ピアプレッシャーとは? メリット&デメリットを知ろう!

ピアプレッシャーのメリットとデメリット1

ピアプレッシャーとは、いわゆる「同調圧力」のこと。職場などで相互監視が行われることにより、ミスなく仕事を進めなきゃ、周囲に合わせて自分も残業をしなくちゃ、といった精神的負荷(ストレス)を感じやすくなります。

一方、適度なピアプレッシャーには、ポジティブな連帯感――つまり、仲間とのチームワークを強めてくれるメリットがあります。今回は、ピアプレッシャーとは何かを解説したうえで、ピアプレッシャーをうまく利用する方法をご紹介しましょう。

ピアプレッシャーとは

「ピアプレッシャー」のピア(peer)は「仲間」、プレッシャー(pressure)は「圧力」という意味。ピアプレッシャーは、「同調圧力」とも呼ばれるとおり、周囲の価値観ややり方に合わせなければいけない、と感じてしまう心理的圧迫感のことです。

ピアプレッシャーが意識されやすいのが、休暇の取得や定時退社といった場面。 株式会社パーソル総合研究所主任研究員として多くの講演やセミナーに登壇している小林祐児氏は、ピアプレッシャーと「残業」との関係を次のように述べています。

我々が聴取した数十の組織特性・風土特性の中で、最も残業時間を増やしていた組織要因は「周りの人が働いていると帰りにくい雰囲気」でした。しばしば残業要因として指摘される「過剰品質の追求」や「意思決定に根回しが必要」といった組織要因よりも、この「帰りにくい同調圧力」が最も残業に影響していました。

(引用元:ダイヤモンド・オンライン|残業発生のメカニズムを解明、職場が長時間労働に麻痺する病理とは 太字による強調は編集部が施した)

このように、集団において互いに行動を見張ることを「相互監視」といいます。意識的でなくても、互いに監視し合うことにより、行動が制限されてしまうのです。

しかし、ピアプレッシャーの本来の意味は、皆で足並みをそろえようと周囲に配慮する「緊張感」。そのため、ピアプレッシャーはポジティブに作用することもあります。有限会社シャープマインド代表でマーケティング心理学に詳しい松尾順氏は、「同調」について次のように話しています。

例えば、集団で飛ぶ渡り鳥たちは、最も風を受け、エネルギーを消耗しやすい先頭の役割を交替でこなしています。そうすることで、目的地に確実に行くことが可能になります。(中略) 同じ行動が取れるからこそ、いざという時、力を合わせて外敵に立ち向かったりすることができる。すなわち、「同調」は、お互いを助け合うことにつながっている。(後略)

(引用元:ITmedia ビジネスオンライン|“同調”がお互いの絆を深める 太字による強調は編集部が施した)

この観点だと、ピアプレッシャーにおいて働く意識は「相互監視」というより「相互配慮」でしょう。ピアプレッシャーが存在する職場では、仕事の負担を平等にしようという意思が強まります。

朝の掃除が義務づけられているとしたら、平等に割り振られるでしょう。社長がやることはなくとも、若い社員などのグループ内で当番が決まり、仕事が特定の誰かに押しつけられることはありません。

また、当番の人間が体調不良で欠勤したときも、ピアプレッシャーが働き、ほかの誰かが「今日は私が代わりますよ」と申し出ます。そして欠勤した人は、「じゃあ今度、あなたの当番の日に私がやりますので」と気遣うでしょう。これが、ピアプレッシャーがポジティブに働き、相互配慮が生まれている職場なのです。

