1週間働き続けて、ついに待ちに待った休日。貴重な休日だったはずなのに、気がついたらあっという間に日曜日の夜。「心も体も休まっていないのに、もう仕事に戻らなければならないのか……」と、がく然とした経験はありませんか?
気がついたら休日が終わってしまっていたのは、もしかしたら「正しい休み方」ができていないのが原因かもしれません。休むべきときにしっかり休むことも、ビジネスパーソンの実力のうち。今回は、うまく休めない人を3つのパターンに分けて、それぞれのタイプに最適な休み方対策をご紹介します。
休みを有効活用できない人の3パターン
ビジネスパーソン向けに仕事の効率化を促すトレーニングプログラムを提供するゼルバナの創立者であるマット・プラマー氏は、休日を有効活用できていない人は以下の3つのタイプに分けられると言います。
1. カウチポテト派
カウチポテトとは、「ソファーに寝そべってだらだらとテレビなどを見て過ごす人」を指すアメリカの俗語表現です。カウチポテト派の人は「とにかく何もしないことでリフレッシュしよう」と意気込みますが、多くの場合、期待していたほどの満足感は得られず、満足するどころか「自分はせっかくの休日に何をしていたのだろう」と失望してしまうことすらあるそうです。
2. 偽りの休日派
偽りの休日派は、スケジュール上では休みを取っていても、溜まったメールへの返信や資料作成などの仕事をしてしまう人です。突発的な仕事が原因のこともありますが、基本的に「溜まっている小さな仕事を休みのうちに消化して、休みが明けたらほかの仕事に集中したい」という気持ちを持っている人が偽りの休日派にあたると、プラマー氏は述べています。休みの日まで仕事をしつづけていては、ストレスを解消できるはずがありません。
3. 休暇版ワーカホリック派
休暇版ワーカホリック派には、仕事を絶え間なく次々とこなすかのように、休暇においても食事や旅行などの用事を詰め込んでしまう人が当てはまります。休暇版ワーカホリック派に当てはまる人は、仕事で身につけた「常に何かをしていなくてはならない」という思い込みによって、どんどん予定を詰め込んでしまうため、休日を終えてもリフレッシュできたという感覚になれないそうです。
「気がついたら休日が終わっている」のはなぜ?
上の3タイプに、ご自身があてはまるものはあったでしょうか。実は、「カウチポテト派」「偽りの休日派」「休暇版ワーカホリック派」のように「気がついたら休日が終わっていた」と感じることが多い方は、無意識のうちに心的な時間(体感時間)が短くなるように行動してしまっている可能性が高いのです。千葉大学大学院の人文科学研究院教授教授で、「時間学」を研究する一川誠氏は、次のように述べています。
物理的には同じ時間でも、私たちの心的な時間は、認識される出来事が多いと長くなり、少ないと短くなるんです!
大人になると時間があっという間に過ぎてしまうのは、私たちが複数の出来事を「まとまった1つの時間」、として捉えてしまっているからなんです。
(引用元:新R25|土日の体感時間を“1週間”に延ばせる!? 目からウロコの「時間の長さコントロール法」 ※太字は筆者が施した)
例えば同じ1時間の過ごし方でも、ネットサーフィンと散歩では、後者の方が時間を長く感じる方が多いと思います。過ぎた時間の長さは同じなのに、体感時間が長いのは、視覚や聴覚をたくさん活用する散歩の方が、ただぼんやりとスマートフォンを眺めているよりも多くの出来事を認識しているためなのです。
体感時間という観点から上の3タイプを見直してみると、それぞれ以下のように体感時間を短くしてしまっていると考えられます。
- カウチポテト派:だらだらと同じことを続けるので、認識する出来事が少ない。
- 偽りの休日派:休日でも仕事のことに意識がメインで向かっているため、認識できる出来事が少ない。
- 休暇版ワーカホリック派:「予定をこなす」ということに関心が置かれているため、ひとつひとつの出来事をじっくり認識できていない。
体感時間を短くしてしまっている原因を踏まえて、それぞれのタイプ別に充実した休みを過ごす方法をご紹介します。
「カウチポテト派」の人は、1日を分割して過ごしてみる
カウチポテト派の休みの過ごし方は「1日中家で過ごす」というものでしたね。精神科医の西多昌規氏は、カウチポテト派の過ごし方の危険性を次のように述べています。
「からだを休めているといっても、実はそれが本当に『休む』ことにつながっているとは言い切れません。寝っぱなし・座りっぱなし・太陽の光を浴びない――そうしたなかば引きこもりともいえる状態は、精神医学的に言っても気分を後ろ向きにし、10の疲れを100の疲れに増幅させてしまいかねないのです」
