ポジティブ思考になるための「10のしないこと」――自分を追い込まず、肩の力を抜いてみて

ポジティブ思考になるための「10のしないこと」1

「また失敗するかも」
「頑張ってもどうせ報われないだろう」

……仕事でうまくいかないと、ネガティブ思考に陥りがち。加えて最近は、コロナ・ショックによるストレスや不安のせいで、ネガティブ思考に拍車がかかっている人もいるのではないでしょうか?

そこで今回は、ポジティブ思考になるための「10のしないこと」を考えてみました。

ネガティブな気持ちになるのは、脳の自然な反応

精神科医の西多昌規氏によると、嫌なことがあったときにネガティブな感情になるのは、脳の自然な反応なのだそう。

「取引先にひどく叱られた」などの嫌なことが起こると、海馬や扁桃体が属する脳の大脳辺縁系が反応します。まずダメージを受けるのは、短期記憶をつかさどる海馬。ストレスを受けた海馬は、恐怖や不安の発信源である扁桃体に、「つらい」「きつい」といったネガティブな思考を起こすように信号を送ります。

これが、嫌なことに対してネガティブな感情を抱く脳のメカニズムです。ネガティブな気持ちになること自体は、なんら問題視すべきことではありません。

ポジティブ思考になるための「10のしないこと」02

自分を追い込まないことが、ポジティブ思考になるカギ

そして、脳にはダメージから回復する力があります。その機能をつかさどるのは、脳の前頭前野と呼ばれる部分です。前頭前野には、外部の刺激(=嫌なこと)を認知し、扁桃体が発するネガティブな感情が正しいものか判断する力があります。

その際、前頭前野が「さほどくよくよすべきでない」と判断したならば、そのネガティブな感情をポジティブな方向へと切り替えます。それはたとえば、上司に怒られてつらい気持ちになったとき、「厳しいことを言われたけど、勉強になった」とプラスに考え直すようなこと。こうして、脳をダメージから回復させるのです。

西多氏によると、ネガティブな人とポジティブな人の違いは、この前頭前野による回復力を「妨害しているか・いないか」の違いにあるのだそう。その妨害の原因となるのが「自分を追いこむ」こと。ネガティブ思考が慢性化している人は、これが習慣化してしまっていると説きます。

つまり、ポジティブ思考になるためには、いかに自分を追い込むことを「しない」かがカギを握っているのです。それを踏まえて、ポジティブ思考になるための「10のしないこと」を考えてみました。

ポジティブ思考になるための「10のしないこと」

ポジティブ思考になるための「10のしないこと」03

「1. 生活リズム(睡眠、食生活)を乱さない」

脳神経外科医の築山節氏は、ネガティブになりそうなときほど、規則正しい生活を心がけるべきと言います。理由は単純で、睡眠不足や栄養バランスの乱れた食生活により脳や体が疲弊すると、最高のパフォーマンスを発揮できないため。よい成果を挙げられれば、ネガティブ思考になるきっかけをつくらないですみます。そのためには、心身を整えることが肝心だというわけです。

仕事で結果が出ないと、残業や徹夜をしてリカバリーを図ることもあるかもしれませんが、ポジティブ思考になる基本として規則正しい生活を維持しましょう。

「2. 『できないこと』にばかり目を向けない」

「今回もダメ出しされた」「次もダメかもしれない」……うまくいかないときは、自分が「できないこと」に目を向けがちです。しかし、こうして悩む時間は、脳全体の活動を停滞させてしまうと築山氏は言います。それよりも、小さなことでもかまわないので「できたこと」に目を向けるほうがよいとのこと。

できたことを見つけられないときは、簡単な作業をして、それを「できた」とほめるだけでも効果的です。たとえば、書類やパソコンのデスクトップを整理して「よくできた、これで仕事がしやすくなった」とほめるだけなら、仕事の合間にもできるのではないでしょうか。

ポジティブ思考になるための「10のしないこと」04

「3. 現実逃避や先延ばしをしない」
「4. 本当にやりたくないことなら、無理に続けない」

築山氏によると、脳には、ある行動に対して「それが自分にとってプラスかマイナスか」を判断する性質があるのだそう。プラスになると判断したことなら、一時的に不快をともなう場合でも受け入れることができます。一方、マイナスになることは、一時的に快を得られるものであっても、その行動がネガティブ思考に拍車をかける原因になると言います。

たとえば、「上司に毎日叱られるうえ、任される仕事は雑用だけでつらい……」というような場合。たとえつらいと思っても「それが自分の夢を叶える通過点のひとつだ」とプラスにとらえられるなら、一時的に落ち込んでも、「よし、頑張ろう」と受け入れることができます。

一方、嫌なことがあったからといって、ゲームやインターネットなど一時的に快を得られるもので現実逃避をしても、気が晴れないことがありますよね。これは、脳が現実逃避をマイナスだと判断しているから。それなら、上司に叱られたり雑用をこなしたりするのがつらくても、先延ばしせずすぐに向き合ったほうが賢明なのです。

