ビル・ゲイツが30年続ける『ソリチュード』|成果を生む「孤独な思索」3つのメリット

立って手にもつ本に目線を落とす女性

ビル・ゲイツが30年以上続けている習慣をご存知ですか?

それは年2回、完全にひとりきりで「Think Weeks(考える週)」を過ごすことです。

側近や家族との連絡を断ち、未読の本や論文に没頭するこの『ソリチュード(孤独な思索)』の時間は、世界のトップリーダーが新たな発想や成果を生み出すための源泉となっています。

日本では「チームワーク」や「コミュニケーション」が重視されがちですが、じつは本当に成果を出している人ほど、戦略的にこのソリチュードを大切にしているのです。

なぜ『ソリチュード』があなたの成果を高めるのか。

その3つの理由と、誰でもすぐ実践できる方法をご紹介しましょう。

理由1: 深い思考と創造性が飛躍的に向上する

メールやチャット、同僚との会話によって「集中の切れ目」を経験したことはありませんか?

ジョージタウン大学教授のカル・ニューポート氏が提唱する「ディープ・ワーク」理論によると、注意を散らすもののない状態で行う集中的な作業こそが、価値の高いアウトプットを生み出すのだそう。*1を参考にした

スイスの精神科医・心理学者のカール・ユング、そしてマイクロソフト創業者のビル・ゲイツも、この「ディープ・ワーク」を取り入れて偉業を成し遂げました。

自分をあらゆるノイズから断ちきって「ひとりの時間」を確保することで、思考を深め成果を挙げたのです。

割り込みによって作業が中断してしまっては生産性が下がりますし、思考を巡らせる時間がなければなにかを創り出すことはできないでしょう。

また、深い思考を巡らせるだけでなく「脳を休ませる」時間としても、ひとりの時間は有益です。

脳が休まれば創造力が高まります。なぜなら、脳が特定の課題に取り組んでいないときに活性化される「デフォルト・モード・ネットワーク」の状態になるからです。

脳科学者の西剛志氏は、脳がこの状態にあると「それまでにインプットした情報や積み上げた思考を脳が自動的につなげてくれて、ふっとアイデアを出してくれる」と話します。*2

ノイズから離れるひとり時間は、深い思考を促し、また創造性を引き出す脳の休息時間となるのです。

地平線を眺める人の後ろ姿

理由2: 内発的動機の最大化

ひとりの時間を大切にしている人は、とっさに湧いたネガティブな感情や潜在的な思い込みなどのノイズにも振り回されず、そのときどきで最善の選択をすることができます。

これは、アメリカの精神科医ウィリアム・グラッサー氏が提唱する「人は外部からの刺激に反応するのではなく、内側から動機づけられて行動を選択する」という「選択理論」によるもの。*3をまとめた

たとえば職場で理不尽なことを言われたとき、「怒って言い返す」か「冷静に受け流す」かは、反射的に対応しているようでいて、実際は本人の内面で選びとっているという考え方です。

ひとりの時間をもち、自分の内面である価値観や感情を整理する習慣がある人ほど衝動に流されず、より建設的な行動を選択する傾向にあるのです。

また、ひとりの時間は「選択理論」の「5つの基本的欲求」(「生存」「愛・所属」「力」「自由」「楽しみ」)のうち、特に以下の3つを満たします。*3を参考にした

  • 「自由」の欲求:他人や締め切りなどの外部環境に縛られることなく、自律的な判断を下せる
  • 「力」の欲求:自分と向き合うことで達成感を得られる
  • 「楽しみ」の欲求:やりたいことに没頭できる時間は、学びや成長の純粋な喜びを味わえる

もし「自由」の欲求が満たされずにまわりに振り回されてばかりいると、自分で物事を考えられなくなってしまうかもしれません。

「力」の欲求が満たされないために自己効力感が低下すれば、チャレンジから遠ざかってしまいますし、「楽しみ」の欲求が満たされなければ前向きに進めません

つまり、「いまの自分」に目を向けやすくなり、それが内発的動機を高め、長期的なパフォーマンスアップと成果につながると考えられます。

ライトやノートが置いてある薄暗いデスク

実践方法:戦略的「ひとりの時間」のつくり方

毎日決まった時間に「ひとりの時間」を設定する

自分自身にアポイントメントをとるイメージで、次のように「ひとりの時間」をスケジュールに組み込むのはいかがでしょうか。

【朝の1時間】例
  • 前日を振り返る
  • 1日の戦略を考える
  • インプットを行なう
【昼休みの30分】例
  • 静かに過ごし、デフォルト・モード・ネットワークを活性化させる
  • 午前の振り返りと午後の準備
【夜の1時間】例
  • インプットを行なう
  • 1日を振り返る

「1日3回」「1時間は確保」と縛られずに、その日のスケジュールに合わせて柔軟に設定するといいでしょう。

「高質インプット」の選択

ひとり時間を戦略的に使う人は、「どんな情報に触れるか」にも強くこだわります。

なぜなら、日々の意思決定や発想力は「脳に入れた情報の質」で決まるからです。

私たちの脳は1日に数万回もの意思決定をすると言われています。

その判断材料となるのが、普段から摂取している情報群。

SNSやテレビのような刺激的だけど断片的なインプットでは、思考の深度や独自性を育てるのが難しくなります。

一方で、高質インプットとは以下のような特性をもつ情報を指します。

【高質インプット】具体例
  • 本や論文:体系的・深い知見に触れられる
  • 専門家の講義や長尺インタビュー:思考のプロセスを学べる
  • 異分野・異文化からの視点:自分の枠を外し、視座を高める

特に読書には、知識獲得だけでなく著者の思考構造に触れるという大きなメリットがあります。

これは表層的な情報では得られない構造化された知性のインプットです。

また、思考の質は入力の質と思索時間で決まると言われるように、インプットとひとりで考える時間をセットで確保することが、ビジネスパーソンとしての差になるのです。

高質インプットに充てるひとり時間は、思考の質と深さを格段に引き上げる脳への良質な燃料補給と言えましょう。

机で勉強する人

「振り返りプロセス」の仕組み化

勉強でも振り返りが大切なように、「ひとりの時間」にも振り返りが必要です。

やりっぱなしだと得られた学びや気づきが単なる「経験」で終わってしまい、次の行動へと活かされにくくなってしまうからです。

たとえば次のように、節目ごとに「ひとりの時間」で実践したことを振り返るのはいかがでしょうか。

「振り返り」のタイミング例
  • 日次:寝る前の5分間でその日を振り返る
  • 週次:週末の1時間で1週間を振り返る
  • 月次:月末の1時間で1か月を振り返る
  • 四半期:3か月ごとに振り返る
  • 年次:年末に1年を振り返る

振り返りによって、目標と実績のズレを認識し、戦略を見直すことができます。

「ひとりの時間」の効果を最大化させる後押しとなるでしょう。

植物の芽が出て成長していく様子

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成功している人たちは漫然と時間を使うのではなく、自分の成長や目標達成のために時間を投資するという視点をもっています。

まずは5分からでもいいので、戦略的な投資としての「ひとりの時間」をつくってみませんか?

※引用の太字は編集部が施した

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。

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