「今日こそ定時退社するぞ!」と朝から意気込んでいたのに、気づけば残業確定。資料作成や急な対応に追われ、結局いつもの帰宅時間……。そんな残業地獄から抜け出せない日々に疲れていませんか?
多くのビジネスパーソンが「仕事が終わらないから仕方ない」と残業を受け入れていますが、「必要な残業」と「無駄な残業」があります。効果的な時間管理術を身につけるだけで、無駄な残業は大幅に減らすことができるのです。見直しポイントは3つ。
無意味な残業を激減させる3つの無駄排除術
🕒 無駄な時間を「見える化」する
- あなたが気づいていない時間泥棒を特定する
- 生産性ゼロの作業を見つけ出す
🛡️ 割り込み業務に「支配されない」
- 時間をブロック化して業務をコントロールする
- 自分の作業の主導権を握る
✂️ 無駄な仕事プロセスを「カット」する
- 指示受けの段階で無駄を省く
- 効率的な作業プロセスを構築する
この3つを意識するだけで、いまより効率よく仕事を進め、残業を減らすことが可能です。本記事では、それぞれの具体的な方法について紹介します。
1. あなたの仕事時間の"泥棒"を見つける「時間簿」術
あなたは、自分の勤務時間がどこに消えているか、正確に把握できていますか?
多くの人は、残業の原因を「仕事量が多すぎるからだ」と思い込みがち。ですが、実際は思いもよらない「時間泥棒」が潜んでいることが多いものです。
「時間泥棒」を見つけるには、実際の時間の使い方を書き出して「可視化」することが効果的です。そこで、ぜひ試してもらいたいのが「時間簿」をつけること。
勤務時間の作業内容を、できるだけ正確に記録していく家計簿の時間版。どの作業にどれだけの時間を使っているかを可視化することで、時間の無駄を発見できる。
習慣化コンサルタントの古川武士氏は、時間の使い方の無駄・非効率さの原因は人によってさまざまであるため、時間簿で明らかにし改善することが普遍的な手法であると述べています。*1
【時間簿のつけ方】
- 期間:短くて1週間、できれば1か月程度
- 記録する内容:作業内容、開始・終了時間
- 記録のタイミング:作業の切り替わり時
- 分析ポイント:どの作業に時間がかかっているか、予想より時間がかかっている作業はどれか
時間簿をつけると、自分がどの作業に時間を割きすぎているのかがはっきりわかります。
たとえば、「なんだかいろんな対応をしていて忙しかった」と感じていたのは、差し込み業務を3件も処理したからだった。そして、そのうち2件はいますぐでなくてもいいことだった……など、状況を客観的に分析することができるようになるのです。
2. 「15分ルール」で割り込み業務の支配から解放される
「締め切りまで時間があればあるだけ、仕事が終わらなくなる……」
このような経験は多くのビジネスパーソンが共感するのではないでしょうか。この現象は「パーキンソンの法則」として知られており、経営学や時間管理の分野で広く認識されています。
「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」という法則。*2
締め切りまでの時間が長ければ長いほど、その作業は延々と続き、結局期限ギリギリまでかかってしまう現象のこと。
この法則に対抗するための効果的な解決方法が、タスクを15分単位で管理すること。作業に明確な時間枠を設けることで、集中力を高め、効率的に業務を進めることができます。
さらに、「差し込みの業務」に左右されなくなることも「15分ルール」のメリット。メールやチャットの通知、同僚からの質問、上司からの急な依頼など、日常的にさまざまな中断が起こります。それに対応しているうちに、本来進めるべきだったタスクが終わらず、残業せざるを得なくなる……というパターンは多いもの。
しかし、進めるべきタスクをあらかじめ15分単位に分けておけば、この事態を防げるのです。古川氏は「15分単位のモジュールに作業が分かれていれば、そのモジュールが完了するまで突発に対応せずに切りがいいところで終わらせて、また次のモジュールからスタートすることができ」ると述べています。*1 突発的な業務が発生しても、数分だけなら自分の作業が完了するまで集中できますし、戻って作業するときも集中力を取り戻しやすくなるのです。
