「何を書いたかわからない」を一発解消。ノートの隅に『ボックス』を置くだけの簡単メモ術

右上のボックスに疑問・質問が書きこまれたノート

パソコンやスマートフォンでの記録や思考展開が一般化した現代。

それでもペンや鉛筆などでメモをとることが多いビジネスパーソンは、手書きの効果をよく知る方かもしれません。

手で書くという行為は「複数の脳領域を活性化させ、記憶力や認知機能の向上につながる」といいます。*1

しかし、書くことに熱中しすぎると、自分で書いたノートでも「何が書かれているのかわからないノート」になってしまう可能性があります。

そうしたなか、作業療法士の菅原洋平氏が画期的なアイデアを与えてくれました。 それは、ノートの隅に「ボックス」をつくるという発想です。*2

これにより、あなたのノートは「文字の物置状態」から一変し、「情報と思考を俯瞰できる保管庫」として機能するはずです。

菅原氏によるアイデアの拡大と、筆者の実践を交えてお届けしましょう。

ノートがカオスになる理由

ノートは単純な記録のほか、自分の思考を整理したり、理解を深めたり、アイデアを書き留めて発展させたりするもの。

つまり、自分以外の誰かに見せることはありません。

そうした意味合いから、「自分さえ読めればいいのでノートをきれいに書く必要はない」といった意見が多数あります。

しかし、自分でさえ何を書いているのかわからない状態になるのは問題外。それだと、誰のものでもないノートになってしまいます。

ノートの中身がカオスになってしまう原因は、以下のとおりいくつか考えられます。

  • タイトルやテーマ、情報元が記載されていない
  • 情報が過度に入り混じっている
  • 板書をそのまま書き写しすぎ
  • 細かく書きすぎ
  • 余白がなくギリギリまで書かれている

この「どれか」というより、複数の要素が当てはまる場合が多いのではないでしょうか。

ゴチャゴチャに書かれた自分のノートを見て、思わず「なんじゃこり?」と言っているビジネスパーソン

ノートの「保管箱」でカオス回避

そうしたなか、作業療法士の菅原洋平氏がこんなヒントをくれました。*2

 
 
 

あれこれ書きすぎて、後から見返したら「なんじゃこりゃ……」。

そんな人は、すぐ必要でない情報や、なんとなく書いておきたいことが頭に浮かんだら、ページの隅に「保留箱」のスペースを用意して書き入れましょう。

しかも、ノート空間で「保留箱」まで “手を移動させて書く動作” は、それがエピソードとなって記憶に残りやすくなるといいます。*2

ノートが整理できて、記憶力もアップするなら一石二鳥で申し分ありません。

いざ実践です。

ノート「ボックス」活用アイデア

じつは、この実践に際し、いい着想なので「保留箱だけではもったいない」という考えが浮かんでいました。そこで生成AIの助けを借り、もう少し活用範囲を広げてみることにしたのです。

以下は、生成AIが考えてくれた「ノートの隅のボックス」アイデアです。

【情報整理系】
疑問・質問ボックス - 途中で浮かんだ疑問や確認したいこと
あとで調べるボックス - 詳細を調べる必要がある用語や情報
関連情報ボックス - 本題とは別だけど関連する情報
補足メモボックス - 本文に入れると冗長になる詳細情報
【思考整理系】
アイデアのタネボックス - 突然浮かんだひらめきや発想
別角度ボックス - 違う視点から見た意見や考え
反対意見ボックス - 批判的な視点や懸念点
応用例ボックス - 他の場面での活用可能性
【行動管理系】
ToDo派生ボックス - 会議中に思いついた別のタスク
フォローアップボックス - 後日確認・連絡すべきこと
改善案ボックス - プロセスや方法の改善アイデア
【感情・気づき系】
直感ボックス - 論理的でないけど気になる感覚
学びボックス - 気づきや教訓になりそうなこと

