勉強をやり抜くには “最小限” 頑張るだけでいい。手間も忍耐もいらない「4つの勉強法」

最小限の頑張りで勉強をやり抜く人が実践している4つのこと01

「難易度が高い資格試験に合格できる人は、よほど忍耐強いのだろう」
「試験でいつも高成績なあの人は、相当頑張っているに違いない」
このように「勉強には特別な努力が必要だ」と考えるせいで苦手意識を抱き、学ぶことを遠ざけてしまっているのなら、とてももったいないことです。

勉強のスペシャリストたちは、最小限の頑張りでも、勉強はやり方次第で結果を出せると説きます。ではさっそく、彼らが言うやり方をご紹介しましょう。

【1】最初のハードルは低くする

勉強の習慣がこれまでなかったのに「毎日2時間勉強する」と決めてしまう。
初心者なのに、合格率10%前後の簿記1級に挑んでしまう。

勉強で挫折する人には、こうした高すぎるハードルを課す傾向がある――。そう注意喚起するのは、『努力が勝手に続いてしまう』著者で、ケンブリッジ大学大学院で心理学を専攻し修士課程を修了した塚本亮氏です。

初めから高いレベルを目指しても、挫折を繰り返してむしろ遠回りになるだけ。最小限の頑張りで勉強をやり抜こうと思ったら、「自分が続けられること」から始め、少しずつ「できること」のレベルを上げていくのがコツだと塚本氏は言います。教育心理学ではこのやり方を「スキャフォールディング」といい、ケンブリッジ大学の認知発達心理学者だったデイビッド・ホワイトブレッド氏も推奨した方法なのだとか。

先ほどの例なら、次のような感じで勉強をしてみてください。

  • 「毎日2時間勉強するぞ」ではなく……
    まずは、1日15分勉強するところから始める。慣れてきたら30分→60分と時間を増やしていく。

  • 「簿記1級に挑戦するぞ」ではなく……
    まずは3級で合格点を出せるよう、一分野ずつ学ぶ。3級に合格できたら、次は2級で合格点を出せるよう、また一分野ずつ学んでいく。

このように心理的ハードルを低くすれば、無理なく勉強をやり抜くことができますよ。

最小限の頑張りで勉強をやり抜く人が実践している4つのこと02

【2】復習に時間を使う

時間や手間をかけるのがおっくうで復習に手を抜く人は、結局勉強内容が身につかず、余計に時間を費やして勉強しなければならなくなる。だからこそ、できるだけつらい努力をしたくないなら復習を積極的に取り入れるべき――。前出の塚本氏はこのように説きます。

反対に、正しいやり方で復習をすれば、勉強にかかる時間や手間は最小限ですむとのこと。正しい復習法の一例として、たとえば資格勉強をする場合、テキストを丸ごと読んでから問題集を解くより、ひとつの項目ごとにこまめに問題集を解いて復習をしたほうが、勉強時間の無駄をなくせると塚本氏は言います。

ドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウス氏の実験によれば、私たちは新しく覚えた情報のうち、55.8%を1時間後に忘れてしまうのだそう。ただしこの実験には続きがあり、反復学習をするほど忘れるスピードが遅くなり、長く記憶に留まることがわかったとのこと。つまり、記憶がなくなってしまう前に復習すると忘れにくくなり、テキストを何度も読み返す手間が省けるのです。

そこで、世界記憶力グランドマスターの青木健氏は、以下のやり方で3回復習することを提案します。

1回め:24時間以内
覚えているものと覚えていないものを振り分け、覚えていないものは印をつけて内容を見直す。

2回め:2~3日後
まず、1回めで印をつけたところを復習。次に、1回めには覚えていたが2回めでは忘れてしまっていた箇所があれば、内容を確認する。

3回め:約7日後
全体を通して復習する。この段階でも覚えられていないものは特に苦手なものなので、ノートにまとめてスキマ時間等に見直せるようにする。

重要なところや覚えにくいところは、4回・5回とさらに復習を重ねてみてください。復習をしない場合よりも少ない頑張りで、成果を効率よく出せますよ。

最小限の頑張りで勉強をやり抜く人が実践している4つのこと03

【3】試験直前に苦手分野を勉強する

試験直前、あなたはどのように過ごしていますか? テキストの総ざらいをしたり、あるいは試験本番を想定して過去問を解いたりしているでしょうか。これらの勉強より時間がかからず、なおかつ効果的に点数を上げられる方法があります。それは、資格試験オンライン学習サービス「資格スクエア」代表で弁護士の鬼頭政人氏が提案する苦手分野の勉強

