些細なことでイラッとしたら「○○」をしてみて。心が疲れたときの対処法3選

心が疲れたときの対処法3選01

仕事中や日常生活でちょっとしたことに「イラッ」「モヤッ」とすることはありませんか? たまにならばいいですが、毎日のように続くのであれば、ストレスがどんどんたまっていってしまうので要注意。

今回は、些細な「イラッ」「モヤッ」を手放してストレスフリーになりたい人のために、精神をうまくリフレッシュさせる方法をご紹介します。

些細な「イラッ」を我慢してはいけない理由

職場などの人間関係でイライラするけれど、その場で感情を表に出すことは滅多にない。このように我慢することが当たり前になっている方は、多いかもしれません。一見するとすばらしいこの「我慢をする」という対処法には、じつは大きなデメリットがあります。

長年自衛隊メンタル教官を務め、『人間関係の疲れをとる技術』などを著書にもつ下園壮太氏は、自分の気持ちにフタをして我慢をすることが、いかに精神をすり減らすことになるかを、次の3つのポイントで説明しています。

  1. 感情エネルギーを3倍も消費
    たとえば、忙しいときに同僚に仕事を頼まれ、断わることができず「イライラ」しながら対応することになった場合。頼まれた仕事をするのに加え「イライラ」という感情が負担を「1」プラスします。さらにその感情を「我慢」することで負担感が「1」追加。作業後もイライラと戦い続けることで、さらに「1」追加。トータルで3倍もの負担がかかり、疲労が増加してしまうのです。
  2. 被害者意識が増加する
    こうして感情エネルギーを消費したあなたは、無意識に「また仕事を頼まれるのでは」と警戒心が高まります。そこで、今度は後輩が仕事の助けを求めてきたらどうでしょう? イライラしていなければ、快く受けていたかもしれません。「頼りにされて嬉しい」という感情が湧いていた可能性もありますよね。しかし、精神がすり減っているあなたは、「みんなが私の邪魔をする……」と感じてしまう可能性があります。我慢ばかりしていると、気づかぬ間に自分のなかで被害者意識が大きくなってしまうようです。
  3. 自信が低下する
    我慢ばかりしていると、「私の感覚や意見は、重要ではない」というネガティブな言葉を自分のなかで反芻することが増え、自信が低下。すると気分が沈み、疲れがたまり、警戒心がまた高まることで、イライラや不安がさらに増し、どんどん疲れるという悪循環に陥ってしまうのです。

些細な「イラッ」を我慢してしまう人がまずすべきは、自分の感情にフタをしないということ。そして次のステップとして、以下に紹介する3つの方法を実践してみましょう。

心が疲れたときの対処法3選02

対処法1:悩みを三人称で書いて、感情コントロールのできる人になる

我慢するのはよくないとはいえ、イラッとするたびに怒りをあらわにしていいわけではありません。我慢するかわりに、感情を上手にコントロールしましょう。そのためには自分を俯瞰して見る能力が必要。この能力を鍛えるのに有効なのがイリイスト日記法です。

「イリイスト日記法」では、主語を「僕」や「私」ではなく「彼」や「彼女」などの三人称に置き換え、自分を取り巻く状況を第三者の視点で日記に書き出します。多くの研究者のあいだでも注目の集まるメソッドです。

ウォータールー大学のイゴール・グロスマン博士とミシガン大学のイーサン・クロス博士が300人の被験者を対象に行なった研究によると、三人称での日記を4週間実践したグループは、一人称での日記を同期間行なったグループに比べ、実験前よりも気持ちの安定や、ポジティブ感情の増加が見られたそう。

具体的なやり方は以下のとおり。

  1. モヤモヤしている出来事について、「彼」や「彼女」という言葉を使い第三者目線で書き出す
    (例:彼女は今日、先輩に挨拶をしたのに無視されて腹を立てた)
  2. その下に、ほかの人になったつもりで、冷静な意見や別の見解も述べる
    (例:先輩は気づいていなかっただけかもしれない。本当に無視したのであれば相手に問題があるし、気にせず今後も挨拶するのがよさそう)

自身の感情の状態を正確に把握することで、ネガティブな感情に適切に対処でき、気持ちを安定させることができます。研究のように4週間毎日続ければ、第三者視点の考え方が自然と身につき、感情に流されず冷静になることが期待できますよ。

心が疲れたときの対処法3選03

対処法2:論理的に問題の解決方法を考える

世界最強のコンサルティングファームと呼ばれるマッキンゼー・アンド・カンパニーで活躍した大嶋祥誉氏は、ロジカル分析ノートを実践するとロジカルに課題解決に結びつけることができると言います。

