仕事を楽しむのは、簡単そうで難しいもの。仕事にやりがいを感じられない、職場の人間関係がうまくいかない、頑張っているのに認めてもらえないなど、仕事を楽しめずに困っている人は多いのではないでしょうか?
仕事を楽しむことができないと、人生の貴重な時間を浪費しているような気分になってしまうかも。反対に、仕事を楽しむものにできたとしたら、人生も変わりそうですよね。
今回は、人生をもっと楽しく充実したものに導いてくれる「仕事の楽しみ方」をご紹介したいと思います。皆さんが仕事を楽しむヒントが見つかれば幸いです。
仕事を楽しむ人とは
仕事を楽しむ人とは、どのような人なのでしょうか? 世の中には、仕事がつまらないと嘆く人がいる一方、いきいきと楽しく仕事に打ち込んでいる人もいますよね。
例えば、日本航空テクノ株式会社の「環境マイスター」である新津春子氏。新津氏は空港のカリスマ清掃員として知られています。その仕事ぶりは『プロフェショナル 仕事の流儀』などの番組で何度も取り上げられるほど。優れた空港を表彰する「ワールド・エアポート・アワーズ」において羽田空港が「世界一清潔な空港」に選ばれたことにも新津氏の功績が大きいと、もっぱらの評判です。
新津氏は「70歳になっても続けたい」と思うほど清掃の仕事が大好きだそう。けれども、最初は他にできることがなかったため、しかたなく始めた仕事だったそうです。新津氏は著書『人生を動かす仕事の楽しみ方』の中で「仕事は今よりずっと楽しくできる」と述べています。新津氏が語る「仕事を楽しむ人」の特徴をまとめると、次のとおり。
- 仕事が楽しくなる方法や楽になる工夫を考える。
- 人間関係を良好に保つため、コミュニケーションを大切にする。
- 仕事を任されたら、期待に応えられるよう努力する。
- 新しいことにチャレンジする。
- プライベートの時間は必ず確保する。
- 「生きている以上は楽しく過ごしたい」を人生のモットーにしている。
仕事をする、評価される、感謝される。もっとやろうと思う。さらに仕事をする、評価される、感謝される。さらにもっとやろうと思う。この繰り返しで仕事はどんどん楽しくなり、どんどん好きになっていきました
(引用元:新津春子(2017),『人生を動かす仕事の楽しみ方―才能よりも大切な「気づく力」』,大和書房.)
このように、「仕事を楽しむ人」は仕事に対して積極的であるだけでなく、プライベートの時間や人生そのものを楽しんでいるのです。
仕事を楽しむための名言
「仕事を楽しむ」モチベーションの源泉となっているものとは何でしょうか? 大企業や有名人の「名言」から探ってみましょう。
グリコの企業理念
大手菓子メーカー・江崎グリコの企業理念は「Glicoスピリット」と呼ばれています。以下のようなものです。
創る・楽しむ・わくわくさせる
(引用元:Study Hacker|楽しいモノは “楽しんでいる人” からしか生まれない——「グリコ」に学ぶ大切なマインドセット
お菓子は、多くの人にとって「楽しみ」を感じさせてくれるもの。作り手の遊び心を感じるお菓子を見ると、こちらも楽しい気分になってついつい手が伸びてしまいますよね。消費者を楽しませるためにはまず、作り手自身が仕事を楽しみながらものづくりに取り組むことが大切なのだと、この言葉は教えてくれます。
サントリー創業者の口癖
やってみなはれ
(引用元:Study Hacker|失敗や反対を恐れない「やってみなはれ」精神。「サントリー」が新しいことに挑戦し続ける理由)
酒類・清涼飲料水の製造販売を行う大手企業グループ・サントリーの創業者である鳥井信治郎氏の「チャレンジ精神」を表す口癖です。失敗や反対を恐れず新しいことに挑み続ける。すると、大きなことを成し遂げ、更なる成長を続けることができる。成功体験は、また新たな挑戦へのモチベーションを高めてくれる。
このようなスパイラルに乗ることができれば、仕事が楽しくなること間違いなしです。まずは「やってみる!」から始めてみませんか?
齋藤孝氏の考え
明治大学文学部教授にして、著書の累計出版部数が1,000万部を超える大人気著作家・齋藤孝氏。齋藤氏によると、いい仕事をしている人というのは「やりたいことをやっている」人ではなく、「需要に応えることができている」人なのだそうです。
プロはみな、 「自己実現」ではなく 「他者実現」で仕事をしています
(引用元:Study Hacker|好きなことを仕事にしている、一流の仕事人のシンプルな考え方【齋藤孝『カリスマの言葉』第5回】)
相手の期待に応える仕事をすれば、「いい仕事」をする人だと認められ、感謝される。すると承認欲求が満たされ、仕事が楽しくなってくる。つまり、仕事において同僚や上司、クライアントの期待に応えつづければ、仕事を楽しめるようになるのです。難題を押しつけられたと感じても、「私に期待し、実績を残す機会を与えてくれたのだ」と発想を転換して、仕事に取り組んでみてはいかがでしょう?
