よくある “積読” 3つのパターン。本を最後まで読みきれない人には何が足りないのか?

せっかく買った本なのに、いつも読まずにそのまま放置してしまう……。そんな積読(ツンドク)癖を持つあなたに、いくつかの対処法をご紹介します。結果としては同じ積読でも、そこに至るまでには「3つのパターン」が存在します。それぞれ説明しましょう。

1.一度も開くことなく積まれてしまう場合

株式会社NEWSYが運営する「しらべぇ」が、インターネットリサーチ「Qzoo」で2016年7月に行った、全国20代〜60代の男女1,376名を対象にした調査によると、“本を買ってもすぐ読まない人”の割合は全体の2割を超えていたそうです。

なかには「一気に読みたいから、まとまった時間ができるまで読まずに置いておく」という人もいますが、「買ったら満足してしまい、積読になってしまった」という人もいるとのこと。買ってから一度もなかを開くことなく積読になってしまうのは、このパターンが多いと考えられます。

“積読”パターン1の原因

たとえば何かの賞をとった本、メディアで取り上げられた本、著名人がすすめる本、書店おすすめの本などを見聞きすると、興味がわいて読みたくなるものですよね。これはセレンディピティを生む大切な要因ですが、それを手に入れることが目的になってしまうと、買っただけで満足してしまうので、積読を増やす原因になってしまいます。その本が「欲しい!」という気持ちなのか、「読みたい!」なのか、購入前に一度、自分に問いかけることも大切です。

“積読”パターン1の対処法

買ったら満足してしまうパターンは、「読まず嫌い」ならず「読まず知らない」の状態。レビューや宣伝だけではわからない、その本の魅力を再確認しましょう。

ファストフード店などのトレイに敷かれている、紙に印刷された「トレイマット広告」に載っている文字を、食べながら何となく読んでしまったことはありませんか? そのトレイマット広告を真似た、ランチョンマット読書がおすすめです。

積読本をコピー機で拡大出力し、それを食事の際にランチョンマットとして使うわけです。そうすると必然的に、積読本の一部を読むことになるはず。まだ開いていなかったその本の魅力を認識でき、積読を解消していく助走となるでしょう。ひと手間はかかりますが、効果的ですよ。

ちなみに、B6判の見開きページ(B5サイズ)をB4サイズにするなら141%拡大、A3サイズにするなら163%ぐらい拡大です。

2.ちょっと読んで、すぐに挫折してしまう場合

一応、少しは読み進めるのに、すぐに読まなくなってしまうパターンがあります。その理由として考えられるのは「内容が難しくてよくわからない」「読んでみたら面白くなかった」、そして、「そもそも読む意欲が、あまりわいていない」といったことです。

“積読”パターン2の原因

もしも、「内容が難しい」「面白くなかった」と感じたとすれば、その本の内容がよく知らないことばかりであるため、理解しようとする認知的な負荷が億劫にしていると考えられます。

株式会社「脳の学校」代表で、医学博士の加藤俊徳氏は、著書『アタマがみるみるシャープになる! 脳の強化書』のなかで、いつも使っている思考回路は高速道路のようにスイスイ行けるけれど、普段使わない思考回路だと、道路工事から始めなければいけないので、時間がかかり、嫌気がさして頓挫してしまうと述べています。

また、「そもそも読む意欲が、あまりわいていない」という状況は、この本は「読むべきである」と考え、受動的になっている可能性があります。脳科学研究所の松元健二教授が行ったストップウォッチやカードの実験では、自由に選択できることが、やる気やパフォーマンスの向上にとても重要な役割を果たしていると示されたそうです。

仕事で読まなければいけない、という状況以外は、あまり「読むべき」という観点で本は選ばないほうがいいでしょう。

「本が難しい・面白くない」の対処法

すぐに読まなくなってしまった本を再チャレンジしたいなら、まずは、その本と似た内容の、ものすごく読みやすい本を先に読んでみてください。たとえば、文字が大きくてイラストが多いタイプなどです。

そうして認知的な負荷が少ない状態でインプットされた情報は、再び、同じ内容の少し難しい積読本を読んだとき、思わぬ影響を及ぼしてくれるはずです。あ、これ知ってる」が出現するたび、難しい、面白くないという感覚を払拭してくれるはずです