方法は次のとおり。

  1. ノートの左ページに、自分が抱えている問題について、事実とそれに対して感じたことを書き出す
    (例:今日、チームで準備してきた仕事を同僚がひとりで手柄にしてしまった。腹が立ったし、悔しい。卑怯だと思う)
  2. 1の下に、さらに深堀りするために「なぜそう感じたのか」を自問自答しながら書く
    (例:すごくムカつくけど今更何も言えない。これで同僚だけが評価されて昇進したら嫌だな。自分の頑張りを認めてもらえなくて悔しい)
  3. 右ページに問題の解決方法を書く
    (例:そういう卑怯な人がいるということを心に留めておき、今後はそうさせない工夫をする。チームで行なっている仕事は都度上司に報告しよう)

ロジカル分析ノートのポイントは、「イラッ」とした感情を「解決すべきもの」として取り扱うこと。事実に対する自分の気持ちを書き出し「なぜそう感じるのか」と何度も深堀りすることで、頭の中のモヤモヤがはっきりと可視化されます。感情と事実を切り分けて考えられるようになり、モヤモヤした状態から抜け出して解決策を導くことができますよ。なんとなく「イラッ」「モヤッ」としたときは、自分の感情を的確に言葉にすることが問題解決につながるのですね。

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対処法3:「イラッ」を利用して成長する

自分の感情にフタをせずに客観的に見つめ、論理的に問題を解決する方法をお伝えしてきました。最後のステップとして、日々の「イラッ」「モヤッ」を利用して成長につなげる方法をご紹介します。心理学者のアリア・クラム氏が提唱する、ストレスをエネルギーに変換する3ステップです。

  • ステップ1:体の状態を実況中継する
    「イラッ」としたら、まずはそれを認識し、体の状態を観察する。「ストレスを感じたときに自分の体がどのような反応をするか」を認識する。
    (例:頭が痛い、胃がムカムカする)
  • ステップ2:脅かされている大切なものに目を向ける
    大切なものが脅かされていると感じたとき、人は防衛本能としてストレスを感じる。つまり、ストレスを感じているということは、自分にとって大切なもの(快適な空間、自尊心、お金、時間、将来の夢など)が脅かされているということ。それを自問自答して考える
    (例:イラついているのは大切な何かを脅かされているからだ。それはいったい何だろう?)
  • ステップ3:ストレスをプラスのエネルギーにする
    ストレスをエネルギーに変える方法を考える。ストレスを活用して、大切なものを守るために行動する。
    (例:最近、先輩に仕事を頼まれるとイラッとしてしまう
    →仕事が最近忙しすぎて、とりたい資格の勉強に時間を割けていないから。先輩から声をかけられ仕事が増えることによって、自分の目標達成が脅かされている
    →通勤時間を1時間早めて、早朝の集中力が高い時間帯に会社近くのカフェで勉強をする。先輩にはあらかじめ今やっている仕事の量や忙しさを共有しておく)

なんとなく「イラッ」としていたことを明確にし、自分にとってプラスになる行動を具体的に決めるのです。

不快な気分になったときは、自分が本当に大事にしている価値観や、理想とする姿、達成したい目標などが見えてくるチャンスです。ストレスの原因を探り、さらにそれを活用してプラスのエネルギーに変換させましょう。

***
仕事中や日常生活で、ちょっとしたことで不快な思いをしたときは、気持ちにフタをせずに、自分の状態を客観的に見つめて受け入れましょう。そこから具体的な解決策や、さらにはそのストレスをきっかけに成長する方法を見出せれば「イラッ」「モヤッ」とすることはもう怖くありませんね。ぜひ参考にしてみてください。

(参考)
AERA|人間関係で“我慢”はNG 脱するポイントを元自衛隊メンタル教官が解説
下園壮太(2017),『人間関係の疲れをとる技術』,朝日新聞出版
aeon|Why speaking to yourself in the third person makes you wiser
Research Digest|A New Trial Of An Ancient Rhetorical Trick Finds It Can Make You Wiser
Science Direct|Reinvestment, task complexity and decision making under pressure in basketball
PHP Online|マッキンゼーで学んだ「2冊のノート」の感情コントロール術
東洋経済Online|ストレスに強い人が実践する毎朝1分の習慣
DaiGo(2018),『ストレスを操るメンタル強化術』,KADOKAWA

【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。

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