(引用元:まいにちdoda|休日にゴロゴロ…だけでは疲労は増幅!? 今日からはじめる「休み方改革」 ※太字は筆者が施した)
つまり、1日中家でダラダラと過ごすことは、疲れを癒やすどころかさらに溜め込んでしまう恐れがあるということ。
そこで、カウチポテト派の人は、西多氏の提案する「計画的に1日の過ごし方を分割する」ということを試してみてください。無制限にダラダラとするのではなく、「午前中は家で何もしない」「午後からは洋服を買いに出かける」といったように、自分で決めたスケジュールに沿って1日を過ごすことで、メリハリのついた休日を送ることができますよ。「家でダラダラしているうちにいつの間にか休みが終わっていた」なんてことは、もうなくなるはずです。
「偽りの休日派」の人は、一晩だけメールを見ずに過ごしてみる
テキサス大学教授のアート・マークマン氏は、偽りの休日派の人は「仕事から離れているうちに重要な連絡が来たらどうしよう」という不安を抱いていることが多いと述べています。そして、「休日に仕事の連絡が来るかも」という不安を和らげる方法として「まずは一晩だけ、メールを見ずに過ごしてみる」ということを提案しています。
翌朝、何もトラブルが起きていなければしめたもの。休日中に仕事のトラブルが起きないことを認識する体験を繰り返すことで「自分が常に頑張っていなくても、案外大したことは起こらない」ということを身をもって体感し、仕事と休息のオンオフをはっきりつけられるようになるのです。
それでも、どうしても仕事のことを考えてしまう……という方は、読書や散歩のように「仕事のことを考えそうになったらやること」を決めておくと、ついつい仕事が頭をよぎったときも落ち着いて対処できるそうですよ。ぜひ試してみてください。
「休暇版ワーカホリック派」の人は、日記をつけてみる
予定をこなすことに一生懸命になってしまいがちな休暇版ワーカホリック派の人は、ひとつひとつの出来事を振り返る時間がないことが多いもの。マット氏は、多くの出来事を体験しつつも振り返れない状態を「心のメールボックスがいっぱいになっている」と表現しています。
そこで、休暇版ワーカホリック派は日記をつけてみてはいかがでしょう。その日の体験を思い出し、感じたことや考えたことをまとめてみる作業は、一日の出来事を振り返る良い時間になります。
日記をつけることは、いわば「心のメールボックスを空にする」作業にほかなりません。出来事をしっかりと振り返れば、「充実した休みだったな」という満足感を得られるはずですよね。そして、すっきりとした気持ちで休みを終えることができれば、翌日からの仕事にもすっきりした気持ちで取り組むことができるのです。
***
充実した休みを取ることができれば、精神的にも身体的にも健康になることができます。ぜひ一度、ご自身の休日の過ごし方を見直してみてはいかがでしょうか。
(参考)
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|誰にも邪魔されない「不可侵の日」を週に1日は設けるべき理由
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|休暇を最も有効活用するためにマイクロ・バケーションを取得する
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|休暇で心からリフレッシュして仕事に戻る4つの方法
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|オフの時間に仕事を上手に忘れる3つの方法
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|「楽しみは仕事の後で」を、やめてみよう
NIKKEI STYLE|オンオフ切り替え、意識的に 自分へのご褒美も効果的
新R25|土日の体感時間を“1週間”に延ばせる!? 目からウロコの「時間の長さコントロール法」
まいにちdoda|休日にゴロゴロ…だけでは疲労は増幅!? 今日からはじめる「休み方改革」
【ライタープロフィール】
梅野凌矢
東京大学工学部所属。鹿児島県立鶴丸高等学校出身。大学では人間の認知システムを中心に勉強中。大学の吹奏楽団体に所属していて、担当はホルン。趣味は音楽ゲーム、読書など。Perfumeがとても好き。