不安を抱いていることはマイナスではない。逆転の発想で日々の学びにより集中できる【齋藤孝『カリスマの言葉』第10回】

以前から興味があったというような理由で、いわば趣味としてなにかを学んでいる人であったり、先行きが不安なためにスキルアップやキャリアアップを目指して勉強に励んでいたりするという人も多いはずです。

不安とは、文字どおり安らいでいない状態です。不安を抱えたまま日々を過ごすことは、心に多大なストレスを与えます。なんとかその不安を払拭する方法はないものでしょうか。明治大学文学部教授の齋藤孝さんは、こんな思考法を提案します。

【格言】 「危機感」は上手に持つ。 それによって不安から解放されます

いまさらわたしが述べるまでもなく、現代社会においては、すべての人々がグローバル競争にさらされています。さらにこれからは、AI(人工知能)の発達によってビジネスのあり方も様変わりするでしょう。

「寄らば大樹の陰」で、大企業に就職しても一生安泰などということはあり得ません。あなたがどんな仕事についているにせよ、学び続けることで自らをつねに刷新していかねばならない状況に置かれているのです。正直なところ、相当に不安なのではありませんか?

それは大変なことのようですが、条件はみな同じです。それに、「不安を感じている」ということは気づいているということ。それだけスタートを早く切れているとも言えるのですから、自信を持っていいのです。

バブルの終焉を迎えて以来、日本のビジネス環境は好況とは言いがたいものがあります。しかし、だからこそ危機感も抱けるし、学びの重要性にも気づけるのです。

どんな状況も、あなたの心の力で好転させてしまいましょう。

【プロフィール】 齋藤孝(さいとう・たかし) 明治大学文学部教授。1960年、静岡県に生まれる。東京大学法学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士過程を経て、現職に至る。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞、2002年新語・流行語大賞ベスト10、草思社)がシリーズ260万部のベストセラーになり日本語ブームをつくった。著書には『読書力』『コミュニケーション力』『新しい学力』(岩波新書)、『理想の国語教科書』(文藝春秋)、『質問力』『現代語訳学問のすすめ』(筑摩書房)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『語彙力こそが教養である』『文脈力こそが知性である』(角川新書)などがある。TBSテレビ「情報7daysニュースキャスター」など、テレビ出演も多数。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」の総合指導を行っている。著書累計出版部数は1000万部を超える。

Photo◎佐藤克秋

*** 齋藤孝さんの思考法は、かの有名な哲学者・ソクラテスが唱えた「無知の知」と同類のものです。「自分はなにも知らない」ということを自覚することから知への道は開ける――。単に「知らないこと」よりも、「知らないことを知らないまま平気でいること」のほうが罪深いということですね。

不安を感じているということは、「周囲に先んじているんだ」という発想の転換でその不安を軽減し、勉強や仕事に精進してください。

■齋藤孝さん『カリスマの言葉』はこちら ogsaito-ver1

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