「複雑な内容が頭に入ってこなくて、勉強のモチベーションが保てない」
「何度テキストを読んでも、一向に覚えられない」
「わからない」「覚えられない」という壁は、勉強している人の多くが直面するもの。何度テキストを読んでも、まとめノートをつくって復習をしても克服できず、諦めていませんか?
勉強内容が定着しない場合、情報の整理ができていない可能性があります。頭のなかがごちゃごちゃしたままでは、十分な理解や記憶定着がしづらいのです。
そこで本記事では、学習内容を整理するために「概念マッピング」をご提案します。情報を視覚的に整理することで、内容を理解し記憶しやすくする方法です。
基本的な作成手順と、デジタルツールの活用例もご紹介します。
概念マップとは何か、その学習効果
概念マップとは、コンセプトマップや概念地図法とも呼ばれる、記録方法のひとつです。石川県立大学生物資源環境学部 准教授の東村泰希氏は、概念マップを「現象や事物をあらわす『概念ラベル』同士を、規則性やルール『リンクワード』で結びつける作業」だと説明しています。*1
つまり、概念マップは専門用語や現象といった「概念ラベル」のつながりを明らかにして、情報を整理する方法なのです。さらに、完成したマップは「概念同士の関係性を一枚の紙の上にあたかも地図のように可視化」できるため、「新しい情報を既存の認知構造に組み込み関連づける」のに役立つといいます。*1
この効果は、アメリカの生理学会が行った実験でも実証されています。実験はブカラマンガ自治大学の医学生理学コースの学生を対象に行われ、概念マップをつくって勉強をした群は、普通に勉強をした群よりも問題解決試験の成績がよかったのです。*2
概念マップを取り入れれば、情報を視覚的に整理して、すでにある知識と結びつけながら学習内容を定着させられるはず。「覚えることが多すぎる」「内容が複雑で整理できない」といったときに活用できそうです。
概念マップの作成方法
筆者は現在Webデザインを勉強中ですが、慣れない用語が次々に出てきて覚えきれません。そこで、概念マップを使って情報を整理してみることにしました。
今回実践したのは、一般社団法人記憶工学研究所所長の池田義博氏が提案する「垂直方向」の概念マップ。「上に進めば抽象化、下に降りていけば具象化」するように、情報をつなげて書く方法です。*3
まずは、A4ルーズリーフを縦に使い、中心となる概念ラベルを書きます。筆者は使っているテキストの見出しから「Webサイト」という概念ラベルを抜き出しました。
池田氏によると「下位の方向に伸ばすのではなく、上位になる概念を上の方向に書き足して」もいいそうなので、あとから上にも書き足せるように余白をとりました。*3
このあと、勉強中に概念ラベルが出てきたら、中心の概念から線を伸ばして書き加えます。ノートの下に行くほど、具体的な情報になるように意識しました。
これで完成でもよいですが、今回はリンクワードを追加しました。概念ラベル同士をつなぐ線の上に、「どのようなつながりなのか」を書き加えます。*1
たとえば「~とは」「要素」「種類」など、関係性を明らかにできるようなリンクワードを書きました。完成した紙面は、以下のとおりです。
「概念ラベル」の関係性を視覚的にとらえられた
概念マップを見返すと、文章でノートをとっていたときよりも用語同士の関係性がわかりやすいと感じました。たとえば「ワードプレスとは」「CMSとは」などをバラバラに覚えるのではなく、「ワードプレスはCMSの一種で、CMSとは……」とマップ上でつながったことで視覚的にとらえやすくなったのです。そうすると、関係する用語や意味をまとめて記憶できた実感がありました。
概念マッピングにおすすめのツール2つ
今回は手書きで概念マップをつくりましたが、デジタルツールを活用するのもおすすめです。デジタルツールなら手軽にきれいなマップをつくれるため、より視覚的な概念マップになるでしょう。編集や管理がしやすい、おすすめのツールをふたつご紹介します。
1. CmapTools
CmapToolsは、概念マップをつくるためのソフトウェアです。世界の教育機関で使われている実績があり、個人でも無料で利用できます。iPad向けのアプリや、クラウドサービスも展開されています。*4
カナダにあるウォータールー大学の上級教育開発者マーク・モートン氏は、CmapToolsのメリットを次のように説明しています。*5
- クリック&ドラッグだけで概念ラベルを作成できる
- 画像やハイパーリンクも追加できる
- PC本体とクラウドのどちらでも保存できる
- 複数人で同時に共同編集ができる
- 概念ラベルの一部を非表示にできる
クリックやドラッグを使って、直感的に操作ができるのがCmapToolsの魅力。アカウント登録をすれば、ソフトウェアをインストールしなくても利用できるためはじめやすいでしょう。また、概念ラベルの一部を非表示にしておくことで、復習やテストにも活用できそうです。
2. MindMeister
MindMeisterは、おもにマインドマップをつくるためのクラウド型ツールですが、テキストどうしを線でつなげられるため概念マップの作成にも応用できます。
クリック&ドラッグで操作でき、画像やリンクの追加も簡単にできました。実際に、Webデザインに関する概念マップをつくってみると、次のようなマップが完成しました。
MindMeisterはクラウド型のサービスなので、ソフトウェアやアプリをインストールする必要がありません。ちなみに、CmapToolsと同じく概念ラベルを非表示にする機能もついています。モートン氏は、「大規模または複雑なコンセプトマップをつくるのに最適」だと述べています。*5
自分の使いやすそうなツールを選んで、概念マップの作成に活かしてみてください。
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複雑な概念がなかなか理解できずにつまずくことは、誰にでもあるはずです。そんなとき、諦めたりわかったつもりになったりせず、概念マップを試してみてください。情報を視覚的に整理すれば、難しいと感じていた内容も覚えやすくなるでしょう。
※引用の太字は編集部が施した
*1 石川県立大学|アクティブラーニング 具体例の紹介
*2 Hilda Leonor González,Alberto Pardo Palencia et al. (2008),|“Mediated learning experience and concept maps: a pedagogical tool for achieving meaningful learning in medical physiology students,” Advances in Physiology Education, Vol.32, No.4, pp.312-316.
*3 幻冬舎ゴールドオンライン|記憶は「アウトプット」する人が強い! 記憶王が教える暗記法
*4 Cmap|Cmap software
*5 University of Waterloo|Concept Mapping Tools
藤真唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。