つまり、ピアプレッシャーとは、その集団の性質や構成員しだいで、作用が変化するものだといえます。

ピアプレッシャーのメリットとデメリット2

ピアプレッシャーの例

ピアプレッシャーが強すぎたり、逆に弱すぎたりした場合、どのような問題が生じるのでしょうか? ピアプレッシャーが適度な場合も含め、具体例を見てみましょう。

ピアプレッシャーが不足している場合

特にピアプレッシャーが強いのが、上司と部下のあいだです。部下は上司の指示に従って仕事をし、上司は部下の手本となるよう努めます。上司とのあいだにピアプレッシャーがあると、部下も上司も緊張感を持って仕事をし、少しでもよい成果を出そうと努力することができるというメリットがあるのです。

では、上司と部下のあいだにピアプレッシャーが不足すると、どうなってしまうのでしょうか? イントランスHRMソリューションズ株式会社代表取締役でキャリアコンサルタントの竹村孝宏氏は、次のように指摘しています。

 緊張感を与えられないリーダーは、メンバーとの関係が近すぎて「仲良しクラブ」になっている状態です。メンバーのパフォーマンスが十分発揮されずに目標が達成できなくても、「まあいいか」と、なりがちです。そうなると、いつもそこそこの成果しか生み出せなくなってしまいます。

(引用元:日経クロステック|威圧するリーダーも放任のリーダーも部下の成果を下げる 太字による強調は編集部が施した)

上司と部下のあいだで、「まぁまぁ、仕事は気楽にやろうよ」という、お互いが楽をするためのネガティブな相互配慮が行なわれると、成果を出そうと言う意欲は失われます。同僚間でも同様です。ピアプレッシャーが弱い職場は、ダラダラとした空気に満ち、やる気のある人間にとって仕事がしにくい環境だといえるでしょう。

ピアプレッシャーが適度な場合

ピアプレッシャーが適度であれば、緊張感をもって働き、協調性を発揮することができます。営業サポート・コンサルティング株式会社代表取締役で50冊以上の著書を出版している菊原智明氏は、適度なピアプレッシャーが生むメリットに関し、次のように述べています。

ピアプレッシャーはマイナスなことばかりではありません。「仲間に迷惑をかけてしまうから、自分の担当の仕事は責任を持ってきちんとやろう」という考え方を自然にもつようになるプラスの効果もあります。

(引用元:アイデム 人と仕事研究所|【第31回】手詰まり状態から抜け出すための「ピアプレッシャー」 太字による強調は編集部が施した)

普段仲のよい同僚や気さくな上司が、勤務時間中は仕事にきちんと集中しているのを見たら、「自分もしっかり仕事をしなければ」と思えますよね。赤の他人しかいない図書館とは異なり、互いがライバルや仲間である職場では、適度なピアプレッシャーが生まれ、理想的ともいえるモチベーションを皆が保てるのです。

自宅で仕事や勉強をしているとき、モチベーションや集中力を維持するのが難しいと感じる人が多いのは、ピアプレッシャーがほとんど存在しない環境だから。反対に、ある程度のピアプレッシャーが存在する職場は、実は理想的な作業環境なのです。

ピアプレッシャーが過剰な場合

ピアプレッシャーは、他人に同調しすぎてしまうことで強くなります。協調性や仲間意識が強すぎる環境では、ピアプレッシャーがネガティブに働いてしまいます。

コミュニケーションデザイナーや人財育成コンサルタントとして数々の実績がある吉田幸弘氏が挙げる以下の例も、ピアプレッシャーが働く身近な例です。皆さんにも心当たりがあるのではないでしょうか?

今日は何が飲みたいかを考える前に「とりあえず生」と言って、それからメニューを見る。 よくよく考えると、今日は肌寒いから焼酎のお湯割りが飲みたい、と思っていたはずなのに、つい相手に合わせて「とりあえず生」と言ってしまう(「同調圧力」に負けてしまう)。

(引用元:東洋経済オンライン|「仕事が終わらない人・終わる人」明白な3つの差 太字による強調は編集部が施した)