このなかから筆者は、以下のふたつを選択。

  • 「疑問・質問ボックス」
  • 「アイデアのタネボックス」

新しい情報に対して「次から次へと疑問が浮かび、ハッキリさせないとモヤモヤを引きずってしまう」自分のクセと、「仕事に活かしたい」という気持ちを考慮しました。

ノート「ボックス」のレイアウト

次にノートのレイアウトを決めます。

筆者は右利きなので、疑問が浮かんだらサッと右上に書き込むのがよさそうです。したがって、「疑問・質問ボックス」は片ページの右上に。

一方、創造的な発想は特別なスペース感が演出できるよう、あえて利き手から離れた場所がいいと感じました。したがって、「アイデアのタネボックス」は片ページの左下です。

以下のとらえ方をすると、迷わず仕分けられるかもしれません。

  • 右上の「疑問・質問ボックス」
    →すぐ処理系

  • 左下の「アイデアのタネボックス」
    →じっくり育成系

こうしてレイアウトが決定しました。

ノート片ページの右上に「疑問・質問ボックス」、左下に「アイデアのタネボックス」 を置いた場合の見開きレイアウト

ちなみに今回は、株式会社中村印刷所の脳スッキリノートA4判を使用。

ノートが水平に開く特許技術が施され、集中力への効果を58%高めてくれるという特殊紙(OKシナプス)を使用しています。

株式会社中村印刷所の脳スッキリノートA4判

画像の引用元 *3

ノート「ボックス」の実践

では、さっそく始めてみましょう。題材は「完璧主義の研究」です。*4 *5 *6 *7

中央:メインメモ

メインとなるこの場所には、完璧主義研究の概要と、ポイントなどを書き込んでいきます(以下ノートの中身)。

  • 【Hewitt & Flett (1991)】完璧主義3次元
    自己志向的:自分→自分(自分自身に完全を求める)
    他者志向的:自分→他者(他者に完全であることを求める)  
    社会規定的:他者→自分(まわりから完全であることを求められている意識)※最も問題

  • 【Madigan (2019)】学業成績との関係
    完璧主義的努力 → 成績UP (r=.24)
    完璧主義的懸念 → 成績DOWN (r=-.08) ~など

メインエリアに文字が書きこまれたノート

右上:疑問・質問ボックス

そのなかで生じた疑問を右上に書き込みます(以下ノートの中身)。

  • r値(相関係数)0.24って効果量としてはどの程度?
  • 日本での完璧主義研究データは?
  • 完璧主義的な努力(perfectionistic strivings)の具体的測定項目は?
  • 社会規定的完璧主義の年代別傾向は?
  • メタ分析の対象期間(何年分?)
  • 完璧主義的努力―追及?
    完璧主義的懸念―不安?

右上のボックスに疑問・質問が書きこまれたノート

左下:アイデアのタネボックス

アイデアの種は、思いつくまま左下のボックスに書き込みました。筆者の場合は記事ネタです(以下ノートの中身)。

  • 良い完璧主義 vs 悪い完璧主義
  • ふたつの完璧主義が生息する場所
  • 一流になるための「完璧主義的努力」
  • これからは「完璧主義」も悪くない!?

左下のアイデアが書きこまれた場所

このように進めた結果、大きな変化を感じることができました。

ノート「ボックス」を実践した感想

大きな変化とは――つまり、「情報の整理」以上のことです。

その内容をまとめ、最後に今回の実践で感じたこと、気づいたことなどをご紹介しましょう。

「ボックス」を活用したノートの完成版

じつはこれまで、思考の交通渋滞がしばしば起こっていました。

たとえばこんな感じです。

  • メインの内容を書いている途中で別のことを思いつく
  • 「あれも大事、これも気になる」で集中できない

ところが――

思考の「置き場所」をちょっと設けただけで、こんなことが起こったのです。

  • 「あとで調べる」安心感でいまに集中できる。
  • 「応用アイデアをいったん保管」でアイデアの取りこぼしを気にせず作業に専念できる。

    📌 結果、認知負荷の軽減にもなって、ストレスが減る

つまり、ノートの隅にボックスを置くと「情報の整理」ができ、「思考プロセスの最適化」までも行なえる、といったところです。

ぜひ、みなさまも一度お試しください。

***
最初は単純に「おもしろいノートの整理術」と考えていましたが、これは単なる整理術ではなく、脳の働き方を変えるようなノート術かもしれません。

しかも、ただ、線を引いて書き分けるだけ……!

次回は、ほかのボックスアイデアも試してみようと思います。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。

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    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
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