
vol.3でフレームワークという「考える武器」を手に入れました。
3C分析、SWOT分析、4Pを使えば、戦略を立てられるようになりましたね。
でも戦略を立てただけでは、お客様には届きません。
実際に施策を実行する必要があります。
今回は、現代のマーケティングで中心的な役割を果たしている「デジタルマーケティング」の具体的な手法を見ていきましょう。
デジタルマーケティングって何?
デジタルマーケティングとは、インターネットやデジタル技術を使ったマーケティング活動のことです。
昔のマーケティングは、テレビCMや新聞広告、チラシ配りが中心でした。
でも今は、多くの人がスマホを持ち、毎日インターネットを使っています。
だから、お客様がいる場所=デジタル空間で、効率的にアプローチするんです。
デジタルマーケティングとWebマーケティングの違い
デジタルマーケティング
Web、アプリ、IoT機器、デジタルサイネージなど、あらゆるデジタル技術を活用したマーケティング全般を指します。
Webマーケティング
デジタルマーケティングの一部で、WebサイトなどのWeb媒体に特化したマーケティングのことです。
この記事では、特に重要な「Webマーケティング」を中心に解説していきます。
デジタルマーケティングの2つの強み
デジタルマーケティングには、従来のマーケティングにはない大きな強みが2つあります。
強み① データで効果が見える(データドリブン)
「何人が見て、何人がクリックして、何人が申し込んだか」が明確に分かります。
テレビCMだと「どれくらいの人が見たか」は推測できても、「誰が実際に購入したか」までは追えません。
でもデジタルなら、広告をクリックした人が最終的に購入したかどうかまで追跡できます。
このようにデータに基づいて判断・改善していく考え方を「データドリブン(Data Driven)」といいます。
例:カフェの場合
Instagram広告を出したとき、「20代女性からのクリックが多い」「土曜日の午前中に反応がいい」「スイーツの写真の方がコーヒーより反応がいい」といったことが数字で分かります。
これが分かれば、「20代女性向けに、週末の朝に、スイーツ中心の広告を出そう」と改善できます。
強み② 一人ひとりに合わせたアプローチができる(パーソナライズ)
テレビCMは、見ている人全員に同じ内容が流れます。
でもデジタルなら、その人の興味や行動に合わせて、違う内容を届けられます。
例:カフェの場合
あなたのカフェのWebサイトを訪れた人に対して、
・スイーツのページをじっくり見た人には、スイーツの新メニュー情報を
・コーヒーのページを見た人には、コーヒー豆の入荷情報を
・何度も来店しているリピーターには、会員限定の特典を
といった具合に、それぞれに最適な情報を届けられます。
Webマーケティングの3つの段階
Webマーケティングの施策は、お客様の購買プロセスに沿って「集客」「接客」「販売促進」の3つの段階に分けて考えるのが基本です。
【集客】お客様に見つけてもらう
まだあなたのことを知らない人、または知っているけど興味が薄い人に、「こんなお店があるんだ!」と認識してもらう段階です。
主な施策:SEO(検索エンジン最適化)/ Web広告 / SNSマーケティング / 動画マーケティング / コンテンツマーケティング
【接客】興味を持ってもらう
あなたのことを知った人に、もっと詳しい情報を提供して、「いいかも」「欲しいかも」と興味・関心を高めてもらう段階です。
主な施策:Webサイトの運営・改善 / ランディングページ(LP)の最適化 / コンテンツマーケティング / チャットボット
【販売促進】購入・申し込みしてもらう
興味を持った人に、最後の一押しをして実際に購入・申し込みしてもらい、さらにリピーターになってもらう段階です。
主な施策:メールマーケティング / リターゲティング広告 / MAツール

主要なWebマーケティング施策
ここからは、各施策を具体的に見ていきましょう。
1. SEO(検索エンジン最適化)【集客】
SEOとは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンで、自社のWebサイトが上位に表示されるように工夫することです。
カフェの例なら、「東京 カフェ おしゃれ」と検索した人の検索結果に、あなたのカフェのサイトが1ページ目に表示されることを目指します。
メリット
・一度上位表示されれば、継続的に集客できる
・広告費がかからない
・検索している=興味がある人なので、質の高い見込み客が集まる
デメリット
・効果が出るまで時間がかかる(数ヶ月〜1年以上)
・コンテンツ作成に手間がかかる
・検索エンジンのアルゴリズム変更で順位が変動する可能性がある
2. Web広告【集客】
Google広告、Yahoo!広告、Facebook広告、Instagram広告など。
インターネット上に広告を出して、商品やサービスを知ってもらう方法です。
主なWeb広告の種類
リスティング広告
