やたら褒めても逆効果。信頼関係のカギは "評価する" より "見てるだけ"

部下に、上司としての立場から、期末のコメントを送るとき。 日々の仕事ぶりを、同僚どうしで互いに振り返るとき。 次のプロジェクトに向けて、チームメンバーを鼓舞したいとき。

このようなとき、どんな言葉で相手に意見を言えばよいか、悩んだことのある人は多いはずだ。

明らかに優れた働きぶりをしていれば、素直な言葉で褒めることは簡単。逆もまたしかりで、明確な改善点があれば指摘しやすいだろう(当然、相手のモチベーションを下げない程度に)。

仕事だけでなく、学生のサークル活動のようにチームで動く場面でも、家族に対して言葉をかける場面でも同じ。日ごろの振る舞いを評価するとなると、そう簡単にはいかないのではないだろうか。適度に褒めつつ、次につながる建設的なフィードバックをしなければならない。相手を鼓舞する上手な言葉を言うのは、なかなか難しいものだと思う。

「人は、褒めて伸びる」と言われる。確かに、自分が褒められれば嬉しいし、もっと頑張ろうという気持ちになる。それならば、自分も「褒め上手」になりたいもの。

今回は、相手を伸ばす「褒め上手」になるための、ちょっとしたコツをお伝えしよう。

褒めなくたっていい。「見てるだけ」でも十分効果を発揮する理由。

「褒めろ」というけど、何を褒めたらいいの? という人に伝えたいのが、「しっかりと見ているだけでもいい」ということ。

大げさに褒めると、わざとらしすぎて逆効果になる場合もある。それより、何気ない仕草が見られていて、さりげなく評価してもらったほうが、誰でも嬉しく感じるはず。みなさんは、相手のことをしっかりと「見ている」だろうか。

フォワードの子に対してコーチは「キーパーにボールが渡ったら走れ」と指導する。(中略)大切なのは、次に同じ状況が巡ってきたときで、キーパーがボールを取り、フォワードの子が走り出したら、コーチはその動きをちゃんとみていなくてはならない。コーチに教えられた通りに走り出したフォワードは、その瞬間、必ずコーチの方を見ます。「コーチ、これでいいの?」って。そのとき、コーチは、そのフォワードの子と目を合わせて、両腕で丸を作って「OK」と合図を送るんです。「その一回だけでいい。その子はずっとそれをおぼえていて、コーチが注意しなくても、同じ状況になったら走る選手になる」

(引用元:本間浩輔著,中原淳著(2016),『会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング』,光文社新書.)

悪い時、いい時に見ているのは当たり前。しかし、それだけでは、十分とはいえない。通常時もしっかりと観察しよう。そして、メンバーの動きをしっかり見ているサッカーコーチのように、欠かさず「GOサイン」を出してあげるのだ。GOサインを出してあげれば、相手は安心して、自信をもって物事に取り組めるだろう。

「褒める」とは、大げさに相手の背中を叩くことでも、何か報酬を与えることでもない。しっかり見てやることで、相手の望ましい行動を後押しし、評価してあげること。相手のことを見るという、シンプルな心がけで十分なのだ。

相手をほめたいのなら、成果ばかりを見るのではなく、普段から相手のことを見る。そして「あの時あなたがお客様に掛けていた言葉、素敵だったね」「電話応対がいつも丁寧で、感心しています」と声をかける。こんなささいなことでも構わない。見てもらえているというだけで、十分、相手にとっては自信になるはずだ。

最後まで「聴き切ろう」。信頼感を生むフィードバックのために

フィードバックとは、相手の行動に対してコメントを入れ、改善させることを言う。

もし、あなたが相手の意見や考えを聞かないままにフィードバックを入れたら、どんなことが起こるだろうか。おそらく、信頼関係が崩れ、相手に自分の言葉が届かないはずだ。

フィードバックをする前に、必ず相手の言い分を聞いてあげよう。そしてこのときポイントになるのが、最後まで「聴ききる」こと。途中で遮ると、相手の満足度が下がってしまうからだ。

上司は「聴き切る」ことで、部下の考えや取り組みを正しく把握できるので、適切なアドバイスやサジェスチョンを送ることができます。「聴き切った」と思えた後に少しだけアドバイスする、という姿勢が望ましいでしょう。(中略) × 聴き切らないうちにアドバイスする(アドバイスがトレーニーの心の中に入らない) × トレーニーの話がズレているなと思ったら、話の途中でも、その場ですぐに指摘する × 話の途中で「なぜなぜ」と責める質問ばかり投げ掛け、相手を袋小路に追い詰めてしまう

(引用元:DIAMOND online|Listen,Listen,Listen!「聴き切ること」が最良の部下サポートになる 迷えるマネジャーのためのOJT完全マニュアル

話が長かったり、論点がずれたりしても、辛抱強く我慢しよう。

相手は、「聞いてもらえた」という満足感があるだけで、素直にフィードバックを受け入れるようになるだろう。

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相手は自分の鏡、自分は相手の鏡と心得よ。

ヤフー株式会社で上級執行役員を務める本間浩輔氏は、フィードバックのコツは「相手の鏡になりきること」だと言う。

これは、相手の行動に指図するのではなく、自分から相手がどんな風に見えているか、ありのままを伝えることなんだとか。

上司が部下の鏡になって「こう見えているよ」と教えてあげればいいんです。「見える」という言い方が大事で、そこに「なんでできないんだ」とか「あんな」ことやってどうするんだ」という評価を加える必要はない。

(引用元:同上)

発展して考えると、この方法は上司→部下だけでなく、部下→上司、同僚どうしにも応用できる考え方だとわかる。正直、「なんでも思ったことを言ってくれ」という人ほど正直な物言いに敏感なもの。だから、彼らに直してほしい点がある場合、感情的になったり、強く言ったりするのは逆効果。

部長、あなたの指示の仕方は、我々部下から見るとこんな風に見えています。 先輩、先日の営業の仕方ですが、私にはこう映りました。

機嫌を損ねたくないからと言って、過大評価する必要も、変にオブラートに包む必要もない。褒めようと変に意識せず、ありのままの姿を率直に伝えることが大切なのだ。

(参考) 石田淳著(2007),『短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント』,ダイヤモンド社. 本間浩輔著,中原淳著(2016),『会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング』,光文社新書. DIAMOND online| Listen,Listen,Listen!「聴き切ること」が最良の部下サポートになる 迷えるマネジャーのためのOJT完全マニュアル

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