
準備に何時間もかけて、資料も完璧に仕上げたのに……終わった瞬間、聞き手の反応がイマイチ。「あれ、伝わってない?」そんな経験、ありませんか。
内容に自信があるからこそ、相手に響かないもどかしさは余計につらいものです。「もしかして自分のプレゼンって、つまらないのかな」と不安になることもあるでしょう。
でも、じつのところ問題は “内容の質ではない” かもしれません。
スウェーデンのフィンテック企業KlarnaのCEO(Sebastian Siemiatkowski氏)は、決算発表をAIアバターで行ない話題になりました。*1
ビデオ会議プラットフォーム大手のZoom CEO(Eric Yuan氏)も、決算説明会でAIアバターを使用しています。*2
ただし、彼らがやったのは決算発表「全部」をAIに任せることではありません。Klarnaは冒頭の1分23秒のハイライト部分のみ、Zoomも最初のコメント部分だけをアバターで行ない、重要な質疑応答は本人が対応しました。
つまり、いつものプレゼンに「ちょっとした演出」を加えただけで、世界中のメディアが取り上げる話題のプレゼンに変わったのです。
よいコンテンツ + ちょっとした工夫 = 「心に残るプレゼン」ということ。
本記事では、あなたの価値ある内容を、聞き手にしっかり届けるための実践的な演出術をご紹介します。
「内容はよいのに退屈」問題を解決する
多くのビジネスパーソンが直面する共通の悩み――それは、準備に時間をかけて内容も充実しているのに、聞き手の反応が薄いことです。
特にこんな場面で起こる傾向があります。
- 技術的な説明が多いプレゼン
- 数字中心の業績報告
- 毎回同じフォーマットの定例会議
- よく練ったわりには印象が弱い企画提案
問題は内容の質ではなく、「注意を引く仕掛け」の不足です。
どんなに価値のある情報でも、聞き手の注意が向いていなければ印象に残りません。逆に、ちょっとした演出を加えるだけで、同じ内容でも劇的に印象を変えることができます。
CEOたちが実践した「演出効果」
各メディアに見られる「KlarnaとZoomのCEOが実際に得た効果」を見てみましょう。
話題性・注目度の向上
TechCrunch、Entrepreneur、PC Gamerなど多数のメディアが取り上げ
記憶への定着
「初のAIアバターCEO」として業界で語り継がれる
ブランドイメージの強化
「AI先進企業」としての印象を効果的にアピール
視聴者の関心維持
通常なら流し聞きされがちな決算発表に最後まで注目
これらはすべて、内容に「演出」を加えた結果です。決算の数字自体は変わりませんが、伝え方を工夫することで印象が大きく変わりました。

「ちょっとした仕掛け」が生む大きな変化
重要なのは、彼らが行なったのは「大掛かりな変更」ではなく「ちょっとした工夫」だったということです。
Klarnaの場合は1分23秒の短い動画でハイライトのみを発表。Zoomの場合は冒頭部分のみアバターを使用し、Q&Aは本人が対応しました。
つまり、プレゼン全体を変える必要はなく、一部に印象的な要素を加えるだけで十分効果があるのです。
身近な場面での応用例
この考え方は、私たちの日常的なプレゼンにも応用できます。
- 定期報告:冒頭にショート動画で要点をまとめる
- 技術説明:難しい部分をインフォグラフィックで視覚化
- 企画提案:一部をストーリー仕立てで構成
- 研修資料:キーポイントをクイズ形式で提示
- チーム会議:進捗をゲーム風のダッシュボードで表示
どれも内容の本質は変えず、「伝え方に工夫を加える」アプローチです。

印象的なプレゼンをつくる実践ステップ
では具体的に、どのようにして「退屈なプレゼン」を「印象的なプレゼン」に変えればいいでしょうか。
1. 現状分析と演出ポイントの特定
2. 具体的な演出テクニック
効果測定の重要性
演出を加えたあとは、必ず効果を測定しましょう。
定量的指標:質問数、フィードバック数、提案の採用率、会議後のフォローアップ数
定性的指標:「印象に残った」「分かりやすかった」といったコメントの内容と頻度
これらを記録していくことで、どの演出が効果的だったかがわかり、次回のプレゼンに活かせます。
バランスの取り方
ただし、演出は「内容を引き立てる脇役」であることを忘れずに。KlarnaやZoomのCEOも、アバターで注目を集めたあとは、しっかりと実質的な内容を伝えています。
演出8:内容2ではなく、内容8:演出2くらいの比率を意識することで、「面白いだけでなく、価値のあるプレゼン」をつくることができます。
***
印象的なプレゼンは、特別な才能や高価なツールがなくてもつくれます。大切なのは「聞き手の立場で考える」こと、そして「ちょっとした工夫を恐れない」ことです。
今度のプレゼンでは、ぜひひとつでも新しい演出を試してみてください。その小さな変化が、あなたのプレゼンを「また聞きたい」と思わせる印象的なものに変えてくれるはずです。
*1: Entrepreneur|Klarna Uses an AI Clone of Its CEO to Summarize Earnings
*2: TechCrunch|After Klarna, Zoom's CEO also uses an AI avatar on quarterly call
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。