勉強・仕事の土台=「読む力」が変わる。ビジネスパーソンのための速読活用法

本を読んでいる様子

1日という時間を見た場合、あなたにとってどのような行為が大きな割合を占めているでしょうか。多くの社会人にとって上位になるのが睡眠、そして仕事でしょう。その仕事の中身までひも解いていくと、特にホワイトカラーの人の場合には「読む」という行為が大きな割合になっていると考えられます。「速読のスキルがビジネスパーソンにとって大きな武器になる」と語るのが、クリエイト速読スクールの代表を務める劉智秀(ゆう・じす)さん。その理由は、速読により「楽に読めるようになる」からだと言います。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

【プロフィール】
劉智秀(ゆう・じす)
1999年生まれ、東京都出身。東京大学経済学部卒業。クリエイト速読スクール二代目代表。かつては速読に対して「仕事や勉強に役立つものとはとうてい思えない」という思いをもっていたが、クリエイト速読スクールに入会し、読書に必要な能力をひとつひとつ確実に鍛えていくトレーニングに取り組むなかで速読に大きな可能性を感じるようになる。まだ学生であった2023年9月に、前代表・松田真澄氏より二代目代表に任命され就任。
クリエイト速読スクール

勉強と仕事の土台となるものこそ、「読む」力

「速読」のスキルを身につけることにより、集中力、記憶力、理解力などの向上や視野の拡大など多くのメリットが得られます。ただ、特に社会人にとってのメリットとなると、やはり勉強や仕事の効率アップになるでしょう。

私が代表を務める速読スクールには、中高生の生徒もたくさん通っています。入会にあたって多くの親御さんが期待する成果は、「国語の成績アップ」です。文章を速く読んで内容を理解する能力は、まさに国語の成績アップに直結する要素と言えるかもしれません。

たしかに、速読によって最初に大きな好影響が出てくるのは国語です。でも、ここで勉強の土台とはなにかを考えてみましょう。みなさんが1日に2時間勉強をするとして、その2時間のあいだ、なにをしていますか? 多くの時間を占めているのが「読む」という行為であるはずです。

国語の対極にあるような数学の勉強であっても、テキストや問題集に書かれている内容を読んで理解し、自分で使えるようになることを目指します。極端に言えば、文章を読んで理解できなければ、どれだけ天才的な数学的能力を秘めていたとしても、その能力を発揮できないということになります。

工学・技術系や科学・化学系、IT・データ科学系など理系要素が強い資格取得を目指して勉強をする社会人にとっても、読んで理解するプロセスは必要不可欠ですし、もちろん日々の仕事においても、資料やメールなどを読んで理解することは欠かせません。

つまり、勉強、あるいは仕事の土台とは、ほかならぬ「読む」力なのです。だからこそ、速読ができるようになれば、勉強や仕事の効率を大きく引き上げられるのです。

勉強と仕事の土台となるものこそ、「読む」力について語る劉智秀さん

読むことが楽になれば、長時間の勉強や仕事も楽にこなせる

加えて、「読むことが楽になる」というのも、速読のスキルを身につけることの見逃せないメリットです。私たちが提供するトレーニングで目指すのは、単なる「速さ」ではありません。1文字1文字順に読むのではなく視野を広げて1行まとめてとらえるトレーニング、あるいは文章の内容を整理して論理的に理解するトレーニングなどを通じて、結果的には速く読めるようになります。

でも、最も重要なのは、そういったトレーニングを通じて「読むことが楽になる」ということだと考えます。一生懸命に文字を目で追って、うんうんとうなって内容を理解しようとすることには、苦しさやつらさがともないます。すると、「読みたくない」という思いを抱き、勉強や仕事にしっかりと臨めなくなるのです。

でも、読むことが楽になれば話はまったく変わります。速読のトレーニングを続けたことで、「読むことがつらくなくなって、勉強時間が増えた」「長時間の仕事にも集中できるようになった」といった声は、実際に多くの生徒さんから寄せられています。速読のスキルによって「読むことが楽になる」ことで、勉強や仕事に取り組める時間が大きく増えたわけです。それだけ成果にも近づけるでしょう。

読むスピードを追い求めるのも大切かもしれませんが、順序を勘違いしないでほしいと思います。いくら速く読めるようになっても、読むことに苦痛がともなったままでは十分な時間の勉強や仕事をこなせません。読むことの苦痛を取り除くからこそ、結果的に速く読めるようになるという順序なのです。

読むことが楽になれば、長時間の勉強や仕事も楽にこなせると語る劉智秀さん

「倍速で読む」ことを繰り返し、理解度を高めていく

ただし、「読むことが楽になる」ためのトレーニング自体は決して楽ではありません。私たちが提供しているトレーニングの多くは、「目のトレーニング」と「脳のトレーニング」の2種類に分類されます。「読む」という行為を分解すると、文章を目でとらえて脳にインプットする、そうしてインプットされた情報を脳で処理して理解したり記憶したりするというふたつのプロセスに大別されるからです(『【制限時間は1分!】目と脳の総合力を引き出す「速読トレーニング」』参照)。

それら、さまざまなトレーニングをしっかり積み上げたうえで臨むのが、「倍速読書トレーニング」というものです。このトレーニングは、いわば個々のトレーニングの集大成です。なんでもいいので本を1冊用意し、1分間、まずは「内容をきちんと理解できる」スピードで読みましょう

読み終えたら、読めたページ数を記録します。加えて、以下の「理解度メジャー」を参考に、内容の理解度を自己評価して記録してください。1回目は「内容をきちんと理解できる」スピードで読みますから、おそらく「A」や「A-」の評価が多くなるはずです。

理解度メジャー

続いて2回目以降は、「1回目の倍速で読む」という意識で読んでみましょう。1回目に2ページ読めたのなら、4ページ読むのです。しかも、この数字はノルマだと考えてください。速度を上げると理解度は下がります。でも、繰り返し倍速で読んでそのスピードに慣れていくことで、理解度C・Dにしかならなかったスピードで読んでも、理解度B程度の理解ができるようになっていくのです。

ただし、繰り返しになりますが、このトレーニングは、目や脳のトレーニングをしっかり積んだうえで臨まなければ、簡単に成果がついてくるものではありません。実際、入会したばかりでまだ目や脳のトレーニングをそれほどこなしていない生徒さんからは、倍速読書トレーニングについては、「あまり効果を実感できない」という声が多いのです。

速読のスキルは、一朝一夕で身につくようなものではありません。ただ、地道にトレーニングに取り組めば間違いなく速く読めるようになること、そうして身につけたスキルにより冒頭で述べたような多くのメリットを享受できることは、私が保証します。

ビジネスパーソンのための速読活用法についてお話しくださった劉智秀さん

【劉智秀さん ほかのインタビュー記事はこちら】
【制限時間は1分!】目と脳の総合力を引き出す「速読トレーニング」
速読トレーニングで「集中力」もUP! 勉強効率が飛躍的に上がる、「脳」を鍛えるロジカルテスト

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)

1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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