「反対されるのを恐れて会議で意見を言えず、あとでモヤモヤする」
「意見が対立すると、いつも黙って受け入れてしまう」
このように、言いたいことをうまく言えないために、ストレスや不満をため込みがちなビジネスパーソンはきっと多いはず。そこで今回は、自分の意見を伝えるのが苦手な人に試してほしいことを3つご紹介しましょう。
自分の意見をきちんと伝えられるメリット
空気を読んでまわりに合わせてきたけれど、最近つらくなってきた……。でも、意見を言って波風を立てたくないし、つい我慢してしまう。そんな状況に悩まされていませんか?
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ主任研究員の桑原正義氏は、意見を正直に伝えるメリットを2点挙げています。
1. 自分らしさを発揮できて気持ちが楽になり、仕事も充実する
ひとつは、自分らしさを発揮できて気持ちが楽になり、仕事も充実すること。仕事の時間が1日を占める割合を考えると、自分らしく意味ある時間にするほうが幸福度は高くなると桑原氏は言います。
たとえば、新商品のキャンペーンについて、内心いまの計画に不安を感じているとき。本心を伝えずにいると、ストレスがたまり続けるだけでなく、計画が失敗した場合に後悔してしまうかもしれません。でも、次のようにあなたが意見を伝えたとしたらどうでしょう。
「市場の競争が激しいので、もっと顧客のターゲットを絞りませんか?」
こうした意見によって、よりニーズに沿った施策を考えることにつながり、大きな成果をつかめる可能性があります。そうなれば仕事の充実度は高まりますし、仮に大きな成果につながらなかったとしても、不安は解消されるでしょう。
2. 上司との信頼関係が深まる
もうひとつのメリットは、上司との信頼関係が深まることです。桑原氏いわく、いまの若手社会人の上司にあたる世代の人たちは、本音で会話してくれる部下に対し好感を抱きやすいのだそう。
先のキャンペーンの例なら
「顧客のターゲット層を30~40代の女性に絞りましたが、キャッチコピーが男性向けで合わないのではないでしょうか?」
のように本音で意見を伝えたほうが、信頼関係を築けて、仕事がスムーズになると桑原氏は言います。
ただし、上司に意見を述べる際には注意も必要です。そもそも「誰だって他人からミスを指摘されたり、不満をぶつけられたりすると落ち込むもの」と説くのは、精神科医の平光源氏。それゆえ、感情的になって余計な対立を生まないよう、客観的に事実を述べるスキルが必要とのこと。
加えて、意見を受け止めてもらったら、感謝の気持ちを伝えるとよいそうです。一方で意見が通らなかった場合には、「そういう意見もあるのか」と素直に受け取るといいと、平氏は述べています。
ここからは、意見を言葉にして伝えるための3つの具体的な方法をお教えしましょう。
【1】「放電・充電日記」で自分の意見を明確にする
「自分の意見を言うのが得意でない人のなかには、批判を恐れ意見を長らく言わずに来たために、そもそも自分の意見に気づけなくなっている人もいる」と説くのは、キャリアコンサルタントの後藤くりこ氏。
思い当たる人は、ネガティブな感情が生じているところに着目しつつ、自分の意見と向き合う時間をつくりましょう。というのも、後藤氏いわく、ネガティブな感情は「意見の相違」「違和感」のサインだからです。
ネガティブな感情が生じているところを明確にするには、習慣化コンサルタントの古川武士氏が提案する「放電・充電日記」が適しているでしょう。
放電・充電日記とは、1日の出来事を「好き」「嫌い」で分けるシンプルなメソッド。それぞれの書き方を、例を交えながら紹介します。
放電日記:1日のなかで自分の感情、気分、エネルギーを下げた出来事を書く。
例)
- 仕事の段取りが悪くて、また残業してしまった
- 1週間前に買ったビジネス書をまだ読めていない
- 早起きして掃除するつもりだったが実行できなかった
充電日記:1日のなかで自分の感情、気分、エネルギーを上げた出来事を書く。
例)
- 引継ぎマニュアルが完璧だと同僚に感謝された
