海外大学が証明「外国語の勉強」の意外すぎるメリット。13か月続けると “海馬が発達” するらしい。

外国語を勉強したほうが良い脳科学的理由01

みなさんは現在、外国語の勉強をしていますか?

学生時代には英語やドイツ語を学んでいたけれども、社会人になってからはパッタリ……という人も多いはず。仕事で外国語を使ったり、外資系の会社への転職を望んだりしていない限り、外国語を今さら学び直す必要性は特に感じられないかもしれませんね。

しかし、たとえ仕事では使うことがないとしても、外国語を学ぶことには、魅力的なメリットがたくさんあるのです。今回は、ちょっとおもしろい視点から、そのメリットをご紹介。人生を好転させたいと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。

【メリット1】脳機能が向上する

じつは語学には、脳の機能そのものをベースアップさせてくれる効果があります。

エジンバラ大学(イギリス)の研究によると、外国語を学んだ人はそうでない人に比べて、学力・記憶力・情報処理の速さなどが総じて高いことがわかりました。さらに、2ヵ国語を話せる人よりも、3ヵ国語を話せる人のほうが、結果がよかったとのこと。

また、ルンド大学(スウェーデン)が、語学の学習を13ヵ月間続けさせるという実験を行なったところ、脳の構造そのものにも変化が起きたことが確認されました。語学以外の勉強をさせたグループと比べて、海馬や大脳皮質が発達していたのです。

言語学習で脳そのものが大きくなるなんて、驚きですね!

外国語を勉強したほうが良い脳科学的理由02

【メリット2】マルチタスクが得意になる

メリット1の延長ですが、語学を学ぶことにより「マルチタスク」に強くなるといわれています。マルチタスクとは、複数の作業などを同時にこなす能力のこと。マルチタスクに強くなると、たとえば会社でいくつもの仕事をバランスよく進めたり、効率的に作業したりすることができるようになります

ヨーク大学(カナダ)は、英語以外の言語(中国語かフランス語かスペイン語)をひとつ使える子どもと、英語しか使えない子どもを集め、マルチタスク能力を調べました。実験の方法は、さまざまな映像を見せ、その映像に合ったボタンを押してもらうというもの。その結果、バイリンガルの子どものほうが、マルチタスクになったときの反応速度が速いことがわかったのです。

米国立小児保健人間発達研究所のペギー・マッカードル氏は、バイリンガルの人の脳には2種類の言語が刻まれており、その2つの回路を行ったり来たりしながら話すことに慣れているため、マルチタスク能力が高くなったのだろうと解説しています。

外国語を勉強したほうが良い脳科学的理由03

【メリット3】ボキャブラリーや思考が豊かになる

外国語を習得することによるメリットの3つめは、日本語にはない語彙を習得できることです。メンタリストのDaiGo氏は、複数の言語を身につけると、物事に対しても複数の見方をできるようになり、思考が柔軟になるのだといいます。

言語によってモノの見方がさまざまであることの一例を挙げてみましょう。京都大学名誉教授の宮岡伯人教授によると、少数民族のイヌイットには、「氷(や雪)」に対する呼び名が、なんと99語もあるのだそう。

カニックは降っている雪、切片としての意味です。アニユは飲料水をつくるための雪、アプットは積もっている雪、プカックはきめ細かな雪、ベシュトックは吹雪、アウベックはイグルーをつくるための切りだした雪です。これは、初めに「ユキ」があって、それを細分化しているのではなく、初めから別個に分かれています。

(引用元:KUBA PRO|言語の違い、認識のちがい

日本語では、せいぜい「粉雪」「吹雪」「牡丹雪」くらいの区別しかあまり使われませんが、イヌイットの99種類もの区別の仕方を覚えたら、雪に対する見方はまるきり変わってしまいますよね。

このように、各言語によって物事の区切り方や呼び方は異なるため、外国語を身につけることによって、ほかの文化圏のモノの見方を獲得することになるのです。

そのほか、エラ・フランシス・サンダース著『翻訳できない世界のことば』から、各言語のユニークな単語をいくつかご紹介しましょう。外国語に興味を持つきっかけとしていただけたら幸いです。

