悪い感情は書きなぐり、良かったことは3つ書き出す――“2つのノート習慣” で心を整理しよう

「エクスプレッシブ・ライティング」と「スリー・グッド・シングス」

「嫌なことが起きてイライラしている……」
「不安で頭がいっぱいだ……」
「理由ははっきりしないけれどもなんだか楽しくない……」

そんなとき、みなさんはどうしているでしょうか。何もしないままでは、その状態はなかなか好転していきませんよね。

そこでおすすめしたいのが、「紙に書く」という習慣です。何を紙に書くかによって効能も変わってきますが、ストレス軽減や自己肯定感アップといった効果が期待できますよ。今回は、2つの「紙に書く習慣」をご紹介しましょう。

【1】感情をそのまま書き出す「エクスプレッシブ・ライティング」

1980年代、アメリカの社会心理学者ジェームズ・ペネベーガー氏は、ストレス解消やうつ病治療用として、自分の感情を思いのままに書き出す「エクスプレッシブ・ライティング」を提唱しました。これは日本語では「筆記開示」とも言われており、文字通り、頭の中で感じていることやモヤモヤしていることを言語化して紙に書いていく手法です。

ペネベーガー氏は、数名の学生を被験者に、過去のトラウマとなった出来事を、1日15分程度・4日間連続で書かせるという実験を行ないました。その結果、彼らの健康状態が明らかによくなったのだそう。アメリカでストレスを研究するパメラ・ピーク氏は、感情を紙に書き出すことで、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑えられると述べています。思考の言語化が、心身に平穏を与えてくれるのです。

また、精神科医の大野裕氏も、特に精神的に疲れているようなときは思考がネガティブに陥りがちだからこそ、自分の気持ちを書き出して客観視する必要があると説きます。漠然とした不安を紙に書き出してみると、それが意外と “悪い思い込み” に過ぎなかったことに気づけるのとのこと。そのようにして、マイナス思考のスパイラルから脱出できるのだといいます。

やり方の手順

メンタリストのDaiGo氏によれば、自分が感じたことを “素直” に書き出すのがポイントなのだそう。無理に正しい文章にまとめようとする必要はなく、思い浮かんだままストレートに書いてしまってかまいません

同時に、感情はより具体的に書き出すべきとのこと。たとえば「悲しい」で終わらせるのではなく、いつどんな場面に遭遇したときに沸き起こった感情なのか、どの程度の悲しさなのかなど、事細かく表現したほうが効果は高まるそうです。

例を示すと、以下のような具合になります。

エクスプレッシブ・ライティングの例

(※内容)
記事ネタに行き詰まっている……本やネットを使って片っ端からリサーチしてみたが、イマイチ……。書店にも出かけてみて、数冊の本を買って家で読んだが、なかなか思いつかず。本に支払ったお金がもったいない気がする。結局、今日は原稿を提出できなかった。仕事が遅れたせいで、来週は忙しくなりそうな予感。さて、どうすればいいだろうか……。
○家で夕食を作ろうと思ったが、材料がほとんどなかった。かといって今日は気温が低かったので、外に買い物に行くのも面倒で、結局賞味期限切れのパンを焼いて食べてしまった。味に問題はなかったけれど、大丈夫かな……? 数日前に微熱を出したばかりだから、ぶり返さないといいが。
○しかも、観たかったテレビ番組を見逃していたことにさっき気づいた。いろんな番組で番宣していたから絶対に観ようと決めていたのに、うっかり忘れていたみたい。そういえば最近、買い物に行っても、買ってこようと決めたものを1つか2つは必ず忘れてしまっている。あまりメモを取らない自分も悪いが、なんだかうまくいかないな……。

【2】その日あった “よかったこと” を3つ書き出す「スリー・グッド・シングス」

1で紹介した「エクスプレッシブ・ライティング」は、どちらかというとネガティブな感情や出来事にフォーカスするものでした。一方で、ポジティブな出来事にフォーカスする手法もあります。それが「スリー・グッド・シングス」です。

