なぜあの人の仕事は「いつも円滑に進む」のか? 社内で頼られる人のコミュニケーション術

笑顔で円満な様子

ビジネスで成果を挙げるには、取引先をはじめとする社外の人たちとの人間関係も重要ですが、直接的に協力してともに利益を追求するという意味においては、社内における人間関係はそれ以上に重要なものです。社内で「感じがいい人」だと思われる人は、どのようなコミュニケーションをとっているのでしょうか。主に社内コミュニケーションやストレスマネジメントを専門とする、公認心理師の大野萌子さんにお話を聞きました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

【プロフィール】
大野萌子(おおの・もえこ)
神奈川県出身。公認心理師、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士、一般社団法人「日本メンタルアップ支援機構」代表理事。企業内カウンセラーとしての長年の経験を活かし、社内コミュニケーション、ストレスマネジメント、ハラスメント対策を専門とする。内閣府をはじめ、大手企業、大学などで6万人以上に講演、研修を行なってきた実績をもとに、テレビ、ラジオ、新聞などのメディアでも活躍。『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)は51万部のベストセラーとなった。ほかに『できる上司のZ世代をモンスターにしない言葉』(ビジネス社)、『ネガティブな自分のゆるし方』(クロスメディア・パブリッシング)、『介護のステキ言い換え術』(中央法規出版)、『10歳からの言いかえ図鑑』(幻冬舎)、『気持ちのきりかえ事典』(扶桑社)など著書多数。

身近な関係だからこそ、指示や依頼は「具体的」に示す

仕事を円滑に進めるうえでは、初対面の人やそれほど親しくない人とも協力しなければなりません。そのため、コミュニケーションと言うと、そのような社外の人とうまく仕事を進めたり、人間関係を構築したりするためのものだとイメージする人も多いようです。

しかし、ビジネスパーソンにとって最も多くの時間をともに過ごすのは、社内の人たちです。身近に接する上司や部下、同僚と上手にコミュニケーションがとれてこそ、日々の仕事を円滑に進めることができます。

社内において「感じがいい」と思われ、周囲の協力をとりつけられるような人になるには、その「身近さ」に注意するのが第一です。身近な、いわば身内の関係の相手には、つい「自分の考えていることをわかってもらえるだろう」と安易に考えがちです。そのため、部下に上司が指示をするときにも、「前と同じ感じでやっておいて」といった曖昧な言葉を使ってしまう人もいます。

これは、言うなれば「甘え」です。社外の人に対してはなにかを依頼するにもきちんと具体的に表現できる人でも、身内の相手にはそうできないことは珍しくありません。どこかで「言わなくてもわかってもらえる」と思っているわけであり、つまり甘えているのです。

このケースなら、「前と同じ感じ」の「前」とはなにかを、たとえば「以前にA社に提案したときの資料」というように具体的に示すべきです。そうでなければ、指示を受けた部下がイメージした「前」が別のものの場合、大きなトラブルにも発展する可能性だってあり得ます。

身近な関係だからこそ、指示や依頼は「具体的」に示すようにすすめる大野萌子さん

上司は「平等性」をもって部下に接する

また、特に上司の立場にある人の場合、身近さに注意するのはもちろんのこと、「平等性」をもって部下に接することも欠かせないポイントです。端的に言えば、えこひいきをしないということです。仕事を依頼するとき、ある人には丁寧に話すのに、別の人には「ちゃんとやっておけよ」というように横柄な態度で指示をするような上司の下で働きたいと思う部下はいませんよね。

平等性に関しては、単純に名前の呼び方にも気をつけましょう。近年は、社内であっても「ちゃん」づけで名前を呼ぶのは好ましくないとされます。ただ、私の個人的な考えとしては、親しく強い関係性を築くという意味では、「ちゃん」づけは悪いものだとはとらえていません。

ただし、「ちゃん」づけを使うのなら、すべての部下を「ちゃん」づけで呼ぶべきです。そうではなく、「Aちゃん」「Bさん」というように混在させてしまうと、Aちゃんには「私はほかの人より下に見られている」、Bさんには「私はほかの人よりかわいがられていない」といった不満を抱かせかねません。

そうして部下たちが不満を募らせれば、パフォーマンスにも悪影響が及ぶでしょう。社内で「感じがいい」と思われるかどうかという問題にとどまらず、そもそも上司としての評価を揺るがすことにもつながります。

上司は「平等性」をもって部下に接するようにすすめる大野萌子さん

ミスやトラブルを起こしたときこそ、「報連相」は迅速に

一方、部下の立場にある人にも、注意しなければならないことがあります。社内でのコミュニケーションで言うと、なかでも「報連相」は重要です。というのも、特にトラブルやミスが起きた場合、報連相が遅れることが若手社員にはよく見られるからです。

報連相は、できる限りスピーディーに正確に行なうのが大原則です。しかし、トラブルやミスを招いてしまうと、叱られたり責められたりするのを恐れ、「まだ挽回できるかもしれない」と考えて報連相が遅れがちなのです。

そうして挽回できればいいですが、うまくいくことはほとんどありません。結果としてトラブルが拡大してからそれが発覚すれば、「どうして早く報告しないんだ!」と上司から叱責されるでしょう。

上司からすれば、早い段階で報告や相談をしてくれれば、打ち手があったはずです。あるいは、部下が勝手に大袈裟に考えていただけで、経験豊富な上司からは「よくあることなんだよ」「こうやって対処すればいいから」と言えるような、軽微なトラブルだという可能性だってあります。いずれにせよ、トラブルやミスを起こしたときこそ、いつも以上に迅速に報連相をすることが肝要です。

また、部下から上司への報連相に関して言えば、こまめな「中間報告」をするのも忘れないでほしいですね。上司から仕事の依頼をされたとき、「すべて仕上がってから報告しよう」と考える人もいますが、その成果物が上司のイメージとかけ離れていたらどうでしょうか? 「そうじゃないんだよ」と差し戻され、それまでに使った時間や労力のすべてが無駄になってしまいます。

上司からしても、「いまはこういう状況ですが、このまま進めていいですか?」「修正点があれば教えてください」と中間報告してくれる部下には安心して仕事を任せられますから、その部下に対する評価も必然的に上がっていくでしょう。

そもそも、複数の部下を抱えている上司は、部下全員の仕事の進捗をすべて把握することはほぼ不可能なのです。そうしたなかで、仕事を依頼した部下から中間報告がまったくないことで進捗に不安を感じ、わざわざ時間をとって確認をするようなことがあれば、その部下への信頼は揺らいでいきます。上司から「そういえば、あれどうなってる?」と確認された時点で、あなたの評価には黄色信号が灯っていると考えください。

社内で頼られる人のコミュニケーション術についてお話くださった大野萌子さん

【大野萌子さん ほかのインタビュー記事はこちら】
「感じがいい人」は “あの言葉”を絶対に使わない。相手をダブルバインドの状態にさせない言い方とは?
オンラインでも「感じがいい人」が実践している “3つ”の習慣

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト