
シズリー
「シズリー」(iOS/Android)は、「お金」を介して行動を強制してくれるアプリ。アプリに対して0~10,000円のお金を預け、習慣を実行できたらお金が戻ってくるのですが、実行できなければなんと没収されてしまいます。
没収されたお金はアプリの運営費に当てられるため、一度没収されたらもう取り戻せません。「お金を失いたくない!」という強い欲求があれば、絶対に行動できそうですね。
自分ルール
「自分ルール」(iOS/Android)は、ポイント制の習慣化アプリ。「一日のノルマを達成するごとに10ポイント」と、アプリ内でポイントが貯まっていきます。
ポイントカードやスタンプカードが好きな人におすすめです。「500ポイント貯まったらケーキを買おう!」などと自分へのごほうびも決めておくと、さらに楽しくなりますよ。
Countap
習慣を数値で把握できるアプリが「Countap」(iOS)。パネルをタップしていくだけで、特定の行動をした回数をカウントできます。
問題集を1ページ進めたら、あらかじめ設定した「問題集」パネルをタップすることで、カウントが+1されます。簡単な操作でシンプルに行動を記録したいなら、「Countap」を使ってみてください。
コソ勉
弊社・スタディーハッカーの勉強記録アプリ「コソ勉」(iOS)。方眼紙状のマスがあり、15分勉強するごとに1マス塗り潰します。自分の頑張りを「塗り潰した面積」で感覚的に把握できるため、達成感・充実感を得やすい仕組みです。
塗り潰すマーカーの色は任意に設定できます。英語を勉強したら赤、経済を勉強したら緑という具合にカスタマイズしましょう。
以上、習慣を変える方法を14個紹介しました。すぐにできそうなものはありましたか? 普段の習慣を変えることで、自分を成長させていきましょう。
あなたの習慣を変える本
最後に、「習慣化のノウハウをもっと知りたいな」という方のため、きっとあなたの習慣を変える本を3冊ご紹介します。
『習慣超大全 スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』
『習慣超大全 スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』を著したB・J・フォッグ氏は、スタンフォード大学行動デザイン研究所の創設者です。『習慣超大全』では、20年以上にわたる行動科学の研究成果をもとに、習慣を変えるノウハウが詳しく解説されています。
キーワードは「タイニー・ハビット(小さな習慣)」。行動をできるかぎり小さく絞り込むことで、取りかかるハードルを下げます。
タイニー・ハビットを心がけつつ、モチベーション・能力・きっかけという3つの条件を整えることで、無理なく習慣を改善していく――という内容です。この1冊だけで、習慣の改善に必要なマインドセットをマスターできますよ。
『やり抜く人の9つの習慣』
社会心理学者ハイディ・グラント・ハルバーソン氏による『やり抜く人の9つの習慣』。やると決めたことを最後までやり抜き、成功するための心得が9つ紹介されています。
- 目標に具体性を与える
- 行動計画をつくる
- ゴールまでの距離を意識する
- “現実的楽観主義者” になる
- 成長に集中する
- やり抜く力を養う
- 意志力を鍛える
- 自分を追い込まない
- 「やめるべきこと」ではなく「やるべきこと」に集中する
120ページという読みやすいボリュームに、9つのノウハウが無駄なく詰め込まれた良書です。
『習慣が10割』
習慣形成コンサルタント・吉井雅之氏の『習慣が10割』。やる気や意志に頼らず、誰でも継続できる「習慣のつくり方」を教えてくれます。この記事でも取り上げた「楽しむふり」のほか、
- ハードルを下げる
- ゲーム感覚でやる
- 仕組みをつくる
- 「決め言葉」をつくる
などの具体的なテクニックが満載。読書や貯金など、ジャンルごとの解説も充実しているので、習慣を変えることにチャレンジしたい方にとって最適の入門書です。
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悪い習慣をやめ、新しい習慣を身につけるための方法を14個紹介しました。あなたはこれから、どんな習慣を取り入れますか? 習慣を変えることにチャレンジする方には、こちらの記事もおすすめです。
>>習慣化のコツを目標別に徹底解説! 勉強・運動・早起きを継続する方法とは
(参考)
プレジデントアカデミー|【決定版】習慣化はこれで完結!たった1つのフレームワーク
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プレジデントオンライン|なぜ、「明日からやろう」と毎日毎日思うのか?
東洋経済オンライン|「勉強や運動」が続かない人が陥りがちな勘違い
古川武士(2010),『30日で人生を変える「続ける」習慣』,日本実業出版社.
吉井雅之(2018),『習慣が10割』, すばる舎.
コトバンク|ジェームズランゲ説
朝日新聞デジタル|笑う門には福来たる
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。