これは、1日の寝る直前に「その日にあった “よかったこと” を3つ書き出す」というもの。提唱したのは、アメリカの心理学者マーティン・セリグマン氏です。

実際にセリグマン氏が行なった実験によると、約60人を対象に「就寝前にいいことを3つ書き出す」という行為を1週間続けてもらったところ、ほぼ全員の「幸福度」が向上し、「うつの症候」が減少したのだそう。また、独立行政法人経済産業研究所の関沢洋一氏らの研究では、週2回のスリー・グッド・シングスを4週間続けると、主体性や意欲にもつながる自己肯定感が高まることも確認されています。

たとえ嫌なことがあった1日でも、あえて “よかったこと” に注目することで、気持ちをポジティブに転換させていけるのです。

やり方の手順

「スリー・グッド・シングス」で書く“よかったこと” は、基本的には何でもかまいません。「いつもより少し早めに家を出たら、電車で座席に座れた」とか「後輩に挨拶されて朝から気分が爽快になった」とか、些細だと思えることも充分 “よかったこと” に該当します

私たち人間の感情が、ネガティブな方向に行きがちだということは、先に述べたとおり。だからこそ、日頃から “よかったこと” や “嬉しかったこと” や “楽しかったこと” を探す意識を持っておきましょう。夜に「スリー・グッド・シングス」を書く出す際に、悩むことが少なくなるはずです。

スリー・グッド・シングスの例

(※内容)
【1】久しぶりに洋服屋に行ったら、ピンと来るものがあって即購入。良い買い物ができてストレスが吹っ飛んだ!
【2】自分が書いた記事がSNSでものすごくシェアされていてびっくり。励みになる!
【3】昔なじみの友人に会って近況報告会ができて楽しかった。

気持ちを書き出すことは「感情の棚卸し」

ここまで2つの「紙に書く習慣」をご紹介しました。どちらがあなたに適しているかは、実際にやってみないとわからないかもしれませんが……「ネガティブ状態からまずは脱したい人」はエクスプレッシブ・ライティング、それがある程度できていて「よりポジティブになりたい人」はスリー・グッド・シングスを実践するといいかもしれません。

明治大学教授の齋藤孝氏は、マイナス思考を紙に書き出して外から眺めることを「感情の棚卸し」と表現しています。感情が頭の中を渦巻いているだけでは、何も見えません。自分は何にイライラしていたのか、なぜ悲しんでいたのかなどを言語化することで、初めて客観視や原因分析ができるようになり、感情に落ち着きを取り戻せます。怒りや不安、悲しみにとらわれがちな人は、ぜひエクスプレッシブ・ライティングを試してみましょう。

加えて、脳科学者の茂木健一郎氏は「自分が幸せであることに “気がつく” のが大切である」と語っています。日常生活を思い返してみれば、どんな人にも些細な幸せは存在しているはずです。それに気づかず幸福を感じられないのは、単にその幸せを見ようとしていないだけ。自分にとっての幸せを発見・再確認するという意味でも、スリー・グッド・シングスを実践する価値はあるといえそうです。

***
アナログな「紙に書く」という習慣、意外と侮れません。ご紹介した方法をぜひ試してみてください。

(参考)
日経ビジネス|手を動かし、「書く瞑想」をしよう
healthy women|Reduce Stress by Journaling
THE21オンライン|「漠然とした不安」は書いて整理しよう
東洋経済オンライン|「感情を紙に書く」習慣でストレスは減らせる
プレジデント・オンライン|悲観症克服:就寝前の「3つのよいこと」メモ習慣
独立行政法人経済産業研究所|良いことを毎日3つ書くと幸せになれるか
KINJO DAYS|前向きな気持ちになりたい!ちょっとした習慣で「ポジティブ思考」になる方法
幻冬舎plus|イライラしたときは「紙に書き出す」のが最高の解消法
プレジデント・オンライン|幸せとは気付くことである

【ライタープロフィール】
亀谷哲弘
大学卒業後、一般企業に就職するも執筆業に携わりたいという夢を捨てきれず、ライター養成所で学ぶ。養成所卒業後にライター活動を開始し、スポーツ、エンタメ、政治に関する書籍を刊行。今後は書籍執筆で学んだスキルをWEBで活用することを目標としている。

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