「文章が下手な人」に決定的に欠けていること。あなたに読み手への “サービス精神” はあるか?

上阪徹さんインタビュー「文章が下手な人に欠けていること」01

ビジネスに欠かせないスキルのひとつである「文章術」。日々のメールはもちろん、各種のビジネス文書の作成など、仕事と文章は切っても切れない関係にあります。でも、「書くのが嫌い」「書くのは苦手」と、苦手意識をもっている人はかなり多いのではないでしょうか。

そこでお話を聞いたのは、数々のベストセラーを生み出しているブックライターの上阪徹(うえさか・とおる)さん。「ブックライター塾」も開講している上阪さんは、文章を書く「真の目的」と文章の「読み手」を意識することが大切だと説きます。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

「誰に対してなにを伝えるべきか」を強く認識する

「あなたがその文章を書く目的はなんですか?」——。

文章を書くことが苦手だという人に対して、まずそう質問したいと思います。書くことが苦手だという人に多く見られるのは、文章を書くこと自体が目的になっていて、その先にある「真の目的」、さらには「読み手」が見えていないということです。

出張レポートを書かなければならないとします。その表面上の目的は、そのまま「出張レポートを書く」です。でも、そのままではまだ漠然としていて真の目的にまで至っていません。出張レポートのケースで言えば、求められているのは「自社の業務改善に生かすためのヒントを提供すること」かもしれないし、「出張先の自社工場で働く従業員の不満を知らせること」かもしれない。そこまで踏み込んでこそ、はじめて真の目的になりうるのです。

加えて、読み手を把握しておくことも大切なポイントです。「暗闇に誰かがいますから、なにかを話してください」と言われたところで、そうできるでしょうか? 相手が誰なのかもわからないのですから、なにをどう話せばいいのかわからなくて当然です。でも、話す相手が子どもだとかおじいちゃんだとかいうふうにわかれば、話す内容や口調もなんとなく絞れてきます。

文章もそれと同じことです。役員なのか上司なのか、あるいは同僚、取引先の担当者なのか、書くべき文章の読み手を意識する。そうして、誰に対してなにを伝えるべきなのか」という真の目的と読み手さえ見えれば、書くための材料となる素材をしっかりと集めて整理し、あとは書くだけ。本当は難しいことではないのです。

上阪徹さんインタビュー「文章が下手な人に欠けていること」02

小学生のときの「作文」のイメージを払拭する

しかし、きちんと考えてみれば難しくないと思えるこのことを、実際にはできない人が意外と多いようです。その一因に義務教育における作文の課題があるのではないかと私は見ています。

思い返してみると、作文の課題は読書感想文など誰に向けてなんのために書くのかがたいていわからないものですよね。そのイメージのまま、なんの目的も読み手も見えていない状態でパソコンの前に座ったところで、小学生のときと同じようにただ悶々とするだけ。文章を書けるわけもありません。

まずは作文のイメージを払拭しましょう。ビジネス文書においては、読書感想文コンクールで入賞するようなものを求められているわけではありません。ビジネスパーソンにとっての文章はただの伝達手段であり、ツールのひとつにすぎないのです。

そのツールをもって誰に対してなにをすべきか、誰からなにを求められているのかということさえ認識できれば、ツールの使い方も自然に見えてくるでしょう。

上阪徹さんインタビュー「文章が下手な人に欠けていること」03

読み手のことを考える「サービス精神」こそが最重要

真の目的と読み手が見えないまま文章を書いたとしたらどうなるのか。ひとことで言うと、「的外れの文章」ができあがります。それでは上司から差し戻されることもあれば、クライアントにあきれられてしまうこともあるでしょう。そんなことでは、周囲からの信頼や評価が下がっていくだけです。

では、どうすれば的外れの文章になることを避けられるのか? それには、真の目的と読み手を意識することはもちろんですが、「お手本」をたくさん読むことです。

上司にレポートを差し戻されたなら、過去に上司が評価した先輩のレポートを見せてもらえばいいし、同僚や後輩のレポートでも、「これ、いいな!」と思ったものはストックする。そのようにして、どういう文章が正解なのかを理解しなければ、正解の文章はいつになっても書けません

私は先ほどから真の目的と読み手への意識についてお伝えしていますが、その意識とは、「サービス精神」と言えるのかもしれません。技術的にはどんなに優れている文章であっても、読み手が求めてもいない内容だったとしたらどうでしょう? それこそ的外れの文章となり、読み手を満足させることは不可能です。その要因とは、やはりサービス精神の欠如なのだと思います。

もちろん、サービス精神が重要となるのはレポートといった文書に限りません。文章が苦手だという人だって、日々のメールにおいては少なからず読み手のことを考えてなるべくわかりやすく相手が求める内容を書こうと努めているはずです。ビジネスにおける文章は、わかりやすさが一番。そのサービス精神を、あらゆる文章を書くときに発揮することが、なにより大切なのです。

上阪徹さんインタビュー「文章が下手な人に欠けていること」04

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【プロフィール】
上阪徹(うえさか・とおる)
1966年5月11日生まれ、兵庫県出身。ブックライター。1989年、早稲田大学商学部卒。アパレルメーカーのワールド、リクルートグループなどを経て、1994年よりフリーランスに。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに、雑誌や書籍などで幅広く執筆やインタビューを手がける。寄稿している主な媒体は『GOETHE』(幻冬舎)、『AERA』(朝日新聞出版)、『週刊現代』『現代ビジネス』(講談社)、『ForbesJAPAN』(リンクタイズ)、『リクナビNEXTジャーナル』(リクルート)、『理念と経営』(コスモ教育出版)等。『メモ活』(学研プラス)、『職業、挑戦者 澤田貴司が初めて語る「ファミマ改革」』(東洋経済新報社)、『サイバーエージェント 突き抜けたリーダーが育つしくみ』(日本能率協会マネジメントセンター)、『人生で一番大切なのに誰も教えてくれない 幸せになる技術』(PHP研究所)、『プロの時間術 大人の時間割を使えば、仕事が3倍速くなる』(方丈社)、『これなら書ける! 大人の文章講座』(筑摩書房)、『マイクロソフト 再始動する最強企業』(ダイヤモンド社)、『企画書は10分で書きなさい』(方丈社)など著書多数。他の著者の本を取材して書き上げるブックライター作品も80冊以上にのぼる。累計40万部のベストセラーになった『プロ論。』(徳間書店)などインタビュー数も多い。近年は、講演活動の他、「上阪徹のブックライター塾」を開講するなど活躍の場を広げている。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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