なかなか勉強に集中できずに、「ああ、今日も予定通りに課題をこなせなかった……」と自己嫌悪に陥ったことはありませんか? また「よしやるぞ!」と気合いを入れたものの、結局頭が働かなくてぼんやり過ごしてしまったことはありませんか?
勉強前、ちょっとした運動を取り入れると集中力が増します。今回は、今すぐに実践できる「勉強する前の準備運動」をご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
早足でウォーキングをすれば脳が活性化されて勉強がはかどる!
たとえば勉強前、ソファに座ってダラダラとスマートフォンをいじってから「そろそろ始めるか」と机に向かったとしても、どうも気合いが入らずにぼんやりしてしまうことがあるはずです。脳科学者の澤口俊之氏によると、勉強へのやる気を出す最も簡単な方法は“有酸素運動”なのだそう。
有酸素運動は「脳由来神経栄養因子(BDNF)」という、神経細胞(ニューロン)の成長を担うタンパク質を増加させる効果があります。その結果、記憶を司る海馬が大きくなるなど、記憶力や学習力の向上が期待できるのです。
同様に、『脳を鍛えるには運動しかない!』(NHK出版)の著者でハーバード大学医学部のジョン・J・レイティ博士も、運動がニューロンを育てる効果について、次のように述べています。
ニューロンの数を増やすために最も効果が期待できるのは、運動です。さらにものを覚えたり認知能力を高めるために必要な神経結合を増やしたり、ドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンといった思考や感情にかかわる神経伝達物質の分泌を促す効果も、運動にはあります
(引用元:PRESIDENT Online|脳細胞が増える運動「3つの条件」)
脳を育てるために効果的なのが「一定時間にわたって心拍数を上げるタイプの運動」です。たとえば早足でのウォーキングや軽いランニングなどが適しているといいます。運動を終えると脳の血流が増してくるので、このときが思考力や集中力が飛躍的に高まるチャンスです。
レイティ博士によると、勉強を始める前、できれば朝に早足でウォーキングをしてから机に向かうと脳が活性化して勉強に集中できるそう。澤口氏も、「最も効果が期待できるのが、毎日10分~20分早歩きをすること」と述べているので、あらかじめ勉強スケジュールにウォーキングを組み込んでおくといいかもしれませんね。
10分間の自転車こぎで記憶力がアップする
勉強前に運動すると、モチベーションが上がる以外にもたくさんのメリットがあります。『一流の頭脳』(サンマーク出版)の著者で精神科医のアンダーズ・ハンセン氏によれば、ある実験において「運動しながら(もしくはしてから)暗記したほうが、何もしないで暗記した人に比べて覚えられた単語が20%増えた」という結果が出たそうです。
筑波大学の征矢英昭教授らの共同研究グループも、運動が記憶力を高めることを実験によって証明しました。その実験とは、まず健康な若い成人36名に自転車をこぐような10分間の「ペダリング」運動をしてもらいます。それはストレスを感じない程度の超低強度の運動です。
そして次は運動せずに10分間、そのまま座ってもらいます。どちらも5分後に記憶テストを実施したところ、運動をした後のほうが、安静にしていたときよりも正答の割合が高いという結果が出たのです。これにより、超低強度の運動は、海馬を中心とした記憶システムを活性化して記憶力を高めることがわかりました。
研究グループは「運動強度が同等でも、運動による気分の変化が脳への効果を左右する可能性がある」とし、たとえばヨガや太極拳のような生活・文化に根ざした運動や、自然の中で気持ちよく行なうゆっくりとしたウォーキング、仲間と音楽に合わせて行なう簡単な体操やダンスなどの軽い運動にも効果が期待できるといった仮説を立てています。
たとえば10分間軽く自転車をこいだり、ヨガやストレッチなどの負荷が少ない運動をしたりすることがおすすめだそう。「勉強前に運動しなきゃ」とプレッシャーに感じるよりも、むしろリラックスする目的で軽く身体を動かすように意識するといいでしょう。
逆立ちをすれば脳に新鮮な酸素が送られて頭がスッキリする
頭がぼんやりするのは、寝不足や疲れだけが原因ではありません。たとえば参考書をただ読み続けるなど、脳の同じ部分を一定時間使っていると次第に脳の働きが停滞してくるそう。それがいわゆる “脳がボーッとしている” 状態なのです。
脳の血流が滞ることで頭が働かないのなら、頭をシャッキリさせるために一番良い方法は何でしょう。日本体育学会理事で東京大学大学院総合文化研究科教授である深代千之氏によると、「脳に血液を送る方法として最も手っ取り早いのは『逆立ち』です」とのこと。しかも、たった10秒でも効果を実感できるというから驚きです。
逆立ちをすると脳が心臓の位置より下にくるので、より多くの血液を脳に送ることができます。それにより脳の血行が良くなって新鮮な酸素や栄養が補給されると同時に、二酸化炭素や老廃物を取り去ってくれるそう。
さらに脳の二酸化炭素が取り去られることで、呼吸が整えられて精神的な安定がもたらされるばかりでなく、眠気が吹き飛び疲労回復にも効果があるといいます。このようにいいことづくめの『逆立ち』ですが、そう簡単にできない人も多いのではないでしょうか?
逆立ちが苦手、する場所がない、というのであれば、ソファや椅子を利用して逆立ちと同じ効果を発揮する方法があります。
まず、椅子に腹ばいになり、椅子から落ちないように気をつけながらゆっくりと頭を床に向けて下げていきましょう。頭を下げた状態で約10秒から20秒程度キープします。呼吸を止めると苦しくなるので、ゆっくりと息を吐いたり吸ったりすることを意識してください。たったこれだけでも、頭がスッキリとするのを実感するはずです。 勉強前はもちろん、勉強をしていて集中力が途切れたり、眠気が襲ってきたりしたときもすぐに試せるこの方法。覚えておくときっと役に立ちますよ。
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身体を動かす暇があったら、その時間を勉強に充てた方がいいと思っていませんか? でも集中できていないのに無理をして机にかじりついていても、おそらく良い結果には結びつかないでしょう。それならたった5分でも10分でも身体を動かしたほうが、脳が活性化されて効率よく勉強を進めることができるはずです。
(参考)
THE 21 ONLINE|脳科学から見えてきた!やる気を高める4つの方法
PRESIDENT Online|脳細胞が増える運動「3つの条件」
アンダース・ハンセン(2018),『一流の頭脳』,サンマーク出版.
Kodansha Bluebacks|記憶力は「たった10分の軽い運動」でアップすることが判明
ベネッセ 教育情報サイト|受験勉強の効果を上げる運動とは?
ベネッセ 教育情報サイト|血液循環と刺激が決め手! 脳の活性化で勉強の効率をアップさせる!!
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