皆さんは、「人を動かす」ことができている自信はありますか?
学生であればバイトリーダーや、ゼミ長。ビジネスパーソンであればプロジェクトリーダーなど、集団の舵をとったことのある方ならば、人を動かすことに少なからず苦難した経験があるのではないでしょうか。
もしかしたら、あなたのチームメンバーが動かないのは、あなたの言動に原因があるのかもしれません。今回は、人を動かす自信のない方のために、人を動かす振る舞い方のポイントをご紹介します。
あなたが他人を動かせない原因
メンバーに一生懸命指示を出しているつもりなのに、それがなかなか伝わらないのはなぜなのでしょうか。
・ネガティブな言葉を使っているから
脳医学者の林成之氏曰く、他人を動かしたいときには向いていないのが「ネガティブな言葉」。仕事や社員に対する愚痴等は言わずもがな、「できない」「無理」「疲れた」といった言葉を使うのもNGです。ネガティブな言葉はチーム全体の士気を削ぎ、メンバーの行動につながらないばかりか、パフォーマンスも落としてしまいます。
・自信のない話し方をしているから
ビジネスコミュニケーションについて研修やコンサルティングを行っている株式会社グローバリンク代表・大串亜由美氏は、自信のない話し方では他人を動かすことはできないと言います。
猫背になっていたり、相手の目を見ていなかったり、身体が斜めを向いていたり……。無意識のうちにそんな姿勢で話し方をしてはいませんか? いくら一生懸命指示を出しているつもりでも、自信のない様子で話していては、話の内容に信頼性をもたせることはできません。他人を動かすことなど、できるはずはないでしょう。
カーネギーの「人を動かす三原則」
では、他人を動かすときに必要な要素は何でしょうか。アメリカの作家デール・カーネギーは、大ベストセラー著書『人を動かす』の中で、人を動かす三原則を次のように紹介しています。
・相手を批判しない
カーネギーは、人を批評したり非難したりすることはどんな馬鹿者にもできるものだとして、すべきではないと言っています。人は、自分を否定する相手には警戒心を抱き、心を閉ざしてしまうもの。自分を批判する人の指示を聞きたいとは誰も思いませんよね。
メンバーをスムーズに動かしたいなら、リーダーはメンバーとの関係を円滑にし、チーム内の結束を強める必要があります。そのためには、批判や否定などのネガティブなコミュニケーションは避けるべきでしょう。
・誠実な評価を与える
他人を動かすには、その人を認めることで大きな充足感を与え、やりがいとモチベーションを持たせることが必要だ、とカーネギーは説きます。そして、人を評価する際は心から出た誠実な評価をしなければならない、とも。
人には必ず長所と短所があります。目につきがちな短所ばかりでなく、普段から人の良い面を探すことを習慣付け、相手の長所を積極的に評価しましょう。
・自分の意思で行動を起こさせる
カーネギーは、人を動かすためには、自らの意思で行動を起こさせるように働きかけることが必要だと言います。相手の立場に身を置き、どういった言葉をかければ「行動したい」と思わせられるのかをよく考えることが大切なのだそう。
皆さんも自分に置き換えてみてください。ただ「やれと言われたから」というだけで起こした行動は、生産性が欠けていたり、効率が悪かったりしませんか? せっかく人を動かすなら、気持ちよく、そして効率よく行動してもらいたいものです。
今日から始められる、他人を動かせる人間になるための習慣
ここまで、他人を動かせない原因と他人を動かすために必要な要素についてご紹介しました。最後の項目となるこちらでは、今日からでも気軽に始められる、他人を動かせる人間になるための習慣をご紹介します。
・信頼されるような話し方をする
人を動かしたいなら、人から信頼されることは重要な要素です。そのために、話す際の姿勢や目線に気を配りましょう。