加えて、本当はやりたくないことを無理に続けるのも、脳はマイナスと判断するそう。先ほどの例なら、「毎日上司に叱られながら雑用ばかりして、自分は何のためにここにいるんだろう」と考えてしまう場合は、マイナスととらえているわけです。

このことから、築山氏は自分の価値観に忠実でいることは、ポジティブ思考の基本だと言います。もしもあなたに、やりたくないのに無理に続けていることがあるなら、その行動には本当に価値があるのか、あらためて考えてみるのもひとつの手です。

「5. 自分を『ついで叱り』しない」

もともとは「今日のデータ入力のミス」を責めていただけなのに、過去に電話応対で失敗したことや備品発注を誤ったことも思い出して、「だから自分はダメなんだ」と責めてしまう……。そんな「ついで叱り」も、自分を追い込む原因になります。

トレスペクト教育研究所代表で、脳科学などの知見を取り入れた勉強法を提唱している宇都出雅巳氏によると、「ついで叱り」は、ひとつの失敗をきっかけに、脳の網目状に張りめぐらされた神経回路にある過去の失敗の記憶が、次々と呼び起こされることで起こります。

これを止めるには、「ついで叱り」の始まりを自覚したら、席を立ったり深呼吸をしたりと、まったく関係のない行動をとって、記憶の連鎖を止めるのが有効とのことですよ。

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完璧を求めず、70~80%できれば成功と考えよう

「6. すべてを自分のせいと考えない」

西多氏によると、「メランコリー親和型」という性格の人は、どんな失敗にも負い目を感じ、自分を責めてしまいがちなのだそう。その特徴は、まじめで責任感が強く、自分の仕事や成果に対する要求水準が高い、というもの。これらに当てはまる人は部分的に責任転嫁するのがよいと言います。

たとえば、自分が企画したイベントに思ったよりお客さんが集まらなかったときは、自分のせいで失敗したと考えるのではなく、天気のせいにしてしまうのもひとつの手ですよ。

「7. 考えても仕方のないことまで考えない」

うまくいかないときは、あれこれ考えをめぐらせがち。しかし、他人の考えや評価は、考えても仕方のないことだと西多氏は言います。なぜなら、他人の考えを正確に把握することはできませんし、仮にわかったとしても変えようがないからです。

「仕事で結果を出せない自分を、仲間たちは馬鹿にしているかもしれない」……こんなことを考えて、余計に自分を追い込むのはやめましょう。

「8. ネガティブな思考をひとりで抱え込まない」

ネガティブな思考はひとりで抱え込まず、人に伝えるほうがよいと西多氏は言います。自分の気持ちをオープンにすると、相手も心を開いて、両者のあいだに共感が生まれます。これが脳内で嫌な記憶を処理して、忘れる手助けになるのです。同僚と悩みを打ち明け合ったあと、お互いにすっきりした顔になった経験を持つ人はたくさんいることでしょう。

「あの取引先への営業、気が重いんだよね」「最近、パソコンの調子が悪くてさ」と軽くぼやく程度にして、「まあ、しょうがないよね」と笑って終わらせるのが、打ち明けるコツだとのことですよ。

ポジティブ思考になるための「10のしないこと」06

「9. 不要な情報を目に入れない」

ポジティブ思考の人は、不要な情報に惑わされないと説くのは、大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座特任教授の梶本修身氏。たくさんの情報に目を通すことは、脳の負担になるうえ、不要な心配や憶測もしがちになります。ポジティブに考えられる人たちは、必要な情報だけをインプットすることで、そうした余計な負担を脳にかけないようにしているのです。

うまくいかないときほど、同僚や友人たちのSNSをチェックして、自分と比較してしまう人もいるかもしれませんが、これこそ不要な情報です。見なくてもよい情報を見て余計に落ち込んでいるなら、すぐにやめましょう。

「10. 何事も完璧を目指さない」

完璧主義な人は1%のミスでもダメージを受けやすく、さらにネガティブ思考からの回復力が弱い、と西多氏は言います。なぜなら、自分自身への信頼と、周囲からの期待の両方を裏切ることによって、二重に傷ついてしまうためです。そのため、完璧を目指すよりも70~80%程度できればよいと考えたほうが、ダメージが少なく、脳の回復力も培われるそうです。

加えて梶本氏は、60~70%の力で頑張ろうと考えたほうが、仕事の効率は高まると言います。余力が残るぶん、脳に疲労がたまらず、継続してよいパフォーマンスを発揮できるためです。自分を追い込まないために、少し肩の力を抜いてみましょう。

***
自分を追い込む習慣を減らせば、ネガティブ思考の慢性化から抜け出し、ポジティブ思考に変われる可能性があります。できることから、少しずつ始めてみましょう。

(参考)
西多昌規 (2013), 『「凹(ヘコ)まない」技術』, PHP研究所.
築山節 (2009), 『脳から変えるダメな自分 「やる気」と「自信」を取り戻す』, NHK出版.
宇都出雅巳 (2018), 『頑張らずにうまくいく 自分を変える「脳」の習慣』, SBクリエイティブ.
梶本修身 (2017), 『すべての疲労は脳が原因 3 <仕事編>』, 集英社.

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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