なぜ、試験直前に苦手分野を集中的に勉強するのか? 理由は、80点とれる分野で100点満点を目指すより、低い点数しかとれない苦手分野で1点上げるほうが簡単だからです。「言い方を変えれば、苦手分野は伸びしろが大きい分野でもある」と、鬼頭氏。具体的には、苦手分野の暗記系の勉強をするのがおすすめだそうですよ。

たとえば簿記3級を受験するなら、得意の仕訳問題を完璧にするより、苦手分野の重要単語をひとつでも多く覚えて、穴埋め形式の問題に備えたほうが、試験の点数を上げるには効果的だと言えます。受験のように複数科目の試験を受ける場合は、試験直前は苦手科目の頻出用語を覚えるのに専念するとよいでしょう。

試験直前には、過去問を何度もやり直してすでに解ける問題を確認するより、苦手分野へ集中的に取り組むほうが無駄なく勉強できますよ。

最小限の頑張りで勉強をやり抜く人が実践している4つのこと04

【4】しっかりと休憩をとる

休日返上や夜更かしをして勉強する。
疲れ果てるまで休まず、長時間続けて勉強する。

こうした休憩をとらない勉強は、心身への負担が大きいだけでなく、脳科学的に見ても非効率。「最小限の頑張りで勉強をやり抜く」とはまさに正反対のやり方です。

スタンフォード・オンライン・ハイスクール校長の星友啓氏いわく、休憩なしで勉強すると、情報を一時的に保持して整理したり組み合わせたりする脳機能「ワーキングメモリ」が低下してしまうのだそう。つまり「数式を解く」「問題文の内容を理解して設問に答える」といった勉強に必要な機能が衰えてしまうということです。

そこで、星氏は休憩のとり方の一例として、次の3つを挙げています。

体を動かす:5分程度の散歩でもOK。週2~3回の運動習慣をつけるとなおよい
自然を見る:室内の植物や窓からの景色を見るだけでも効果的
雑談する:いったん脳をリラックスさせると、そのあとのパフォーマンスが上がる

体を動かすことは脳の活性化につながり、自然を見ることは集中力の回復につながると星氏は言います。また雑談では、勉強の悩みや試験後にやりたいことなどを仲間と共有すると、ストレスが軽減してワーキングメモリの機能が高まるそうですよ。

『マンガでわかる 現役東大生が実践していた! 東大を攻める7つの勉強習慣』共著者の丹波樹氏も、昼間の眠気が強い時間帯は休憩に活用し、夜は入浴を早めにすませ、そのあと集中して勉強していたとのこと。また前出の鬼頭氏はかつて、「1週間の学習ノルマが達成できたら、日曜日の夕方以降は休み」というように、ほぼ半日の休暇を設定していたそうです。

最小限の頑張りで勉強をやり抜くには、脳をよりよい状態に整えることも大切。そのための休憩なのだと考えて、しっかり時間をとるようにしましょう。

***
今回紹介した方法を実践すると、「勉強は忍耐強く頑張るもの」というイメージが払しょくされて、学ぶ楽しさを実感できるかもしれません。ぜひ、できることから始めてみましょう。

(参考)
塚本亮 (2015), 『努力が勝手に続いてしまう。---偏差値30からケンブリッジに受かった「ラクすぎる」努力術』, ダイヤモンド社.
資格の学校TAC|簿記の合格率と難易度・勉強時間は?くわしく解説します!
ベネディクト・キャリー (2015),『脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実! 』, ダイヤモンド社.
青木健 (2020), 『記憶力日本チャンピオンの 超効率 すごい記憶術』, 総合法令出版.
鬼頭政人 (2016), 『開成→東大文I→弁護士が教える超独学術 結局、ひとりで勉強する人が合格する』, 幻冬舎.
商工会議所の検定試験|簿記 サンプル問題
星友啓 (2021), 『脳科学が明かした! 結果が出る最強の勉強法 スタンフォード大学OHS校長が教える「超効果的頭の使い方」』, 光文社.
東大まんがくらぶ (2020), 『マンガでわかる 現役東大生が実践していた! 東大を攻める7つの勉強習慣』, 講談社.
鬼頭政人 (2016), 『資格試験に「忙しくても受かる人」と「いつも落ちる人」の勉強法』, 大和書房.

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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