仕事を楽しむ方法
仕事を楽しむためには、具体的にどのような方法があるのかまとめてみました。
楽しくなる「仕事づくり」をする
仕事がマンネリ化してやる気が出ないという場合には、自分のモチベーションが上がったり、作業が楽しめるようになったりする工夫を考えてみてはいかがでしょう。心理学博士の榎本博明氏は、「やりがいのある仕事」をどこかに探すのではなく、まずは今の仕事の中にやりがいをつくることが大事であると述べています。
仕事にやりがいを求めるならば、自分に合った「仕事探し」ではなく、目の前の仕事を楽しくする「仕事づくり」をすることが近道だと心得ましょう。
(引用元:Study Hacker|やりがいはもう、そこにあるのかも。あなたの仕事の「やりがいの見つけ方」)
まずは、仕事をする上でスムーズな作業を妨げている「問題点」を、思いつくかぎり書き出してみてください。次にその「問題点」に対して、こうだったら良いのにという「希望」を考えましょう。今度はその「希望」に近づけるよう、どんな工夫ができるのかを書き出してゆきます。後はそれに従って行動してみてください。
職場でのあいさつにひと言加える
総合転職支援サービスを展開する「エン転職」が約1万人のユーザーに行ったアンケートにおいて、8割以上が「困難を感じている」と回答した「人間関係」。「これさえ解決できれば仕事を楽しむことができるのに……」とお悩みの人は多いのではないでしょうか? 職場の人間関係を改善するには、いくつかコツがあります。
例えば、出勤時のあいさつ。「おはようございます」と言うだけでなく、お天気のことや最近の調子など、ひと言加えてみてはいかがでしょう? そうすることで、単なるあいさつが血の通った「会話」となります。毎日続けていれば、コミュニケーションを取りやすい雰囲気が自然とでき上がるはずです。
コミュニケーションの取りやすい職場であれば、トラブルが起きても相談しやすくなったり、協力して仕事がやりやすくなったりするのではないでしょうか。新津氏も、あいさつをする際に「おはよう、何か困ったことはない?」など必ず何かひと言加えるようにしているそうですよ。
苦手な相手の「良い面」を探す
同僚や部下、上司に苦手な人がいると、仕事を楽しむのが難しくなりますよね。苦手意識のある相手の「悪い面」にばかり注目すると、「やっぱり嫌なやつだ」という認識が深まる一方です。
そこで、「良い面」に意識を向け、「苦手な人」を「普通の人」だと思うようにしてみては? 今まで気づかなかった長所を見つけてその人への印象が変わったり、短所を気にしないようにすることでストレスを軽減できたりするかもしれません。
女性のためのキャリア学校「はぴきゃりアカデミー」代表の金沢悦子氏も「良いとこ探し」のメリットを挙げています。苦手意識のある相手の「良い面・良い情報」へ半強制的にでも目を向けると、自分の長所も意識するようになるため、自信が湧いたりやる気が出たりするそうですよ。
趣味の時間を楽しむ
職場の人間関係に行き詰っているのであれば、趣味に注力してみてはいかがでしょう。仕事以外で新しいことにチャレンジし、職場以外の人とのコミュニケーションが生まれれば、新鮮な刺激となり、狭い世界のしがらみから解放されて心がリフレッシュできますよ。
また、仕事に使えそうなアイディアがひらめくなど、仕事が楽しくなるきっかけに出会えるかもしれません。新津氏も、スポーツジムや旅行など趣味の時間を必ず確保するようにしているそうです。皆さんも、仕事を楽しみたいのであれば、趣味の時間も充実させましょう。
人の期待に応える仕事に打ち込む
仕事を楽しみたいのであれば、「やりたいこと」や「やりがい」などの自分目線から、「求められていること」「期待されていること」などの相手目線に意識をシフトしてみてください。そして、与えられた仕事は「自分の幅を広げてくれるチャンス」であると捉え、どんな成果を挙げられるようにひたすら取り組んでみてください。
相手の期待に応えようと仕事に没頭する姿が周囲に好もしい印象を与えるだけでなく、成果が挙がれば職場での評価が高まります。周囲の人たちから高く評価してもらえれば、嬉しいですよね。つまり、職場で人の役に立つことにより、仕事が楽しくなるのです。
新津氏も、人から期待された仕事に没頭しているうちに、仕事が楽しくなっていたそうです。この没頭状態と人の性質について、世界的数学者の岡潔氏は次のような指摘をしています。
人は極端になにかをやれば必ず好きになるという性質をもっています。 好きにならぬのがむしろ不思議です。
(引用元:Study Hacker|「極端に何かをやれば必ず好きになる」天才数学者に学ぶ、「ハマる」ことの可能性)