検索結果の上部に表示される広告。「東京 カフェ おしゃれ」と検索した人に、あなたのカフェの広告を表示できます。
ディスプレイ広告
Webサイトやアプリの広告枠に表示される、画像や動画の広告。バナー広告とも呼ばれます。
SNS広告
Facebook、Instagram、X(旧Twitter)などのSNS上に表示される広告。年齢、性別、興味関心などで細かくターゲティングできます。
リターゲティング広告【販売促進】
一度あなたのWebサイトを訪れた人に対して、再度広告を表示する手法。「気になっていたけど買わなかった人」に再アプローチできます。
メリット
・狙った人に直接アプローチできる
・効果がすぐに数字で分かる
・予算に応じて柔軟に調整できる
デメリット
・費用がかかる(クリックごとに課金されることが多い)
・競合が多いキーワードは高額になる
・広告を止めると効果も止まる
3. Webサイトの運営【接客】
自社のWebサイトを作り、継続的に更新・改善していくことです。
Webサイトは、お客様との最も重要な接点の一つです。
主な作業内容
・商品やサービスの情報を分かりやすく掲載
・新しい情報やコンテンツの追加・更新
・お問い合わせやトラブルへの対応
・アクセス解析をもとにした改善
重要
どんなに広告で人を集めても、Webサイトが分かりにくかったり、情報が古かったりすると、お客様は離れていってしまいます。「集客」と「接客」の両方がしっかり機能して、初めて成果につながります。
4. SNSマーケティング【集客】
X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、TikTokなどのSNSを活用する方法。大きく分けて2つのアプローチがあります。
アカウント運用(無料)
自社のアカウントを作って、定期的に投稿する方法。カフェなら、毎日のメニューや店内の様子、スタッフの日常などを投稿します。フォロワーとの距離が近く、ファンを作りやすいのが特徴です。ただし、継続的な投稿が必要で、手間がかかります。
SNS広告(有料)
InstagramやFacebookの広告枠に広告を出す方法。Web広告の一種ですが、SNSならではの詳細なターゲティングができます。
5. 動画マーケティング【集客】
YouTubeなどの動画プラットフォームを活用して、自社や商品・サービスに関する情報を配信します。
動画は静止画やテキストに比べて、視覚的に強く訴えかけることができます。お客様の購買段階に合わせて、内容を変えることが重要です。
例
・興味関心層:「美味しいコーヒーの淹れ方」解説動画
・情報収集層:「カフェ開業の成功事例」インタビュー動画
・比較検討層:「当店のこだわり」紹介動画
メリット
・情報を分かりやすく伝えられる
・感情に訴えかけやすい
・SNSでシェアされやすい
デメリット
・制作に手間とコストがかかる
・企画や編集スキルが必要
6. コンテンツマーケティング【集客・接客】
ブログ記事、動画、資料などで有益な情報を提供する方法。
「この会社は詳しそうだ」「役に立ちそうだ」と思ってもらうのが目的です。
カフェの例なら、こんなコンテンツを作ります。
・「自宅で美味しいコーヒーを淹れる方法」のブログ記事
・「コーヒー豆の選び方」の動画
・「カフェで集中して仕事をするコツ」の記事
直接的な宣伝ではなく、価値のある情報を提供することで、
「この店はコーヒーに詳しいんだな」「信頼できそうだな」と思ってもらえます。
メリット
・一度作ったコンテンツは長期間効果を発揮する
・検索エンジンから継続的に見込み客が流入する
・信頼関係を築きやすい
デメリット
・効果が出るまで時間がかかる
・質の高いコンテンツを作るには手間がかかる
・すぐに売上につながるわけではない
7. メールマーケティング【販売促進】
メールアドレスを登録してくれた人に、定期的に情報を届ける方法。
メールマガジン(メルマガ)が代表的です。
カフェなら、会員登録してくれたお客様に、
・新メニューのお知らせ
・期間限定クーポン
・コーヒー豆の入荷情報
などを定期的に送ります。
一度登録してもらえれば、継続的に接点を持てるのが強みです。
ただし、頻度が高すぎたり、興味のない内容ばかり送ると、配信停止されてしまいます。
どの施策を選ぶ? 組み合わせ方のコツ
「どれか1つだけ」ではなく、複数を組み合わせるのが現代のマーケティングです。
カフェのWebマーケティング例(購買プロセス別)
【集客】新規客を集める
・SEO:「東京 カフェ」で検索した人が自然検索で訪問
・Web広告:「東京 カフェ」で検索した人に広告を表示
・Instagram:日々の投稿でフォロワーを増やす
【接客】興味を持ってもらう
・Webサイト:メニュー、アクセス、雰囲気を分かりやすく紹介
・コンテンツ:「コーヒーの淹れ方」記事で専門性をアピール
【販売促進】購入・リピートしてもらう
・メルマガ:会員に新メニュー情報やクーポンを送る
・リターゲティング広告:サイトを見たけど来店しなかった人に再アプローチ
このように、それぞれの施策が補い合う形で機能します。
最初の一歩 何から始める?
