
「手書きがいいのは知ってる。でも面倒……」
スマホでパパッとメモを取る。PCで素早くタイプする。それが当たり前の日常を送ってきた私たちには、手書きなんて非効率な遠回りに感じます。
その感覚、とてもよく分かります。実際、デジタルツールには検索性の高さ、データの共有のしやすさ、素早い入力など、明確なメリットがあります。それなのになぜいま、あえて「手書き」なのか?
今回ご紹介する「アウトラインノート法」は、情報を整然と整理し、記憶にしっかり刻み込むアプローチです。「時間がない」「効率重視」というあなたの懸念に応える、具体的な方法をご紹介します。
「手書きのノート」で記憶を強化する
現代ではデジタルツールを使ったメモが主流になりつつあり、勉強をする際も、動画を見て学び、デジタル端末にメモを取る方も多いのではないでしょうか。
「紙やペンはもうずっと触っていない」という方はもったいない——じつは手書きでノートを取ることで、記憶の定着や深い理解を促すことができるのです。
脳神経内科医である長谷川嘉哉氏によると、文字を書く際には、「手を使い、ペンを握ることで指先を繊細に動かす」ため、脳をフル稼働させる効果があるそう。手を動かすことで、集中力が増し、記憶力の維持・定着に効果的だというのです。*1
さらに、脳科学と教育について研究をしている、脳科学教育研究所所長である桑原清四郎氏によると、キーボードを打つ作業は単純なので、脳への刺激には役立っておらず、キーボードを打つよりも手書きがよいとのこと。*2 せっかく勉強するなら、より脳に定着しやすい方法を利用したいですよね。
こうした手書きのメリットを活用するため、今回ご紹介するのは「アウトラインノート法」です。この方法を使うと、情報の整頓がしやすくなり、重要な箇所がわかりやすくなるのです。要点が明確になるので、あとから勉強内容を見直すときにも便利ですよ。

アウトラインノート法とは?
アウトラインノート法は、情報を階層的に整理して書き留める手法で、論理的な構造が特徴です。これは、文章やスピーチなどでよく使われる「アウトライン(大枠)」の考え方をノート作成に応用したものです。
この方法では、主題を大見出しに、次に要点を箇条書き、必要であれば詳細情報や補足をさらに下にインデントして書いていきます。階層を明確にすることで、重要な情報と補足的な情報を視覚的に区別しやすくなります。

このシンプルな流れによって、情報を自然に整理しながらノートを作成できます。見出しごとに内容を整理することで、要点がわかりやすくなっていますね。
筆者は特許関係の資格の勉強中なので、普段の勉強でこのアウトラインノート法を取り入れてみました。

内容がとても分かりやすくなりましたね。
この方法の最大の魅力は、視覚的な分かりやすさと情報整理の効率性です。主題、要点、補足情報を階層的に記録することで、ノート全体の構造がひと目で理解できるようになります。また、必要な情報を素早く見つけられるため、復習や確認の際にも非常に便利です。

アウトラインノート法は「要点はどこか」ということを考えながら書き出すため、自然と「書きながら考える」ことになります。そのため、単に講義を聞いているよりも、理解がより深まったように感じました。ただ情報をコピーするのではなく、重要な内容を抜き出して整理する過程で、自分の中に情報をしっかりと落とし込むことができるのです。
筆者の感じた難点は、項目ごとに内容をまとめる必要があるので、スピードの速い口頭での講義はメモを取りにくいということ。筆者が受けている講義は、参考書に沿って進むため、比較的項目ごとにまとまっており、アウトラインノート法を使いやすい講義です。しかし、参考書を使わない口頭のみの授業だと、「最後まで講義が終わったあとでないと、ポイントや項目ごとのまとめをつくりにくい」と感じました。
アウトラインノート法が向いているのは、講義が項目ごとに進む場合や、参考書をメインに内容をまとめるような場合かもしれません。もしも講義が口頭のみで進み、トピックごとのまとまりがわかりにくい場合は、音声を録音し、のちに復習する際にアウトラインノート法を利用するとよいでしょう。

効果をさらに高めるコツ
アウトラインノート法を実践してみて、効果を最大化するには、さらに次のような工夫を取り入れるとわかりやすくなりそうだと感じました。
- 視覚的な工夫を取り入れる
文章のみだと、箇条書きの列挙でわかりにくくなるため、色分けやアイコンを活用して、重要なポイントを強調するとより見やすくなりそうだと感じました。たとえば、大見出しを青で書き、重要なキーワードを赤で囲むなどすると、さらにぱっと見てわかりやすいノートになるでしょう。 - 余白をつくっておく
ノートのスペースに余白を残すことで、あとから情報を追加したり、質問やアイデアを書き込む余裕を持たせられます。筆者は講義中に気になった点をメモしておいたのですが、最初からぎゅうぎゅうにメモを取ってしまうと、あとから調べた内容について書き込む隙が無いので、余白をつくっておいたほうがよかったなと後悔しました。 - 定期的に見直す習慣をつける
繰り返し見直すことによって、より知識の定着に役立ちます。構造が明確なので、参考書全体に目を通すよりも短時間で復習ができますよ。
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今後ノートをとる際には、ぜひアウトラインノート法を試してみてください。シンプルな構造と手書きによる脳の活性が、あなたの記憶と理解を深め、学びをより効率的なものに変えてくれるはずです。
*1 東洋経済オンライン|脳機能の低下を防ぐには「手書き」が有効だ 「あれなんだっけ」が増えていませんか?
*2 マイナビニュース|文字を書かないと脳が老化しちゃうってホント?
*3 Oxford Learning|How To Take Study Notes: 5 Effective Note Taking Methods
髙橋瞳
大学では機械工学を専攻。現在は特許関係の難関資格取得のために勉強中。タスク管理術を追求して勉強にあてられる時間を生み出し、毎日3時間以上勉強に取り組む。資格取得に必要な長い学習時間を確保するべく、積極的に仕事・勉強の効率化に努めている。