資格試験の勉強において最も重要なポイントと言っても過言ではないのが「やらないことを決める」ことです。
逆に「この参考書を全部完璧にわかるまでやろう」などと考えてはいけません。全試験範囲のうち、重要なところ・よく出るところと、まず出題されないであろう些末なところは、ある程度はっきり分かれます。後者の些末な部分に必要以上に手をかけてしまうことは、試験勉強の効率を大きく悪化させることにつながります。
何でもかんでもやればいいというものでもなく、むしろそれではエネルギーが分散してしまい、真に手を付けるべき重要ポイントの対策がおろそかになってしまいます。やらないことをはっきり決め、真にやるべきことだけに注力する、すなわち「選択と集中」が、効果的な勉強のためには必要不可欠な考え方です。
「明らかにやらなくていいこと」をやってしまっていないか?
「やらないこと」には、大きく分けて2種類あります。「明らかにやらなくていいことなのでやらないこと」と、「戦略的にあえて捨てると決めたうえでやらないこと」の2つです。
「明らかにやらなくていいこと」とは、試験で解答するのにまったく必要のない力を磨く勉強や、得点の向上にまったく結びつかない取り組みです。
たとえば調理師や潜水士の試験では、いかにも実技試験がありそうに見えて実は筆記試験しか課されませんので、料理スキルを磨く・水に潜るといった訓練が得点に影響することはまずないでしょう。また、計算問題がある試験で、計算に使う公式を一生懸命覚えたけれど、実は計算式は問題文中で普通に与えられる(問題用紙に書いてある)ので覚える必要がまったくなかった、というケースもありますね。
試験勉強においては「こういうことを勉強しなくてはいけなそう」という変な思い込みが意外とあるものです。だからこそ過去問分析をしっかり行って、「明らかにやらなくていいこと」を洗い出し、これは一切やらない! としっかり認識しておくのは意外と大切なことです。
「あえて捨てる」箇所をいかに決めるかで勉強効率は大きく変わる
より重要なのは「戦略的にあえて捨てること」を決めることです。これをいかに決めるかで、試験勉強の効率は大きく変わってきます。試験で点を取れる人は、このあたりの見極めや取捨選択が非常にうまいので、最小限の時間と労力で試験合格という結果を出せているわけです。
あえて捨てるポイントは、基本的には「そこに時間や労力をかけてもほとんど得点の向上が見込めそうにないところ」という観点で見極めます。もっと掘り下げて言うと、下記のようなポイントが挙げられます。
【1】配点が低い科目・分野 【2】めったに出題されない分野 【3】機械的な暗記事項が多すぎる分野 【4】自分には難しすぎる、修得には時間がかかりすぎると思われるところ 【5】他の受験者も解けないだろうと思われる分野・問題 【6】直近の回の試験で出されたばかりで次は出ないと思われるところ
ただし、ただ単に「苦手な分野」だから捨てる、というのはダメです。むしろ、苦手な分野、現状いまいち得点できていない分野だからこそ、大きなのびしろがあります。これについてはまた別の機会に詳しく書きたいと思います。
「これを捨ててしまって本当に大丈夫かな」「捨てたところが試験で出てしまったらどうしよう」と不安になるかもしれません。しかし、「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがあるように、「捨てる勇気」「絞り込む勇気」というのもまた大事なんです。
後ろ髪を引かれてしまう気持ちもわかりますが、全部やろうとして結局中途半端になってしまうくらいなら、思い切って大事なことに注力したほうが良い結果を生むものです。勉強でも仕事でも恋愛でもそうですね。そこはもう開き直って、前だけを見て進んでいきたいものです。