- 修正して再提出した企画案が通った
- 親戚に送ったプレゼントが喜ばれた
感情基準で分けて書くと、もやもやと抱えているものを整理できると古川氏。放電・充電日記を通し、ポジティブなことと対照させつつネガティブなことが浮き彫りになれば、「どうすれば解消できるか」と考えられるようになり、やがて自分の意見が明確になることでしょう。
【2】「スモールステップ」で少しずつ意見を伝える
相手に改善してほしいことがあるけれど、自分の意見を正直に言ったら相手を傷つけてしまわないだろうか……。前出の平氏いわく、そう考えて意見を言うのをためらってしまう人には、言えそうなことから少しずつ伝える「スモールステップ」がおすすめだそう。スモールステップとは、その名のとおり「階段を一段ずつのぼるように、少しずつ気持ちをさらけだす」こと。
意見を小出しにするだけでなく、「私も大変だったからわかるけど……」と共感の言葉を加えたり、よい点をあわせて伝えたりすると、相手の反発を招きにくいそうですよ。
たとえば、チーム内で自分だけ仕事量が多いことに不満がある場合。「全体の仕事量を把握して、公平に振り分けて欲しい」と上司へストレートに伝えるよりも、次のような感じでスモールステップに分け、自分の意見を少しずつ述べるとよいでしょう。
自分ばかり雑用を頼まれるのが不満なことを伝える
「今週は全員忙しくて、書類の整理ができませんでしたね(共感)。私は、これから取引先との急なミーティングが入っています。私ひとりで書類の整理を対応するのは難しいと思いますので、メンバーで持ち回り制にしてもらえませんか?」
平氏いわく、段階を踏むことで、言いたいことが徐々にうまく言えるようになるそうですよ。
【3】「DESC法」を取り入れる
意見を言うのに慣れていないから、攻撃的な言い方になってしまわないか心配……。そんな人に対し、臨床心理士の関屋裕希氏は、意見をより冷静に伝える方法として「DESC法」をすすめます。
DESC法は、自分の主張と相手の主張両方を尊重できるコミュニケーションの4ステップのこと。具体的には、以下のとおりです。
- Describe
誰の目から見てもうなずける客観的な事実・状況を伝える。 - Explain
「私は」から始まるかたちで、主観的な気持ちや考えを説明する。 - Suggest
具体的かつ実現可能な解決策・妥協策を提案する。 - Choose
提案に対してYesかNoかを相手に選んでもらう。Noの場合も予測して、代替案を示す。
たとえば、定例会議が長引くことに不満があり、改善案を伝えたい場合。「仕事に必要なことだから、定例会議が長引くのは仕方ない」といった反対意見が出ることも想定しつつ、各ステップに沿って自分の意見を伝えてみましょう。
- Describe
毎週水曜日に定例会議を開いていますが、いつも予定の1時間で終わらず、2時間以上話し合っています。 - Explain
私は、会議が長引くことでチームの業務進捗に支障をきたしていると感じており、予定の1時間で終えるように改善したいと考えています。 - Suggest
議題をその場で追加するのをやめませんか?
話がそれて長引かないよう、議題ごとに制限時間を設けませんか? - Choose
Suggestに対する回答がNoだった場合の代替案:
議題を追加する場合は、15分以内に完結させるとルールを決めませんか?
議題を追加する場合は、案件に関係ないメンバーは任意参加にしませんか?
話がそれないよう、議長が「本題に戻します」と定期的に言うことを徹底させませんか?
DESC法を使えば、意見を言うのが苦手な人も、怒りをこらえたり不満をためたりすることがなくなりますよ。
***
自分の意見を言えず、精神的な疲労を抱えている人は、今回紹介した3つの方法を試してみてくださいね。
【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。
(参考)
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