「頭はいいのに対人関係がうまくいかない」人の特徴。EQの低さが招く3つの落とし穴

デスクで項垂れている男性のシルエット

「Aさんの提案、論理的で完璧ですね。でも……」

上司の言葉に続きがあることは、その場の空気で分かった。資料の完成度は高く、プレゼンも理路整然。客観的に見れば申し分のない仕事だったはずなのに、なぜか会議室に漂う微妙な雰囲気。

「Aさんって、頭の回転は速いし仕事もできるんだけど……」
「間違ってはいないんだけど、一緒に働くのはちょっと……」

こんなふうに、「職場であまりよく思われていないかも」と感じたことはありませんか? または優秀な同僚に対して「関わると疲れる」と思ったことはないでしょうか。その背景にあるのは、EQ(心の知能指数)の低さという問題です。

「仕事はできるのに、なぜか周りから距離を置かれる」
「正しいことを言っているのに、チームワークが上手くいかない」
「頭いい人との付き合い方が分からず、職場の人間関係がストレスになる」

こうした悩みを抱えているビジネスパーソンは意外と多いのです。
今回の記事では「頭はいいのに対人関係がうまくいかない人の特徴」を解説します。高いIQを活かしながら人間関係を改善したい人、そして頭のいい人との関わり方に悩む人は、ぜひご一読ください。

特徴1:フィードバックを受けとれない

論理的思考力に長けた人は、データや根拠に基づいた自分の判断に強い確信をもつものです。実際、その判断が客観的に正しいケースも少なくありません。しかし、職場において「正しさ」だけでは人間関係は成り立ちません。周囲の意見に耳を傾けられなければ、どれほど優秀でも「協働しにくい人」というレッテルを貼られてしまうのです。

たとえば上司から……

「たしかにAさんの提案も一理あると思う。でも、もう少しチーム全体の意見にも耳を傾けてほしいな」
 

……とフィードバックを受けたとしても、即座に以下のように反応してしまう

「でも、私の案が一番効率的ですし、最終的にはそれに落ち着くと思います」
 

論理的には正しいかもしれませんが、この対応では「冷たく融通の利かない人」という印象を与えかねません。

「知的正直さ」とは

頭脳明晰でありながら人間関係に課題を抱える人に欠けているのは、「知的正直さ」かもしれません。経営者専門の出版プロデューサー、株式会社エニーソウル代表取締役の庄子錬氏は、本当に優秀な人は知的正直さが備わっていると述べます。

知的正直(Intellectual Honesty)とは、「自分の知識の限界を認め、間違いを恐れずに誠実に向き合う姿勢」のことを指します。庄子氏いわく、「知的正直さ」は以下のとおりに表れるとのこと。

本当に優秀な人ほど、自分が知らないことを素直に認め、常に学び続ける謙虚さをもっています。また、相手への敬意を忘れず、感謝の気持ちを大切にします。これは単なる礼儀正しさではなく、真の知性の現れです。*1

庄子氏によれば、知的正直さのある人は、言葉の表現で以下の特徴が見られるのだそうです。

  1. 自信のなさや葛藤を吐露する
  2. 相手へのリスペクトを忘れない
  3. 「ありがとう」が多い *1

つまり、自分の考えが「完全に正しいとは言えない」ことを認め、相手の意見に敬意を示しつつ傾聴し、そのうえで感謝の気持ちを伝えるのです。意見を述べるにしても、自分とは違う意見を冷たく突き放すのではなく、思いやりを忘れないわけですね。

再び、先ほどの上司からフィードバックを受けた例を見てみましょう。3点を意識して言い方を変えてみると——

おっしゃる通りです。正直なところ、自分の案に固執しすぎて、チーム全体の視点を見落としていたかもしれません。
次回の会議では、まず皆さんの意見をしっかりと伺ってから、自分の考えを整理して提案するよう心がけます。
いつも私の成長を気にかけてくださり、本当にありがとうございます。
 

「自分の弱さ」を打ち明けるだけで、柔らかい表現になりましたね。完璧である必要はありません。むしろ、自分の弱さや不完全さを開示することで、人間味のある魅力的な人物として周囲に受け入れられるのです。

向かい合って話し合っている三人の従業員

特徴2:難しい言葉を使いたがる

知性的な人は知識が豊富であるもの。しかし、その豊富な知識が必ずしも相手に伝わるとは限りません。むしろ、知識の差が大きいほど、相手への共感や配慮が不足してしまうケースもあるのです。

ITプロジェクトの現場で、システム開発の経験豊富なメンバーが、まだ知識が浅い部下に対してこんな説明をしたとします。

「サーバーのロードバランシングをもう少し最適化すれば、レスポンスタイムは平均で30%改善します。DNSラウンドロビンの仕組み、わかりますよね?」
 

説明する側にとっては基礎的な知識でも、聞き手にとっては「ロードバランシング?DNSラウンドロビン?」と、まったく理解できない専門用語の羅列に聞こえてしまいます。

このとき、知識のある側は「この程度の基本的な知識も知らないなんて、勉強不足では?」と感じるかもしれません。しかし、それは「相手がどこまで理解できているのか?」という視点が抜けているのが原因です。自分がわかるから相手もわかるだろう——この認知の歪みを「知識の呪い(=curse of knowledge)」と呼びます。

