vol.2で顧客獲得の大きな流れは理解できました。
知ってもらう→興味を持ってもらう→行動してもらうという3つの段階があることも分かりました。
でも実際に「じゃあ、どうやって戦略を立てるの?」となると、何から考え始めればいいのか分からなくなりますよね。
素手で冒険に出るのは無謀です。
戦うための武器、つまり「考えるための道具」を手に入れましょう。
そこで使えるのが「フレームワーク」です。
考えるべきポイントを整理してくれる、思考の型みたいなものです。
フレームワークには実はたくさんの種類があるのですが、最初から全部を覚える必要はありません。
今回は、マーケティングの現場で特によく使われる3つの基本フレームワークを紹介します。
まずはこの3つを使いこなせるようになれば十分です。
- フレームワークって何? なぜ使うの?
- 3C分析 現状を把握する
- SWOT分析 強みと弱みを整理する
- 4P分析 具体的な戦略を決める
- 3つのフレームワークをどう使う?
- 実際の仕事でどう使う?
- 完璧を目指さなくていい
フレームワークって何? なぜ使うの?
フレームワークとは、「考えるべきことを漏れなく整理するための枠組み」のことです。
マーケティング戦略を考えるとき、ゼロから「どう考えればいいんだろう?」と悩むのは、実はすごく効率が悪いんです。
「何を考えるべきか」を考えるところから始めると、時間もかかるし、大事なことを見落としがちです。
そこで役立つのがフレームワーク。
「考える枠組み」がすでに用意されているので、その枠に沿って考えていけば、抜け漏れなく、効率的に戦略を立てられます。
例えば、引っ越し先のマンションを選ぶとき。
「どう選べばいいんだろう?」とゼロから考えるより、「家賃、間取り、駅からの距離、周辺環境、築年数」という項目が最初から決まっていれば、それぞれの内容を埋めていくだけでスムーズに比較検討できますよね。
フレームワークを使う2つのメリット
1. 「何を考えるか」ではなく「内容」に集中できる
考える項目が決まっているから、その中身を充実させることに時間を使えます。
2. 考えるべきことの抜け漏れを防げる
「競合のことを考え忘れていた」「価格設定を後回しにしていた」といったミスが減ります。
つまり、フレームワークは「思考の効率化ツール」なんです。
3C分析 現状を把握する
最初に使うのが「3C分析」です。
戦略を立てる前に、まず現状を整理します。
3つのCとは、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)のこと。
vol.1と同様、カフェの例で考えてみましょう。
カフェの3C分析
Customer(顧客)
・この地域にはどんな人が住んでいる? 働いている?
・普段どこでコーヒーを飲んでいる?
・カフェに何を求めている?(作業スペース? おしゃれな雰囲気? 美味しいコーヒー?)
・いくらなら払える?
Competitor(競合)
・周りにどんなカフェがある?
・それぞれの強みは?(安い、おしゃれ、Wi-Fi完備、など)
・価格帯は? メニューは?
・お客さんはなぜそのカフェを選んでいる?
Company(自社)
・うちのカフェの強みは何?
・予算はどれくらい使える?
・スタッフの得意なことは?
・場所の特徴は?(駅近? 静か? 広い?)
この3つを整理すると、「顧客が何を求めていて、競合がどう応えていて、自分には何ができるのか」が見えてきます。
ここから「じゃあ、うちは◯◯で勝負しよう」という方向性が決まるわけです。

SWOT分析 強みと弱みを整理する
3C分析で現状を把握したら、次は「SWOT分析」で自社の立ち位置をもっと深く分析します。
SWOTとは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字です。
カフェのSWOT分析
Strength(強み)— 内部要因
・オーナーが元パティシエで、スイーツが本格的
・駅から徒歩2分の好立地
・Wi-Fiと電源が全席完備
Weakness(弱み)— 内部要因
・開店したばかりで認知度が低い
・席数が少ない(12席のみ)
・広告予算が限られている
Opportunity(機会)— 外部要因
・近くに新しいオフィスビルが完成予定
・リモートワークが増えて、カフェで作業する人が増えている
・SNSでカフェ巡りがブームになっている
Threat(脅威)— 外部要因
・大手チェーン店が近くに出店予定
・コーヒー豆の価格が上昇している
・不景気で外食を控える人が増えている
ポイントは、内部要因(自分でコントロールできること)と外部要因(コントロールできないこと)を分けて考えることです。
SWOT分析をすると、こんな戦略が見えてきます。
・強み×機会 「本格スイーツ」と「SNSブーム」を組み合わせて、インスタ映えするメニューを開発
・弱み×機会 「認知度が低い」けど「リモートワーカーが増えている」から、作業しやすい環境をアピール
・強み×脅威 「大手が来る」けど「うちにはWi-Fi完備」だから、ノマドワーカー向けに差別化