【Fernweh(フェルンヴェー)】
ドイツ語で「まだ行ったことのない場所を、なぜか懐かしく感じるような気持ち」。これも日本語の語彙にはない言葉ですよね。2016年に大ヒットしたアニメ映画『君の名は。』で描かれた感情は、このFernwehに近いのではないでしょうか(主人公の立花瀧が、実際には会ったこともない少女・宮水三葉を懐かしく思っていた)。

【Pochemuchka(パチェムーチュカ)】
ロシア語で「質問が多すぎる人」。いわれてみれば、自分で考える前に何でも答えを聞いてくる人っているなぁ、と気づかされます。イヌイットの雪のように、言葉が増えることで物事の分類も増えるということの好例です。

【Jayus(ジャユス)】
インドネシア語で「逆に笑うしかない、つまらなすぎるジョーク」。日本でも似たような状況は見かけますが、それを単体で表す的確な言葉はないので、新鮮な感じを受けます(近い言葉は「滑り芸」などでしょうか)。

外国語を勉強したほうが良い脳科学的理由04

2050年に備えて学ぶべき言語ランキング

では、これからどんな言語を学べばいいか迷っている方のために、2050年に影響力を持つであろう言語ランキングをご紹介します。エコノミストのカイ・L・チャン博士が、「地理」「経済」「コミュニケーション」「知識とメディア」「外交」の5つの観点から、世界の言語をランクづけしたものです。

※「地理」は話されている国の数と面積、訪れる旅行者の数、「経済」はGDPや通貨の価値、「コミュニケーション」は母語話者の数や外国へ渡航する人の数、「知識とメディア」はネット上のコンテンツ量やトップ500に入る大学の数、「外交」は国際通貨基金など国際機関への加入状況などからランキングされています。

第1位:英語

チャン博士は、「コミュニケーション」以外のすべての項目について、英語を1位にランキングしています。今でも英語は世界共通語としての地位を確立していますが、その勢いは2050年にもまだ健在のようです。

第2位:中国語

2018年の国際通貨基金の統計では、中国はアメリカに次ぐ第2位のGDPを記録しており、また人口数も世界1位であることから、中国語の重要性は今後ますます高まっていきます。「コミュニケーション」の項目、つまり話す人のボリュームに関しては、英語を抜いて1位にランクされています。

第3位:スペイン語

セルバンテス文化センターが発表した2017年の統計では、スペイン語の話者は現在6億人近くおり、英語や中国語に次いで世界で3番目に多く話されている言語です。また、国際連盟の共通語のひとつとしても使われているなど、世界的にも重要性の高い言語と言えるでしょう。

4位以下のランキングは、以下の通りです。

第4位:フランス語
第5位:アラビア語
第6位:ロシア語
第7位:ドイツ語
第8位:ポルトガル語
第9位:ヒンディー語
第10位:日本語

イスラム圏で主に使われているアラビア語や、経済力を伸ばしつつあるインドのヒンディー語がランクインしていることからも、とてもリアリティのあるランキングであるように感じられますよね。世界で活躍したいと考えている方は、30年後の世界のことも念頭に置いてみてはいかがでしょうか。

***
語学の脳科学的メリットと、2050年に影響力を持つ言語のランキングをご紹介しました。語学は趣味としても一生涯楽しめるだけでなく、実用性も兼ね備えているため、社会人が始めるにはうってつけです。ぜひ試してみてください。

(参考)
ビジネスジャーナル|実は外国語を学ぶ人が享受している「驚くべき恩恵」
AFP BB News|バイリンガルの子供はマルチタスクが得意、カナダ研究
Mentalist DaiGo Official Blog|【人生を変える】脳の構造そのものを変える方法
KUBA PRO|言語の違い、認識のちがい
エラ・フランシス・サンダース 著, 前田まゆみ 訳 (2016),『翻訳できない世界のことば』, 創元社.
POWER LANGUAGE INDEX Which are the world’s most inuential languages?
GLOBAL NOTE|世界の名目GDP 国別ランキング・推移(IMF)
Instituto Cervantes|EL ESPAÑOL:UNA LENGUA VIVA

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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