「知識の呪い」とは

カリフォルニア大学客員講師、経営コンサルタントのブライス・ホフマン氏は「知識の呪い」を「自分より知識の少ない人に対して、理解や共感が難しくなる認知バイアス」と説明しています。*2 つまり、知識をもつ人は「知っていて当然」「これくらいのことはわかるだろう」と無意識に思い込み、相手も同じレベルで理解できると錯覚してしまうのです。

もちろん、そこには悪意はありません。ただ、受け手側からすれば「配慮に欠ける説明」「上から目線で話している」と感じられてしまいます。

ホフマン氏は知識の呪いを克服するための具体的な方法として、以下のアプローチを提案しています。

1
共感を大切にする

相手の立場や視点を考え、コミュニケーション方法を調整する

NG例:専門用語のまま

「この機能追加によって、UXが改善します」
 

OK例:分かりやすく言い換え

「この機能を追加するメリットは、操作に迷わないことです。お客さまがよりスムーズに進められるようになります」
 
2
コミュニケーションを簡単に明確にする

わかりやすい言葉、例え話を用いたりして、相手に届くような説明をする

NG例:抽象的な説明

「APIが連携しているので、データが自動で同期されます」
 

OK例:比喩を使った説明

「たとえば、別のシステムと"パイプ"でつながるイメージです。入力した情報は、自動的に流れていきます」
 
3
フィードバックを求める

「伝わらなかった原因」を、ほかのチームに聞いてみる

「さっきの説明でどこがわかりにくいと感じました?」
「どんな表現ならイメージがわきますでしょうか」

相手に寄り添い思いやるためには「どうしたら伝わるのか?」を常に想像することが大切です。他者視点で考えることができるようになれば、共感力の高さにもつながりますよ。

談笑している四人の従業員

特徴3:ほかの人を見下してしまう

頭がいいことは、多くの人にとって羨ましいもの。しかし、その「頭のよさ」を他者との優劣を測る尺度として使い、見下すような態度をとってしまうと、どれほど優秀でも周囲から敬遠されてしまいます。

ただし、知性の高い人すべてが他者を見下すわけではありません。むしろ、内面に劣等感や不安を抱えている一部の人が、知的優位性によって自分の地位を確保しようとする傾向があるのです。

「優越コンプレックス」とは

「自分はこのチームで最も優秀な存在だ」「ほかの人とは能力のレベルが違う」——このような思考が習慣化し、傲慢な態度として表れる心理状態を、優越コンプレックスと呼びます。オーストリアの精神科医 アルフレッド・アドラー氏が提唱した概念です。

成人精神医学を専門とするスミタ・バンダリ医学博士は「優越コンプレックス」を「自分の能力や成果が他人よりも著しく優れているという思い込み」と定義しています。その結果、意見の合わない人に対して「見下し」「うぬぼれ」「意地悪な態度」をとる傾向があるのだそう。*3

優越コンプレックスを抱えている人には、以下のような特徴的な行動が見られます。

  • 建設的な議論よりも論破を目的とする
    「その論理には明らかな矛盾がありますね。もう少し調べてから発言されたほうがよいのでは?」
  • 自分の成果を過度にアピールする
    「まあ、普通は私のやり方ではできないと思う。頭使う交渉だからね」
  • 相手の提案を条件反射的に否定する
    「それって、前も同じ提案していなかった? 非効率だと思う」

もし、あなたが上記の傾向にあるのだとしたら、バンダリ医学博士が提案する以下の方法で自己認識を調整してみてください。

1
実際の成果をリストアップする
・プレゼン資料が評価された
・新人のフォローで感謝された
2
物事を「よい/悪い」で決めない

二極思考の例

「企画が採用されなかった。自信があったのに……完全に失敗だ」
 

多面的な思考

「今回は採用されなかったけど、着眼点は高評価だった」
 
3
「他人の成果に関してどう思うか?」を意識してみる
表彰されている人を見て……

感情的な反応

「自分より仕事が遅いのに腹が立つ……」
 

自己観察

「いま私は嫉妬している?」
 
4
否定的な考えで自分を責めない

自己否定的思考

「〇〇の分野では私が一番得意なのに、ほかの人に仕事が回る。きっと人格的な問題で判断されたのだろう……」
 

建設的な思考

「今回はリーダーシップやチームワークが重視されたようだ。私の分析力や問題解決能力は別の場面で活かせるはずだ」
 

優越コンプレックスの背後には、しばしば「完璧でなければ価値がない」という思い込みが潜んでいます。知らず知らずのうちに傷ついた自尊心を、他者を見下すことで回復しようとしていないか——この点を定期的にセルフチェックすることが重要です。等身大の自分でいることができれば、知性と人間性を兼ね備えた、真に魅力的な人材として周囲から信頼されるようになるでしょう。

***

知性的でありながら、好感のもてる人間になるのは難しい問題です。でも、自己認識を改め、共感ベースで関われば、チームとの距離を縮めることができます。IQもEQも備われば、一流の人材になれるはずです。

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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