大串氏は、他人に重要な事柄や指示を伝えたい時には、両足に均等に体重をかけてまっすぐに立ち、全体の七割程度の時間目線を合わせるようにして話すことが効果的だと言います。相手の目を見ることを意識しすぎると、自分が緊張してしまいますし、相手のことも緊張させてしまいます。適度に目線を逸らすには、相手の目ではなく顔全体を見るように心がけたり、相手と一緒に見られるような資料を持参したりするのがオススメです。
・相手を知る
カーネギーは、人を動かすには「自分の意思で行動を起こさせる」こと、相手に「行動したいと思わせる」ことが大事だと言っていましたね。
そのためには、まずは相手がどういう人なのか興味を持ち、理解するよう努めましょう。相手の能力や人柄はもちろん、相手にとってのモチベーションを探ってみるのです。
部下の仕事のモチベーションは何でしょうか。「評価されたい」「人の役に立ちたい」「自分に満足したい」……。このように、仕事に意欲を持つ動機は人によって様々です。日ごろのコミュニケーション等から部下の仕事に対する姿勢に関心を持ち、察知しておくことで、上手に人を動かせるようになるでしょう。
・相手の名前を呼ぶ
コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀氏は、人を動かすときには相手に「自分を重要に扱ってくれている」という感覚を与えることが必要だと言います。そのためにおさえておくべき最も基本的なのが、相手の名前を呼ぶこと。
意外に思われるかもしれませんが、多くの人は滅多に相手の名前を発していません。例えば「お客様」「部長」「きみ」「おい」等、人を呼ぶ際に名前を呼ぶ習慣がない方は多いのではないでしょうか。
人は、役職名等で呼ばれるよりも名前で呼ばれた方が、自分を呼んでくれた人に対し親近感や安心感を覚えやすくなります。人を呼ぶとき以外にも「〇〇さん、ありがとうございます」「〇〇さん、宜しくお願いします」等名前を差し込むだけで、大きく印象が変わりますよね。人を動かしたい場面だけでなく、普段の会話の中でも、意識して名前を読んでみましょう。相手との関係がより深くなる効果があります。
・「すみません」より「ありがとう」
はじめに触れたように、ネガティブな言葉は他人の士気を削ぎます。林氏によれば、気持ちが後ろ向きになるような言葉を使わないようにすると、チーム全体の空気が前向きになり、チームワークも上がるのだそう。カーネギーも、批判や否定は良くないと言っていましたよね。リーダーの立場にある人が否定的な言葉を言わないだけでなく、チーム全体にもマイナスな言葉は避けるように呼び掛けるとより効果的です。
また、仕事で多くの人がよく言ってしまうのが「すみません」という言葉。もちろん、自分がミスをした際の謝罪としての「すみません」は必要不可欠ですが、それ以外の場面で「すみません」というネガティブなワードを日常的に多用することは避けましょう。
相手に何かしてもらった際には、「すみません」「どうも」よりも、目を見てしっかりと「ありがとう」「〇〇さんのおかげで助かります」といった言葉で気持ちを伝えます。このような前向きになれるワードを使用するように心がけることで、相手に重要感を与えることもできるでしょう。きっと相手は気持ちよくあなたの指示を聞いて動いてくれるはずです。
*** いきなり人を動かすのは誰にとっても難しいもの。まずは言葉選びや、相手の名前を呼ぶと言った簡単にできるところから始めてみてはいかがでしょうか。
(参考)
ビジネス+IT|カーネギーの「人を動かす」三原則は、なぜビジネスパーソン必修なのか
東洋経済オンライン|人を動かす「伝え方」には、3つの鉄則があった
サイボウズ式|悩める若手リーダーへ、「人を動かす」のは態度だ。最大の自己啓発本を生んだD.カーネギーの真意
株式会社日立ソリューションズ|脳医学者 林成之の「逆境を打破する勝負脳講座」第2回 リーダー力アップのための3つのポイント
リクナビNEXTジャーナル|「人を動かす」のが苦手な人こそ試すべき“特効薬”とは?
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