「色々あって迷う」という人は、まず自社のお客様がどこにいるかを考えましょう。
お客様のタイプ別 おすすめ施策
若い世代向け → Instagram、TikTok
ビジネスパーソン向け → Web広告、メルマガ
地域密着型 → 地元SNS、Googleマイビジネス
そして、購買プロセスのどこに課題があるかを見極めることが重要です。
課題別 優先すべき施策
そもそも知られていない → 「集客」施策を優先(SEO、Web広告、SNS)
知られているけど興味を持たれていない → 「接客」施策を優先(Webサイト改善、コンテンツ)
興味はあるけど購入に至らない → 「販売促進」施策を優先(メルマガ、リターゲティング広告)
そして、1つの施策を3ヶ月は続けてみることをおすすめします。
すぐに結果が出ないからといって、1週間で諦めるのはもったいない。
データを見ながら改善を繰り返すことで、だんだんコツがつかめてきます。

これまでの振り返り
・vol.1:マーケティングの全体像を理解
・vol.2:顧客獲得の流れを把握
・vol.3:フレームワークという武器を装備
・vol.4:デジタルマーケティングの実践方法を学習
あとは実際に手を動かすだけです。
小さなことから始めて、少しずつ経験を積んでいってください。
マーケティングは、やればやるほど面白くなる仕事です。
頑張ってくださいね!
効果測定はvol.5で
Webマーケティングの最大の強みは、効果を数字で見える化できることです。
でも、「どの数字を見ればいいのか」「その数字をどう改善すればいいのか」は、初めての人には少し難しい。
だから効果測定の具体的な方法は、次回vol.5でじっくり解説します。
【新人さんのためのマーケティング講座全記事はこちら】
vol.1:マーケティング部ってなにするところ?
vol.2:「顧客獲得の仕組み」をつくるって何をすること?
vol.3:考える武器 "フレームワーク" を手に入れよう。
vol.4:Webマーケティングってなにをすること? 具体的手法を整理しよう
vol.5:CTRとかCVRとかって何のこと? 数字をどう読み、どう動けばいい?
vol.6:KGIとKPIとは? マーケティングの「宝の地図」の作り方
vol.7:マーケティングファネルがわかればもう迷わない。恋愛に学ぶ「ファネル」の話
vol.8:Web広告って、結局どれがいいの? 目的別Web広告の選び方
vol.9:CPAが効果検証の要! できるだけお金をかけずにお客様に振り向いてもらおう
vol.10:マーケ用語を覚えておこう|広告の種類と基本用語編
vol.11:マーケ用語を覚えておこう|効果測定の指標用語
vol.12:マーケ用語を覚えておこう|SEO/SEM関連用語編
vol.13:マーケ用語を覚えておこう|アクセス解析用語編
vol.14:マーケ用語を覚えておこう|総合テスト編
岡 健作(おか・けんさく)
スタディーハッカー 代表取締役社長
1977年生まれ、福岡出身。同志社大学卒業。2010年に創業。「Study Smart(合理的に学ぶ)」をコンセプトに、科学的知見に基づく英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」を設立し、人気ブランドへと成長させる。 事業拡大の要として、自らオウンドメディアとSNSの編集長を兼任。「StudyHacker.net」を月間700万PV、SNS総フォロワー27万人規模のメディアへと育て上げ、広告費に依存しない集客モデルを確立する。現在はその知見を活かし、「企業の認知獲得の専門家」として、論理とデータに基づいた再現性の高いメディア戦略・ブランディング論を発信している。X(@oka_kgs)