「なんとなく」の正体を言語化する|あなたの『暗黙知』を引き出すAI壁打ち4ステップ

ビジネスパーソンがAI搭載のロボットとの壁打ちを行なっている様子

仕事でも人間関係でも、こんなモヤモヤした感覚を抱えること、ありませんか?

「なんとなく違和感がある」

「うまくいかない気がする」

「この方向性で大丈夫かな……」

その感覚はもしかしたら、あなたの貴重な「暗黙知」によるものかもしれません。

私たちには説明しやすい知識と、言葉にするのが難しい知識があり、後者が「暗黙知」と呼ばれています。*1

この暗黙知を提唱した科学哲学者のマイケル・ポランニー氏は、著書『The Tacit Dimension(暗黙知の次元)』のなかで、暗黙知についてこう表現――*2

 
 
 
 "we can know more than we can tell" (私たちは言葉にできるより多くのことを知ることができる)

また、2002年のノーベル経済学賞を受賞した心理学者のダニエル・カーネマン氏によれば、私たちの意思決定の大半は直感(システム1と呼ぶ)に委ねられています*3

だからこそ――

その言葉にできないモヤモヤした感覚を、明らかにしていくことが大いに役立ちます。

でも、その作業はひとりだと難しい。

そこで今回は、そのプロセスに「AIとのやり取り」を取り入れました。AIとの対話を通じて、そのモヤモヤ感覚を言語化し、より確かな判断材料に変えていきましょう。

なぜ感覚の言語化が重要なのか

私たちの直感は、長年の経験や無意識に蓄積された情報が、感覚として現れるもの。その根拠が明確でないため「なんとなく」で終わってしまい、なかなか具体的な行動に移せません。

しかし、このモヤモヤを放置すると、あとになって「あのときの違和感は正しかった」と後悔することも……。

なぜならば、この直感は「おおむね正しい」とされているからです。*3

感覚を言語化することで、曖昧だった「なんとなく」が「検証可能な仮説」に変わり、適切な対策を講じることができるようになります。

つまり、感覚の言語化は、私たちの判断精度を高める重要なスキルなのです。

違和感を放置して問題が起こり不穏な空気が流れているオフィス

AIとの壁打ち:プロセス

そこで提案したいのが、生成AIとの壁打ちで感覚を言語化していく作業です。生成AIとの壁打ちは、言ってみれば「AIブレストによる思考整理術」といったところ。

言語化に加えてモヤモヤの整理も進むはずです。

以下に、そのプロセスを4つのステップでまとめました。

【ステップ1】:まずは気軽に伝える

まずは気軽に、自分のなかにある感覚をそのまま吐き出してみましょう。完璧な表現である必要はありません。思うままに、モヤモヤした気持ちを言葉にしてみてください。

例)「なんとなくいまのプロジェクト、うまくいかない気がするんだよね」

【ステップ2】:AIに分析を依頼

次に、その感覚についてAIに分析してもらいましょう。AIは客観的な視点で、あなたの感覚を整理してくれます。

例)「この『うまくいかない気がする』という感覚について、どんな要因が考えられるか整理してもらえる?」

【ステップ3】:対話で具体化

AIの質問に答えながら、感覚の正体を探っていきましょう。対話を重ねることで、漠然とした感覚が具体的な要素に分解されていきます。

<以下想定されるAIからの質問>

  • 「いつからその感覚を持った?」
  • 「過去の似た経験と比較するとどう?」
  • 「具体的にどの部分が気になる?」

【ステップ4】:行動可能なかたちに整理

モヤモヤした感覚が「具体的な課題や仮説」に変わったら、検証方法を考えていきましょう。

感覚が言語化されれば、それに基づいた具体的なアクションプランを立てることができます。

ちなみに、この時点でもう感覚のモヤモヤは消えているはずです。

AIとの壁打ち:実践例

棚の上にいてビジネスパーソンを助けるAI搭載ロボ

ではここで、前章で紹介した4つのステップの実践例を、Before~Afterに当てはめてみて見ていきましょう。

Before:モヤモヤした感覚

私:「今度の新しい工場との初回打ち合わせ、なんだか気になることがあるんだよね。見せてもらったサンプルの仕上がりも、条件も悪くないんだけど……」(ステップ1)

「この『なんだか気になる』感覚について、どんな要因が考えられるか整理してもらえる?」(ステップ2)

During:AIとの対話プロセス

  • AI:「その『気になること』について、もう少し詳しく教えてください」
  • 私:「先方の担当者の対応が、ちょっと曖昧だった気がする」
  • AI:「どんな点が曖昧でしたか? 具体的な場面を思い出してみてください」
  • 私:「展示会サンプルの納期について質問したとき、断言を避けていた感じが…」
  • AI:「ほかにも似たような場面はありましたか?」
  • 私:「それとまた違うけど、副資材の話をしているとき、担当者同士が小さい声で話をしていたのが気になったかな」

(以上ステップ3)

After:検証可能な仮説

こうしてAIとの対話を重ね、モヤモヤ感覚が「具体的な課題や仮説」に変化しました。

私:新工場には納期管理や品質管理に関して何らかの課題がある可能性。担当者が納期について明言を避けたこと、副資材に関する内輪の相談があったことから、生産体制に不安要素があると推測される。

この段階でAIに、「このあと工場に対し、どんな質問をすべき? どんな資料を求めるべき?」と聞いてみてもいいでしょう。

こんな答えが返ってくるかもしれません。

AI:

工場に対し、以下のような質問をしてみてください。

  1. 展示会サンプルと同品質で量産する場合の具体的な納期
  2. 副資材の調達先と在庫状況について
  3. 過去1年間の納期遅延実績とその原因

あるいは、工場に対し、以下資料を提出してもらってください。

  1. 直近3ヶ月の生産実績表(品目別・納期達成率付き)
  2. 主要副資材の調達計画書
  3. 品質管理体制の詳細資料(検査工程・基準値等)

これで、アクションプランも整いました……!

***
感覚を侮ってはいけません。それは長年の経験や無意識の情報処理の結果かもしれないからです。

AIという客観的な対話相手を得たいま、私たちは自分の「なんとなく」を「なぜなら」に変えることができます。

あなたの感覚を、AIとの対話で言葉に変えてみませんか?

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

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