サム・アルトマンが手放さない「ポケットノート」。AI時代に小さなノートが最強な理由

白いデスクで小さなノートに鉛筆で文字を書く手元。シンプルな環境で思考を整理している様子。

ChatGPTを生み出したOpenAIのCEO、サム・アルトマン。AI時代の最前線に立つ彼が、実は「ポケットに入る小さなスパイラルノート」を2〜3週間で1冊使い切るほど愛用していることをご存知ですか?

最先端のテクノロジーを扱う人物が、なぜあえてアナログな「小さなノート」を選ぶのか。その答えは、「デジタルより速く、直感的で、気が散らない」から。アルトマンは、ページを破って机に広げ、アイデアを並べ替えながら思考を整理します。不要なものはくしゃくしゃに丸めて床に捨てる。このシンプルな方法が、彼の創造性を支えているのです。

もしあなたが、業務効率を上げたい、創造的なアイデアを生み出したい、あるいはコミュニケーションをスムーズにしたいと考えているなら、この「小さなノート」は試してみる価値があります。ここでの「小さなノート」とは、A6文庫本サイズやB6漫画コミック単行本サイズ以下の、主に横開きの綴じノートのことです。

今回は、仕事で小さなノートを使うことで得られる、想像以上に嬉しい4つのメリットをご紹介します。

メリット1.  ひらめきを逃さないノート術

「さっき、よいアイデアが浮かんだのに、なんだったっけ?」

こんなシーン、誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。じつは、ひらめきや新しいアイデアは、オフィスのデスクよりも歩いているときや入浴中、移動中や休憩中など「脳がリラックスしている瞬間」に生まれやすいとする研究が多くあります。

その理由は、私たちがリラックスできているとき、脳の「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」が活性化するからです。

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューによると、「DMNは、脳の意識下のレベルで古い記憶を掘り起こし、過去・現在・未来の間を行き来し、さまざまなアイデアを再結合させる」とのこと。*1 

つまりアイデアが湧く瞬間とは、無意識のなかで情報が整理・再構成された結果なのです。ただし、そのアイデアは、浮かんだ瞬間につかまえなければすぐに消えてしまいます。

その点、小さなノートなら、ポケットから出してペンを走らせるだけです。書きながら思考が進み、さらに別のアイデアが連鎖的に出てくることもあるのです。

オフィスで笑顔を見せるビジネスパーソン。オンライン業務や発送準備をしながらアイデアを考えている。

メリット2. 続けやすいから達成感が積み重なる

「やり始めたはいいけれど、いつも3日坊主になってしまう……」

その理由のひとつが「大きなノートの圧迫感」です。B5やA4のノートを前にすると、「ちゃんと書かなくちゃ」「きれいにまとめないと」という無意識のプレッシャーが働き、書くこと自体が義務になってしまうことがあります。そこで小さなノートを使うと、こんなメリットがあります。

スペースが小さいから、すぐに1ページが埋まる
雑に書いても "もったいない感" がない
小さなメモひとつでも「書けた!」という感覚が得られる

このような「ハードルの低さ」が、行動科学でいう「スモールステップの法則」にぴったり当てはまります。この法則では、人が新しい習慣を続けるためには、負荷が小さく達成しやすい目標から始めるのが効果的だとされています。

「1ページ = 1アクション」の感覚が得られる小さなノートは、習慣化を成功させる絶好の道具なのです。

筆者自身も、さまざまなノートを試した末に、小さなノートを持つようになってから、「思いついたらすぐ書く」「続けることに抵抗がなくなる」という実感を得ました。習慣は才能を凌駕します。小さなノートを使うことは、「思考する習慣」「書く習慣」「振り返る習慣」の入り口の役割を担うのです。

実際、書くスペースが限られているため、すぐにページが埋まりやすく、そのたびに「書けた!」という小さな達成感を味わう楽しさを知りました。

木のテーブルに置かれた革表紙のノートとペン、コーヒーカップ。光の中で静かな書く時間を楽しむシーン。

メリット3. たった数行で、要約・改善・伝達の3つが身につく

手のひらサイズの小さなノートを使い続けていると、あることに気づくでしょう。それは、「自分の書く内容が、どんどん端的になっていた」という実感です。その理由はシンプルで、スペースが限られているから。

これは「制約条件の原理」と呼ばれ、創造的なパフォーマンスを引き出す心理的メカニズムとして知られています。

また、「要約力の低さは、伝える力の低さに直結する」と語るのは、伝え方の専門家・山口拓朗氏。ビジネスにおいて、「何を伝えるか」だけでなく「いかに要点を伝えるか」は極めて重要です。小さなノートは、毎日のメモのなかで下記のスキルを自然と鍛えてくれます。

要約力 | 情報の核心をつかむ力
改善力 | 言葉をブラッシュアップする編集力
伝達力 | シンプルに伝える力

こうした、ビジネスの土台となる "言語スキル" を向上させる訓練にもなるのです。ビジネススキルを多角的に高めてくれるとしたら、これはもう使わない手はありません。

ノートとペンを手に考えごとをするビジネスパーソン。新しいアイデアを思案している様子。

メリット4. パッと見て、サッと分かる魔法の効果

小さなノートに書かれる文章は、スペースの制限上、1行あたりの文字数が自然と短くなりますが、実際にA6サイズのノートに筆者が書いた文章を数えてみると、1行あたりの文字数はおおよそ18 〜 22文字。こうした制限こそが、思考を明確にし、情報の整理力を高めてくれるのです。

このサイズ感が生む効果は想像以上に大きく、下記のような利点があります。

書いた本人があとから見返しやすい
要点が目に入りやすく、ひらめいたときの思考に戻りやすい
頭のなかを視覚的に整理しやすい

脳科学的には、「視覚的に整理された情報」はワーキングメモリ(短期記憶)の負荷を軽減し、情報の再構成を助けることも知られています。

つまり、小さなノートはただ「かわいい」だけでなく、ビジネスに必要な「理解」「記憶」「整理」において、非常に優秀なツールなのです。

じつは、この「短時間で理解しやすい」という特性は、小さなノートにこそ当てはまります。たとえば、A6サイズのノートに文字を書くと、1行に入る文字数はおよそ20文字以内に収まります。これは、多くの視覚メディアで推奨される「一度に目に入る情報量」に近しいメリットがあります。

結果的に、小さなノートに書かれた文章は、ぱっと見ただけで内容を理解しやすいという特徴を持つのです。自分が以前書いた内容を読み返す際も、長い文章を読み込む必要がなく、サッと目を通すだけで内容を思い出しやすいメリットがあります。

***

小さなノートは最強の思考ツールです。OpenAI CEOのサム・アルトマンをはじめ、多くのビジネスリーダーが愛用するのには理由があります。

今日からあなたも、仕事の頼れるパートナーとして「小さなノート」を試してみてはいかがでしょうか。その小さな1歩が、あなたのビジネスに大きな変化をもたらすかもしれません。

(参考)

*1 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|集中力をコントロールして、創造力を発揮する3つの方法

【ライタープロフィール】
橋本麻理香

大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。

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