ニーズのある仕事に没頭することで、仕事が楽しくなり評価も得られるこの一石二鳥の方法を、ぜひお試しください。
仕事を楽しむための本
最後に、「仕事を楽しむ」ためにおすすめの本を2冊、ご紹介したいと思います。
『仕事は楽しいかね?』
ノーベル生理学・医学賞の受賞者にして京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥氏。今では「仕事を楽しむこと」をモットーとして研究に励む山中氏ですが、30代の頃はさまざまな壁にぶつかり、うつ状態になるほど悩んでいたそうです。そんな時期にこの本と出会って心を救われ、仕事に対して前向きに取り組めるようになったそう。ビジネス書のロングセラーです。
吹雪の夜、空港に閉じ込められた30代の男性ビジネスパーソンが突然、70歳くらいの老人に「仕事は楽しいかね?」と尋ねられます。それをきっかけに男性は仕事や人生への愚痴をこぼしはじめ、老人は彼の話に寄り添います。
その老人の名はマックス・エルモア。実は一流企業のリーダーたちがアドバイスを求めるほどの発明家・企業家であり、大富豪だったのです。問答をかわすうちに、男性は自分の仕事や人生への向き合い方に問題点を見つけ、「変わる」ためになすべきことを見出していきます。そして老人に指摘されたことを実践して「仕事を楽しむ人生」を手に入れるのです。
作者はアメリカを代表する人気コラムニスト。物語仕立てで読みやすく、こちらに語りかけてくるような言葉が胸に残ります。仕事を楽しむものに変え、人生も輝くようなアドバイスをもらえる、おすすめの1冊です。
『図解 自分をアップデートする仕事のコツ大全』
今の職に就いて何年も経つのに、どう処理したらよいかわからない仕事に突き当たってしまい、今さら人にも聞けず密かに頭を抱えている――そんなことはありませんか? 「はぴきゃりアカデミー」代表の金沢氏が、1万人以上のビジネスパーソンから取材した経験をもとに「今さら聞けない困った仕事の解決方法」をまとめた本です。
この本では、「仕事相手との話し方」「ストレス解消法」「ビジネスレター・メールの書き方」「スケジュール管理法」「仕事のスキルや効率を上げる方法」「デスクの整頓術」などの分野に分けられて、仕事上のあらゆる「困った事例」が挙げられています。すぐ実践できる解決法が詳しく載っているので、とりあえず書いてある通りに試してみましょう。
「こういうこと、よくある」と、ついうなずきたくなるような身近なシチュエーションが出てくる上、他の人がどんな仕事の悩みを抱えているのかもわかるなど、読み物としても面白い本です。目の前の悩みを解決したり仕事をより楽しくしたりするアイディアが満載。楽しい仕事づくりにぜひ役立ててみてください。
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仕事を楽しむ人は人生を楽しむことにも積極的です。自ら進んで考え、学習し、期待に応えるよう努め、新しいことにチャレンジし、自分の時間も大切にするのが「仕事を楽しむ」ために大切なこと。仕事を「楽しむ」ものに変えるため、できることから始めてみませんか?
(参考)
新津春子(2017),『人生を動かす仕事の楽しみ方―才能よりも大切な「気づく力」』,大和書房.
金沢悦子(2019),『図解 自分をアップデートする仕事のコツ大全』,講談社.
企業社訓研究会(2016),『カリスマの言葉シリーズ―今日から実践!できる企業に学ぶ仕事のオキテ』,株式会社セブン&アイ出版.
デイル・ ドーテン著、 野津智子訳(2001),『仕事は楽しいかね?』,きこ書房.
Study Hacker|楽しいモノは “楽しんでいる人” からしか生まれない——「グリコ」に学ぶ大切なマインドセット
Study Hacker|失敗や反対を恐れない「やってみなはれ」精神。「サントリー」が新しいことに挑戦し続ける理由
Study Hacker|好きなことを仕事にしている、一流の仕事人のシンプルな考え方【齋藤孝『カリスマの言葉』第5回】
エン・ジャパン|1万人に聞く「職場の人間関係」意識調査 ―『エン転職』ユーザーアンケート―転職経験者の半数以上が 「人間関係が転職のきっかけになったことがある」と回答。
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【ライタープロフィール】
上川万葉
法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している。