会議の直前、クライアント訪問の直前、プレゼンの5分前。
「焦るな、落ち着け」と自分に言い聞かせながらも、手のひらに汗をかき、頭が真っ白になるような感覚に陥ったことはないでしょうか。
焦りや緊張で本来の実力が出せなかった——それは単なる「性格」や「慣れ」の問題ではありません。 専門家は、「自律神経の乱れ」がこうしたパフォーマンス低下に深く関与していると述べています。*1
この記事では、自律神経のメカニズムとパフォーマンスの関係、ビジネスパーソンが即実践できる「焦りや緊張に強くなる行動習慣」を解説します。
焦り・緊張でパフォーマンスが低下する理由
「自分はこんなに仕事ができない人間だったかな……?」
いつもの自分らしくない日を過ごし、仕事での不調を感じたなら、ちょっと見方を変えてみてください。
その失敗は、能力の問題ではなく、自律神経の乱れによる影響かもしれません。
順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は、焦り・不安・恐怖は交感神経を高まらせるので、血流が乱れて呼吸が浅くなり、脳の働きを低下させると指摘します。*1
つまり問題は、過剰な交感神経の興奮によって、自律神経のバランスが崩れ、「実力を発揮できない状態」に陥ることなのです。
自律神経のメカニズムとパフォーマンスの関係
では、どんな状態が理想的なのでしょう?
まず自律神経には、「交感神経」と「副交感神経」という、ふたつの神経があります。*1
- 交感神経:「緊張」や「興奮」(活動モード)
- 副交感神経:「余裕」や「安心」(休息モード)
先述したように、過剰な交感神経の高まりが問題であれば、副交感神経を優位にすれば問題は解決しそうです。
――が、
正しく言えば、「両方が高まっている状態」こそが理想的だといいます。適度な緊張とリラックスのバランスがとれたときこそ、人はベストパフォーマンス(本当の実力)を発揮できるのです。*1
なぜならば、どちらも高い状態になると、その時々の「活動すべきタイミングで交感神経がしっかり働き、休息すべきタイミングで副交感神経が優位になる、ベストな状態」になるから。*2
仕事で十分に力を発揮したいなら、ふたつの自律神経にバランスよく働いてもらうことが大切です。
自律神経から見直すパフォーマンスUP術
自律神経のバランスを整える方法は、ご存知の方は多いかもしれません。今回は、そのなかでも「仕事の前後や合間に取り入れられる効果的な方法」を取り揃えてみました。
1.「30分前行動」
前出の小林氏が強くすすめるのが「30分前行動」です。30分の余裕をもつことで、過度な緊張感・焦りに追い詰められないようにするためです。*1
たとえば、緊張で交感神経が活性化しやすい会議の日やプレゼンの日などに、30分の余裕をもつことで副交感神経が高まり、バランスが整いやすくなるでしょう。
2. 「長生き呼吸法」
自律神経のバランスを整える方法として、小林氏が考案した呼吸法です。やり方は以下のとおり。*3
- ① 肋骨の下をつかむように両手をお腹の横に置く
- ② 口から6秒かけて息を吐きながら上体をゆっくり前に倒す(両手でグーッと中央に力を入れる)
- ③ 背中を反らして鼻から3秒かけて息を吸う
(両手の力をゆるめる)
2. 「仕事の合間運動」
運動の最中は交感神経が優位になり、運動後は副交感神経が優位になるといいます。つまり、「心拍数増・血管収縮」したあと「筋肉がゆるんで血管が拡張」するので、血流が促進されて双方がベストな状態になります。*3
以下の運動が主に推奨されています。
- ウォーキング
- 階段の上り下り
- ストレッチ
緊張してしまったら?
そうは言っても緊張はゼロになりません。 そこで、緊張してしまった際にサッと使える対処法もご紹介しておきます(精神科医の奥田弘美氏監修)。*4
- 緊張を相手に伝える:「少し緊張しています」と言ってしまうことで、気持ちが解放されて落ち着きを取り戻しやすい。
逆に、緊張を隠そうとすると、ますます緊張してしまう。 - 背中・首まわりを動かす:背中と首まわりは自律神経と深い関わりがあるため、椅子に座って伸ばしたり、首や肩をゆっくり回したりすると効果的。
緊張する日の理想的な過ごし方とは?
では最後に、仕事で緊張する日の理想的な過ごし方をシミュレーションしてみました。
前章で取り上げていない、対処法なども加えておりますので、ちょっとしたヒントにしてください。*3
📅 緊張する日のスケジュール例
***
今回お伝えしたように、仕事で実力を発揮できないときは、自律神経のバランスが乱れて起こる場合があります。
理想は、交感神経と副交感神経の両方が高まった状態。
そのためには、「30分前行動」や「呼吸法」「ストレッチ」など、ちょっとした習慣がとても効果的です。もし緊張してしまっても、正直に打ち明けたり、首を回したりするだけで、身体はしっかりと応えてくれます。
できるところから、ぜひ少しずつ取り入れてみてください。
*1: サライ.jp|焦りや緊張が原因なのか、慌てて失敗することが多い人の処方箋【不摂生でも病気にならない人の習慣】
*2: くすりと健康の情報局(第一三共ヘルスケア)|自律神経の“バランス”を保つ生活のコツ
*3: くすりと健康の情報局(第一三共ヘルスケア)|自律神経を積極的にコントロールする方法とは?
*4: 全薬工業株式会社|仕事で過度な緊張に悩む人必見!緊張をほぐす効果的な方法やポイントとは?
STUDY HACKER 編集部
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