ランチを食べにカフェに行って、どうしてもメニューが決められない……。 迷いに迷って2品に絞ったところで、後は店員さんを呼んでどうしても注文しなければいけない状況に自分を追い込む通称”店員さんプレッシャー”を利用してやっとこ注文を完了する。 こんな経験、ありませんか?
もしくは、お店イチオシメニューを流れるように選んだり、友達が選んだメニューと同じものを選んだり。 日常の中での小さな決断なら、優柔不断でも、自分で決められなくても問題ないかもしれません。 でも、いざ大きな決断を自分でしなければならない事態になった時、納得いく判断ができずに、後で後悔する、なんて嫌ですよね! 今回は、決められる自分になるための考え方や、簡単なトレーニングをご紹介します。
優柔不断が「怖いもの」だと自覚する
優柔不断の本当に怖いところは、大事な決断の時に、「自分よりも他人の意見やデータを信用してしまう」ということです。 私自身も優柔不断なので、センターの自己採点が終わった後、悲惨な結果の合否判定資料に、出願する決意が揺らいでしまいました。(その時のセンターの点数では、京大合格率は10%にも満たなかったのである意味当然かもしれませんが……。) でも最終的には、ここで受験校を変えたらなんのために1年間勉強してきたのかわからないな、と踏みとどまり、京大に出願しました。
自分に自信がない時、人はとにかくデータに頼りがちです。 データは統計的に出された値なので客観性があって信頼できそうですし、失敗した時も、データという客観的数値に基づいたということで責任逃れができます。 でも、それでは本当に自分の満足のいく判断ができないかもしれません。 データすらない時には判断すらもできなくなってしまうかもしれません。 そうした事態を防ぐために、少しでも自分で決められるようになっておきたいですよね。
「決断」の本当の意味を理解する
そもそも決める、選択する、という時、無意識に選ばなかった選択肢を「捨てる」ように感じていませんか。 実際は、少し違います。 哲学者ヘーゲルが提唱した、「弁証法」という法則があります。 その中に出てくる、「アウフヘーベン」、日本語では「止揚」と呼ばれる用語。 現代文や倫理の授業で登場して、ちんぷんかんぷんになった人も多いはず。 一般的に言われる説明としては、ある対立する仮説AとBがあり、一段高い視点から見てそれらを共存させるような結論を導き出すこととされています。 このアウフヘーベンは、ドイツ語でAufbewahrenと書き、「保管する、大事にしまっておく」という意味の単語です。 要するに、弁証法におけるアウフヘーベンは、
対立を単純に否定するのでなく、否定すると同時に「大切にしまっておく」のである。 つまり、対立は対立として「それは大切にしまっておいて」、その一段上の次元で和解するのである。 [引用元:哲学科教員ブログ ここは、ひとつ、アウフヘーベンということで・・・――ヘーゲル先生、出番ですよ!]
というのが正しい理解なんです。 この考え方にならえば、対立する要素があって決断しなければいけない時、どちらかの要素を完全に捨てる必要はありません。 選ばなかった選択肢も、後の自分の人生の中で、選ぶ時が来るかもしれません。 もしくは、選ばなかった選択肢があったこと、その選択で悩んだという経験が、後に判断する時の大事な糧になります。 判断する時は片方を捨てると思わずに、「両方とっておくけど、今はこっちを選ぶ」という気持ちでいると、一気に楽になりますよ。
感性を鍛えるための0.5秒トレーニング
最後に紹介するのは、今からでもすぐ実践できる、判断力を鍛えるためのトレーニングです。 これは、横田尚哉さんの『ビジネススキルイノベーション「時間×思考×直感」67のパワフルな技術』 で紹介されている方法です。 やり方は簡単。食事をしにお店に入ったら、注文するメニューを0.5秒で決める。これだけです。 一つ一つのメニューを見て吟味するときには、分析的、論理的な処理を行う左脳が働きます。 一方、0.5秒で選ぶ時には、直感で選ぶしかないので、右脳が働くことになります。
「〇・五秒で結論を出すことで、情報を右脳的に処理する感性が鍛えられる」 [引用元:同書p105 30 〇・五秒トレーニングで感性を磨く]
と言います。 このトレーニングは、メニューを決める場面だけでなくても、様々なところで行うことができます。 日常的な小さな決断においてこのトレーニングを積み重ねることで、大きな決断をデータなしにしなければいけない時も、自分の感性による判断に自信が持てるようになります。
自分で決めなければいけない時、どうしても迷ってしまうこともあるかもしれません。 迷うのは必要なことです。 ですが、迷いすぎて自分の納得のいかない判断に流されることがないよう、普段から少しずつ、「決められる自分」になっていきませんか。
参考サイト HatenaKeyword アウフヘーベン 弁証法wikipedia 哲学科教員ブログ ここは、ひとつ、アウフヘーベンということで・・・――ヘーゲル先生、出番ですよ!]
参考文献 横田尚哉/2012/株式会社プレジデント社/『ビジネススキル・イノベーション「時間×思考×直感」67のパワフルな技術』