また、「15分のタスクがあと何個残っている」と把握できているため、差し込み業務に割くべき時間も管理しやすくなります。自分が仕事の主導権を握ることで、突発的な業務に振り回されることなく、残業を減らすことができるのです。
15分単位のタスク管理のメリット
⏱️ 集中力の向上
- 短い時間制限があることで集中して作業に取り組める
- 「あと15分で終わらせる」という明確な目標ができる
🛠️ 突発業務への対応力
- 「この15分が終わるまで」と区切りをつけられる
- 差し込み業務後も元の作業に戻りやすい
📊 時間の可視化
- 「残りタスクは〇個(×15分)」と把握しやすい
- 突発業務にかける時間も管理しやすくなる
3. 事前のヒアリングで業務の無駄を減らす
「集中する工夫もしているし、使途不明時間もない。それでも業務が終わらない……」そんな場合は、作業プロセスにムダが潜んでいるのかもしれません。
仕事をスムーズに進めるには、成果物を受け取る相手とコミュニケーションをとっておくことが重要。臨床心理士の中島美鈴氏は、仕事の無駄を防ぐため、指示受けのときに行なうべきことを2つ紹介しています。*3
【指示受けで確認すべき2つのポイント】
- 最初に仕事のゴールを相手とすり合わせる
- 最終的な成果物のイメージを共有する
- 「仕事のゴールが映像でみえるぐらいはっきりわかる」状態にする
- ゴールのズレを防ぐことで、やり直しを減らす
- 指示受けのときに「仕事の進め方」の情報を引き出す
- どうすればそのゴールに到達できるかを明確にする
- 必要な情報を事前に収集し、後戻りを防ぐ
仕事のやり直しが頻繁に発生する場合、これらのポイントを振り返ってみましょう。「どうすればそのゴールに到達できるのか」を、上司や取引先と話しながら、可能な限り明確にしておくのです。
仕事の指示受けで聞き出すべき情報
- 締め切り:最終的な締切だけでなく、中間報告の期限も決めておく
- 参考になる資料:既存の資料や事例で役立つものがないか
- 前任者の情報:過去に同様の業務を担当した人がいれば
- 予算について:費用がかかる場合の上限
- 関係者のチェックポイント:途中経過を誰に確認してもらうべきか、どの段階で承認が必要か
- 過去のトラブル事例:似た仕事で過去に問題になった点があるか
情報を聞き出せたら、できるだけ効率よく作業を進める方法を考えます。
- これまでの業務で応用できるものはないか
- 作業の順番を考える
- 経験のある人に話を聞く
このように、指示受けの段階でしっかりヒアリングをすることで、無駄な作業を省くことができます。そうすれば、ひとつの業務にかかる時間を圧縮でき、結果的に残業も減らせます。
明日から実践!無駄な残業を減らす3ステップ
❶時間簿をつけて使途不明時間を把握する
- 1週間〜1ヶ月間、勤務時間の作業内容を記録する
- 無駄や非効率な作業パターンを発見する
❷タスクを15分単位で管理する
- 作業を小さなモジュールに分割して集中力を高める
- 突発業務に振り回されず、自分の作業の主導権を握る
❸指示受けの段階で無駄を省く
- 仕事のゴールを明確にして差し戻しを減らす
- 必要な情報を事前に収集して効率的に進める
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残業を減らすためには、「時間の見える化」「突発業務に振り回されない工夫」「業務の圧縮」の3つが効果的です。小さな工夫を積み重ね、定時退社を実現しましょう。
*1 プレジデントオンライン|今この瞬間、「1つの仕事」に集中できないのは誰のせいか
*2 グロービズ経営大学院|パーキンソンの法則
*3 朝日新聞|「全力でサボって効率化」 仕事のゴールは見えてくる
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。