隣のチームのリーダーは、部下や後輩にとても慕われているようだ。対して自分は、ちゃんとメンバーから信頼されているのだろうか……。このように気になっていませんか? 評価され信頼されるリーダーになりたいなら、口癖や話し方を意識したほうがいいですよ。
今回は、「知らぬ間に低く評価され、信頼を失ってしまう人」が言いがちな最悪な口癖を4つ解説します。もし当てはまっていた場合、即改善を心がけてください。
信頼されない人の口癖1.「お客様は大丈夫だったか」
仕事で部下が、客とのあいだで発生した問題に対処したとき、リーダーであるあなたが真っ先に心配するのはなんでしょうか? もし「お客様」と答えるのなら、あなたは “あるひとこと” により、チーム全体からの信頼を失ってしまうかもしれません。
それは「お客様は大丈夫だったか?」というもの。
もちろん、仕事において顧客満足度は重要です。ですが、顧客との関係性だけ大事にしておけばいいわけではありません。人材育成コンサルタントの吉田幸弘氏は、従業員満足度こそ重視するべきだと言います。上の例であれば、リーダーは「お客様は大丈夫だったか?」と言うより「大変だったね」と部下への共感を示し、ねぎらいの言葉をかけるべきなのです。
吉田氏いわく、リーダーは「安全基地」でなければならないとのこと。安全基地とは、いざというときに頼ることができ、そこにいれば守ってもらえるというような居場所であり、心の支えとなる存在のことです。たとえ平常時には頼れるリーダーであったとしても、トラブル発生時のような非常時に、取引先を真っ先に考えるような言動をとると、信頼が大きく下がるのだと言います。
お客様の心配をするより先に、部下の心配をしましょう。それだけで、あなたへの信頼感はアップするはずです。
信頼されない人の口癖2.「思います」
日本人がよく使う「思います」という表現。コミュニケーション・ストラテジストの岡本純子氏は、「思います」を繰り返すことは責任逃れの印象を与えてしまうと述べています。丁寧さや謙虚さを伝えるうえでとても役に立つ言葉ですが、使いすぎると当事者意識がない印象を周囲に与え、不安感を掻き立ててしまうのです。
たとえば、プレゼンテーションをするとき「この方法で売り上げは○○パーセント上がると『思います』」のような間接的表現で説明をすると、聞き手に不信感を抱かせることにつながります。根拠も自信もないような印象を与えてしまうでしょう。
岡本氏いわく、リーダーシップは語尾に宿るとのこと。リーダーには言いきる勇気が必要だと述べます。自信や責任感の強さを表して信頼される人になるには、「~~します」「~~してください」と強く短く断言することが大切なのです。
岡本氏は「思います」以外にも、「~~という状況を認識いたしております」や「感謝を申し上げる次第です」などといった、直接的な表現を避ける癖がある人が多いと言います。こういう遠回しなフレーズは、シンプルに「状況は~~です」や「感謝します」と直接的な表現に変えるべきなのです。
大事なのは、間接的な言葉を排除し、自分の考えを真剣に言いきること。発言者に責任はかかりますが、その言葉は確実に高い信頼感へとつながるでしょう。
信頼されない人の口癖3.「前に教えたよね」
ミスなどよくないことをした部下や後輩を指導するとき、いわゆる “仕事がデキる” 人のなかには、つい「前に教えたよね」と口にしてしまう人が多いようです。仕事でのコミュニケーションの問題を演出家の視点で解説する劇作家・演出家の竹内一郎氏は、「前に教えたよね」と言えばたちまち、指導相手の部下のみならずこの言葉を聞いた全員から信頼されなくなると言います。
ほかに、「あなたは当たり前のことができていないよ」や「これ言うの、もう何回目だっけ」といったフレーズも同様。言った本人はアドバイスをしているつもりでも、聞かされている人にとっては “優秀さ自慢” にしか聞こえないもの。竹内氏によると、こういった類の言葉で「説教」をするとき、発言者は快感を得ているそうです。居酒屋で部下を気分よく説教しているような人が、その典型例。説教されている側は当然、気持ちよくありません。
そこで竹内氏は、部下などを指導するなかで「序破急」を意識したコミュニケーションをとることを提案しています。序破急とは、世阿弥が提案した能の心得であり脚本構成の三区分。「序」は導入部、「破」は展開部、「急」は結末部を表します。
「序」
最初は雑談に近い、とりとめのない会話から。緊張感をぬぐい、こちらの話を素直に聞いてくれる状態をつくります。気持ちに余裕をもてる場所を選ぶ(深く座れる椅子がある喫茶店や広い会議室など)ことも大事です。
「破」
相手が自分で気づきを得られるように話を進めます。たとえば、報連相ができない部下を指導するなら、報連相不足で失敗した自分自身のエピソードを話せば、気づきを促せるかもしれません。
「急」
指導するついでに、つい自慢をしてしまわないよう、さっと話を切り上げます。いつまでも指導を続けると、部下の問題を指導してあげられる自分はすごい、といった気持ちが暗に伝わってしまい、相手は気持ちよく自己改善することができません。
竹内氏は、似ているように思える「注意」と「説教」は違うものだと言います。先述のとおり、発言者に快感をもたらすのが「説教」。対して「注意」とは、それ自体が快感につながることはなく、注意した結果がよいものになったときに達成感をもたらすものです。
部下に話をしたあと、もしも快感を得たのだとしたら、あなたの話は「説教」だったと言えるでしょう。当然、あなたに対する周囲からの信頼度は下がっていきます。先に紹介した口癖は慎み、相手が気持ちよく自発的に自分の行動を修正できるような、序破急に基づく「注意」を心がけましょう。
信頼されない人の口癖4.「ない発言」
最後に取り上げるのは、リーダーのみならずすべてのビジネスパーソンが意識すべきフレーズ。「忙しくてできない」「この業務はやりたくない」といった「ない発言」は、信頼に大きな影響を与えます。
経営コンサルタントでビジネス作家の臼井由妃氏は、ビジネスシーンでは「ない発言」をしない人ほど信頼できると説明しています。もし、頼まれた仕事にすぐ取り組めなかったり、能力的に無謀な指示であったりしても、「ない発言」で仕事を受けないのはNG。このようなときは「これならできる」という代案を示すべきだと臼井氏は言います。
たとえば、部下に「今日中の資料チェック」を頼まれたものの、別の案件で忙しく対応ができない場合。「いま、○○案件の対応に当たっているので、明日の午前中まで時間をもらえればチェックができる」という具合に、「ない」を使わない言葉で意志を伝えつつ、代案を提示するのです。
臼井氏は、前向きな発言をすれば、相手との関係にヒビが入りにくくなると述べます。「ない発言」で消極的な意思表示をするよりも、はるかに周囲から信頼されやすくなるでしょう。
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4つのなかに、あなたが言いがちな口癖はありましたか? 当てはまるものがあった方は、すぐにでも改善し、失いかけているかもしれない信頼を取り戻しましょう。
(参考)
ダイヤモンド・オンライン|謝罪案件は要注意!「お客様、大丈夫?」のひと言で、一発で信用を失ったリーダーの悲哀
プレジデントオンライン|「1分に1回以上登場する”ある口癖”」菅首相の話し方が国民の不安・絶望感を増幅するワケ
プレジデントオンライン|「前に教えたよね」デキる人ほど言ってしまうパワハラ寸前のNGワード
goo辞書|「序破急」の意味
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【ライタープロフィール】
渡部泰弘
大阪桐蔭高校出身。テンプル大学で経済学を専攻。外出時は常にPodcastとradikoを愛用するヘビーリスナー。