「読む意欲がわいてこない」の対処法

受動的に読んで意欲を低下させてしまった本を、能動的に読むようにしたいなら、自分の行動パターンのなかで、時間を持て余すタイミングを利用しましょう

たとえば、注文してから料理が出てくるまで遅い店で1人ランチをする際、時間を持て余したら持参した積読本を読むようにするのです。最初は選択肢がないので仕方なく読むようになります。

あるいは、コーヒーを淹れるほんの数分間、席に戻るには短く、待っているには間延びするほんの短い時間にも、積読本を見開き、見開いた分だけを立ち読みします

そうして少しでも積読本を読み進められれば、その成功体験が自己効力感(やれる気)を生み出すので、読む意欲も少しずつわいてくるはず。2016年に日本教育工学会論文誌で発表された論文では、自己効力感は内発的価値に正の影響を与えると示されています。内発的動機づけ(やる気)は、内側からわきあがる、持続力のある意欲なのです。

3.半分ぐらいまでは読むが、最後まで行けない場合

5割6割ぐらいは読めるものの、なぜか最後まで読み終われないパターンもあります。途中まではどんどん読み進められたのに、なぜか途中でピタリと止まり、積読本と化してしまうのです。

“積読”パターン3の原因

このパターンの原因は、「飽きた」にほかなりません。脳が、「もっと何か、他の新しい情報が欲しい!」と訴えている状態だといえます。脳科学者の茂木健一郎氏によると、この「飽きっぽさ」は脳の特徴のひとつで、「変われる」という脳の才能でもあるそう。

“積読”パターン3の対処法

『思考の整理学』で有名な外山滋比古氏は、著書の『乱読のセレンディピティ』で、「すき間時間を活用しながら、1日に複数冊読んだほうが集中力を持続でき、飽きもこない」と乱読をすすめています。この積読パターンの対処法は、乱読が最適だといえるでしょう。

そこで、おすすめは、家でコーヒーやお茶を淹れるほんの数分間を使って乱読したり、就寝前に気楽な乱読を繰り返し寝入ったりする方法です。後者は外山氏のいう“すき間時間”とは少し違いますが、布団に入ってから寝入るまでの時間、新しい発見が大好きな脳を楽しませることができますよ。

部屋の電気を消して寝床に入り、スタンドライト、あるいはスマートフォンに標準でついている「簡易ライト」「懐中電灯」などのタイマー機能を使い、途中まで読んだ積読本を適当に選び5分間だけ読むのです。ライトが消えたら強制的に終了。その際に眠ければ寝て、眠くなければ再び5分間、他の途中まで読んだ積読本を読むというわけです。

こうして乱読していると、飽きなくなり、むしろ「もう少し時間を延長して読みたい」という気持ちになります。その気持ちには抗わず、無理せず少しずつ、時間を延長してみてください。

*** なお、独学で東京大学の教授になった柳川範之氏は、「自分が理解しやすいパターンと、その本の説明や論旨の展開がかみ合っていないと、内容が頭に入ってこない」と説いています。積読本のなかには、本当に「合わない本」もあるかもしれません。そうしたことも踏まえ、気を楽にして積読と向かい合ってくださいね。

こちらの記事『“たった7日間” で積読を解消できる3つのルール。「家で立ち読み」が効く納得の理由。』にも、画期的な“積読”解消法をご紹介しています!

(参考) しらべぇ | 気になるアレを大調査ニュース!|買って満足?本を購入しても「積ん読」してしまう人の傾向 いま読むべき本がわかるWebマガジン コトビー|挫折なしで読書習慣を身につける3つのコツ 玉川大学・玉川学園|玉川の教育|玉川大学 読売新聞社立川支局 共催 連続市民講座第4回「人間のやる気を脳科学で解明〜自由と平等の大切さ〜」 J-STAGE|自己効力感,内発的価値,感情的エンゲージメントの関連 新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部 | やる気の心理学:講演(心理学総合案内こころの散歩道) コンパス・ポイント & ジャパニスト | 本質を伝える広告・出版会社|飽きることは、実は脳の才能のひとつです Study Hacker|セレンディピティが生まれる! 脳の編集力を強化する「乱読」の魅力 Study Hacker|東大教授とハーバード合格者が教える「最高の独学法」 加藤俊徳著(2010),『アタマがみるみるシャープになる! 脳の強化書』,あさ出版. 外山滋比古著(2014),『乱読のセレンディピティ』,扶桑社.

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