4P分析 具体的な戦略を決める
現状把握と分析ができたら、いよいよ具体的な戦略を「4P」で整理します。
4Pとは、Product(製品)、Price(価格)、Place(場所)、Promotion(販促)のこと。
カフェの4P
Product(製品) — 何を提供する?
・本格スイーツとこだわりコーヒー
・作業しやすい環境(Wi-Fi、電源、静かな空間)
・インスタ映えする見た目
Price(価格) — いくらで提供する?
・コーヒー 500円(大手より少し高め)
・スイーツセット 900円
・チャージ料なし(長居OK)
Place(場所) — どこで・どうやって提供する?
・駅前の店舗(テイクアウトも可能)
・予約はできない(ふらっと立ち寄れる)
・営業時間は8:00〜20:00
Promotion(販促) — どうやって知ってもらう?
・Instagram で毎日スイーツの写真を投稿
・近隣オフィスにチラシ配布
・来店客にSNS投稿を促す仕掛け(#つけて投稿で次回10%オフ)
4Pを決めるときに大切なのは、バラバラに考えないことです。
例えば、高級感のある商品(Product)なのに、激安価格(Price)で、駅前の立ち食いスタイル(Place)だと、ちぐはぐですよね。
「ターゲットとする顧客に、どんな価値を届けるのか」を軸に、4つの要素が一貫していることが重要です。

3つのフレームワークをどう使う?
この3つのフレームワークには、使う順番があります。
1. 3C分析 → 現状を把握する
2. SWOT分析 → 自社の立ち位置を深掘りする
3. 4P → 具体的な戦略に落とし込む
いきなり4Pから始めて「商品は◯◯で、価格は◯◯で…」と考えても、お客さんのニーズや競合の状況を無視していたら失敗します。
逆に、3CやSWOTで分析ばかりしていても、最終的に4Pで「じゃあ実際にどうする?」を決めないと前に進みません。
この3つのステップを順番に踏むことで、「なんとなく」ではなく「根拠を持って」戦略を立てられるようになります。
実際の仕事でどう使う?
「フレームワークは分かったけど、実際の仕事でいつ使うの?」という疑問が出てきますよね。
こんな場面で使います。
● 新商品を出すとき
3C分析で市場を調べて、SWOTで自社の強みを確認して、4Pで具体的な戦略を決める
● キャンペーンを企画するとき
3Cで「誰に響くか」を考えて、SWOTで「何を強みにするか」を確認して、4Pで「どう伝えるか」を設計
● 競合が新しいサービスを始めたとき
3C分析で競合の動きを整理して、SWOTで「うちはどう対応するか」を考える
最初は上司や先輩が「まず3C分析してみて」と言ったときに使えればOKです。
慣れてくると、自然と頭の中でこの枠組みで考えられるようになります。
完璧を目指さなくていい
フレームワークを初めて使うとき、「全部の項目を完璧に埋めなきゃ」と思うかもしれません。
でも、最初は分からないことだらけで当然です。
まずは「今分かっていること」を書き出してみることから始めましょう。
空欄があってもいいんです。
「これ、調べないと分からないな」と気づくことも、フレームワークを使う価値の一つです。
何度も使ううちに、だんだんと精度が上がっていきます。
次回のvol.4では、いよいよデジタルマーケティングの具体的な手法について解説します。
フレームワークで戦略を立てたら、それを実行する段階ですね。
Web広告、SNS、メールマーケティングといった具体的なツールの使い方を見ていきましょう。
【新人さんのためのマーケティング講座全記事はこちら】
vol.1:マーケティング部ってなにするところ?
vol.2:「顧客獲得の仕組み」をつくるって何をすること?
vol.3:考える武器 "フレームワーク" を手に入れよう。
vol.4:Webマーケティングってなにをすること? 具体的手法を整理しよう
vol.5:CTRとかCVRとかって何のこと? 数字をどう読み、どう動けばいい?
vol.6:KGIとKPIとは? マーケティングの「宝の地図」の作り方
vol.7:マーケティングファネルがわかればもう迷わない。恋愛に学ぶ「ファネル」の話
vol.8:Web広告って、結局どれがいいの? 目的別Web広告の選び方
vol.9:CPAが効果検証の要! できるだけお金をかけずにお客様に振り向いてもらおう
vol.10:マーケ用語を覚えておこう|広告の種類と基本用語編
vol.11:マーケ用語を覚えておこう|効果測定の指標用語
vol.12:マーケ用語を覚えておこう|SEO/SEM関連用語編
vol.13:マーケ用語を覚えておこう|アクセス解析用語編
vol.14:マーケ用語を覚えておこう|総合テスト編
岡 健作(おか・けんさく)
スタディーハッカー 代表取締役社長
1977年生まれ、福岡出身。同志社大学卒業。2010年に創業。「Study Smart(合理的に学ぶ)」をコンセプトに、科学的知見に基づく英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」を設立し、人気ブランドへと成長させる。 事業拡大の要として、自らオウンドメディアとSNSの編集長を兼任。「StudyHacker.net」を月間700万PV、SNS総フォロワー27万人規模のメディアへと育て上げ、広告費に依存しない集客モデルを確立する。現在はその知見を活かし、「企業の認知獲得の専門家」として、論理とデータに基づいた再現性の高いメディア戦略・ブランディング論を発信している。X(@oka_kgs)