先延ばし癖が直る! 終わってないのに “できた” と書く「未来日記」が勉強にかなり使える。

「未来日記」を勉強に活用してみた01

「勉強の計画を立てても、怠け癖のせいで行動できない……」
「参考書を開くのがおっくう。資格の勉強を始めた当初はやる気があったのに……」

このような「勉強が思うようにはかどらない」という問題は、“行動できている自分” を想像すれば解決できるかもしれません。そのためにおすすめの方法が、「未来日記」です。

今回の記事では、未来日記を勉強に活用する効果を、筆者の実践例も合わせてご紹介しましょう。

「未来日記」とは

「未来日記」とは、その日にやるべきことを、日記形式で一日の始めに書き出すというものです。特徴は、あたかも達成した事実があるかのように、「~~だった」と過去形で書くこと。これにより、日記に書いた通りの行動を実現することを狙います。

スピリチュアルな印象を抱くかもしれませんが、未来日記は、「書き出したこと」と「行動」を一致させようとする人間心理を利用した手法です。

「矛盾したふたつ以上の認知が起こったときに生じる不快感」のことを「認知的不協和」と呼び、認知的不協和が発生すると人はそれを解消しようとする――こういった理論が、米国の心理学者レオン・フェスティンガー氏によって提唱されました。

たとえば、公衆トイレなどで「きれいに使っていただき、ありがとうございます」という張り紙を見かけたことはありませんか? 

精神科医の樺沢紫苑氏によれば、これは認知的不協和を活用したものだそう。トイレをきれいに使用しないと、張り紙の文言と矛盾が生じてしまいますよね。その矛盾を避けようとして、利用者は「きれいに使おう」という気持ちになるのだとか。

未来日記でも、未達成のことをあたかも達成した事実のように書くことで、認知的不協和が発生します。そのため、日記の内容と行動を一致させようとする心理が働くというわけなのです。

「未来日記」を勉強に活用してみた02

未来日記は、ビジネスパーソンの朝活に活用されています。その一例が、株式会社朝6時代表取締役社長で “朝活の一人者” 池田千恵氏がすすめる、「朝の3行日記」。「こうだったらいいな」という理想の一日を、朝の時点で、完了形で書くというものです。

池田氏は、朝の3行日記には「プライミング効果」が期待できると説明します。プライミング効果とは、あらかじめ受けた刺激に行動が影響されるというもの。つまり、これから始まる一日に対し “いい予感” をもてば、おのずとポジティブな行動をとるようになるのです。

朝に書く未来日記は、最高の一日を過ごすために有効なのですね。

「未来日記」を勉強に活用してみた03

 

未来日記を「勉強に活用」することで期待できる効果とは

では、未来日記を勉強に活用すると、どのような効果が期待できるのでしょうか。

初期のモチベーションを取り戻せる

まず、勉強を開始した頃のモチベーションを取り戻す効果が期待できます。

ここでご紹介したいのが、東京大学大学院に合格したイラストレーター・ただっち氏のエピソードです。

ただっち氏は大学院受験に向け勉強していた頃、毎日午前中に「こうなりたい」と書く “願望ノート” をつける習慣があったのだとか。「東京大学大学院〇〇研究科に合格した」「試験本番で得意な分野が出題された」のように、理想を過去形で書いていたそうなので、未来日記と同じ形式ですね。

すでに叶ったかのように願望を言語化していくと、「勉強をやろう」と決心したときのわくわくする高揚感が生じる――そうただっち氏は言います。理想を過去形で言語化することは、勉強を始めた1日めのやる気を意図的に生じさせるのに有効なのだそうです。

目標を忘れずにいられる

また、“過去形” で書くことは、目標を忘れないためにも効果的です。

『神メンタル 「心が強い人」の人生は思い通り』の著者でビジネスコンサルタントの星渉氏によれば、「~したい」と書くと、脳は「まだ~していない」と認識してしまうのだとか。

反対に「~だった」と過去形で書き、さらにその文字を見続ければ、自然とそのように行動する自分を想像するようになると言います。

勉強へのやる気を失いつつある。勉強のToDoリストを作成しても忘れがち——そんな人にこそ活用してほしいのが、未来日記なのです。

「未来日記」を勉強に活用してみた04

未来日記を勉強に活用してみた

未来日記の効果を感じるために、筆者も実際に1週間、未来日記を実践してみました。詳しい手順とともに、実践の経過をご紹介しましょう。

【1】やるべきことをリストアップ

まず朝に、その日のToDoをリストアップします。筆者は左に勉強のタスク、右に仕事や生活のタスクと分けて書きました。

「未来日記」を勉強に活用してみた05

【2】スケジューリング

次に、やるべきことのスケジュールを決めましょう。やるべきToDoの時間配分を具体的に決めれば、一日全体を通しての流れがわかります。

「未来日記」を勉強に活用してみた06

【3】未来日記

スケジューリングの下に未来日記を “過去形” で書きます。今回は「勉強の効果」があるのか検証するために、勉強項目だけに絞りました。

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通常なら、勉強は朝の1時間のみなのですが、今回は寝る前に暗記物の勉強を追加することとしました。じつは、これまでに何度も、就寝前の暗記勉強を習慣化しようと思ったことがありました。ですがいつも眠気に負けてしまい、習慣化に失敗し続けていたのです。未来日記で新しい習慣が身につくのか、検証してみます。

  • 1~4日め

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1~4日めは、スケジュール通りに勉強と読書をすることができました。4日めの朝は起きられず、朝の勉強を夜へ変更。普段なら、夜に変更したこと自体を忘れがちなのですが、この日は未来日記のとおりに机に向かえました。

  • 5~7日め

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「未来日記」を勉強に活用してみた11

5~7日めには、就寝前の暗記という新しい習慣に慣れ始めました。体調不良だった7日め以外は、スケジュール通りに勉強を実行できましたよ。

「勉強版・未来日記」を1週間やってみてわかったこと

未来日記を勉強に活用してみると、いくつかの嬉しい効果を感じられました。

【1】勉強の予定を忘れずにこなせた

まず初めに実感したのが、「今日すべき勉強」を覚えやすいということ。

実践期間には、通常の朝勉強を夜に変更したり、夜勉強の習慣化にチャレンジしたりしました。普段の筆者なら、こういったイレギュラーなことは忘れてしまいがち……。ところが朝に未来日記を書くと、その日のToDoが印象に残り、確実に机に向かうことができました。

未来日記は、先延ばし癖がある人や、勉強を習慣化したい人が活用すると、効果が期待できそうです。

【2】勉強を始めるときのモチベーションが変わった

次に感じたのは、モチベーション面。筆者は以前から朝に勉強する習慣があったとはいえ、気分によってはおっくうな気持ちで問題集を広げることもありました。

ですが、未来日記を書いてみると、勉強に取りかかるときの精神的な負担が軽くなったように感じたのです。

これは、過去形で書いたことで「もうこれくらいは達成できている」と錯覚し、心に余裕が生まれたおかげだと筆者は分析しました。その余裕が、勉強を始めるモチベーションに変わったのだと思います。

【3】“これができたらいいな” という目標を書くのもポイント

上記のような嬉しい効果を感じた一方で、工夫が必要だと感じるところもありました。それは、しだいに未来日記が単調になってしまうという点。

これについては、その日の勉強予定を過去形で書くだけでなく、前出のただっち氏の願望ノートのように、“これができたらいいな” という目標を書くことが、モチベーションを引き出すうえで大切だと感じました。

「演習問題で8割正答した」「昨日聞き取れなかったスピーチが理解できた」など、あなたの気分が高まる目標をセットで書いておけば、より効果が期待できるはずですよ。

***
先延ばし、モチベーションの低下……。こうした勉強によくある悩みを解消してくれるのが、「未来日記」です。あなたのたどり着きたい目標をイメージしながら、ぜひ朝に未来日記を書いてみてくださいね。

(参考)
藤沢優月(2011),『未来日記 心の中の本当のあなたと出会う日記』, 武田ランダムハウスジャパン.
佐藤富雄(2003),『あなたの夢をかなえる「未来日記」 “思い通りの人生”を手に入れる14日間トレーニング』, PHP研究所.
小林惠智(2002), 『一日5分奇跡を起こす4行日記―成功者になる!「未来日記」のつくり方』, オーエス出版.
@DIME|知ってる?マーケティングの世界でも使われる言葉「認知的不協和」の意味
PRESIDENT Online|高価な買い物を無意識に正当化するワケ
特選街web|【認知的不協和とは】片付けられない人が簡単に片づけ始める「魔法の言葉」
NIKKEI STYLE|朝3行日記で育む なりたい自分イメージトレーニング
池田千恵 公式サイト|朝活したい方必見!「朝日記」の書き方と効果、メリットを紹介
PRESIDENT Online|「東大院に合格した」とノートに書いたら、たった3カ月で本当に合格した
STUDY HACKER|思考は現実化するからこそ「無理だ」と思うなかれ。“使う言葉” を変えれば人生はうまくいく

【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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