吉田氏によると、上記の例のように「無意識に思考を停止してピアプレッシャーに屈してしまう」ことは、仕事中にも起こるのだそう。たとえば、無駄の多い日報や報告書、議題がなくても毎日招集される会議など。影響力を持つ一部の人間が始めたことに、ほかの人間が追随してしまうのです。「とりあえず生」のように同調する人が多いと、「自分もそうしなければ」というピアプレッシャーを強く感じることでしょう。

ピアプレッシャーのメリットとデメリット3

ピアプレッシャーと日本企業

日本では、海外に比べてピアプレッシャーが強いといわれています。

企業や医療機関向けのヘルスケアサービスなどを提供する、株式会社とらうべ取締役副社長の山本恵一氏によれば、日本の「集団文化」の影響が大きいとのこと。日本でピアプレッシャーが強くなる背景には、個人主義の欧米と異なり、周囲との調和を重んじて全体の利益を最優先する「精神的風土」があるのだそうです。

また、劇作家・演出家であり『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる』(岩波書店、2019年)の著者でもある鴻上尚史氏は、日本人の「同調圧力の強さ」と「自尊意識の低さ」を指摘しています。このような気質が、過重労働やパワハラが横行する「ブラック企業」を生むのだそう。

察しと思いやりの精神が強すぎるともいえる日本において、適度なピアプレッシャーを保つのは実に難しいことです。日本では過剰なピアプレッシャーに苦しむ人のほうが多いかもしれませんね。

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ピアプレッシャーに負けない方法

ピアプレッシャーは実に厄介な存在であることがわかったかと思います。ピアプレッシャーを適度に保ち、ストレスのない働き方を実現するにはどうすればよいのでしょうか? メンタルコーチであり、経営者など2,300人以上の問題解決に携わったという大平朝子氏は、同調圧力を前向きに利用するため、次のようにアドバイスしています。

相手の意向と、自分が提供できるものにギャップがあることは、少なくありません。あなたは自分の考えやキャパを主張してもいいのです。その上で、現実的な落としどころを探っていくのが、オススメです。

(引用元:NIKKEI STYLE|周囲に合わせすぎ? 同調圧力を逆利用する3つの方法 太字による強調は編集部が施した)

大平氏が勧めているのは「課題の分離」というアドラー心理学の考え方。「自分がコントロールできること」と「自分ではコントロールできないこと」を明確に区別する手法です。

たとえば、「作成した書類を上司に見せたら、強い口調で注意され、修正するよう指示された」とき。あなたができるのは、「書類を修正し、注意されたことを今後に活かす」ことまででしょう。「上司の機嫌が悪くなった」としても、それは上司がコントロールすることであり、あなたが悩む必要はありません

同じように、自分が担当する仕事が完了したのであれば、残業をするかしないかは、業務上の必要性から判断しましょう。あなたが早めに退社したことで、ほかの社員が抱える感情は、あなたがコントロールできるものではありません

「自分がコントロールできること」のみに意識を向ければ、ピアプレッシャーが生む同調圧力をはねのけられるはずです。

***
ピアプレッシャーは、仕事のメンバーが足並みをそろえ、よい仕事をするのに必要なもの。重要なのは、ピアプレッシャーに対して、自分なりのスタンスを持つことです。ピアプレッシャーが適度に存在するよう、うまく調整していきましょう。

(参考)
ダイヤモンド・オンライン|残業発生のメカニズムを解明、職場が長時間労働に麻痺する病理とは
ITmedia ビジネスオンライン|“同調”がお互いの絆を深める
日経クロステック|威圧するリーダーも放任のリーダーも部下の成果を下げる
アイデム 人と仕事研究所|【第31回】手詰まり状態から抜け出すための「ピアプレッシャー」
東洋経済オンライン|「仕事が終わらない人・終わる人」明白な3つの差
Mocosuku|行き過ぎた団結力? 「ピア・プレッシャー(同調圧力)」を回避する方法
MOC|鴻上尚史氏が思う、日本における同調圧力と自尊意識の低さ。死を命じる組織にいて人生をまっとうできるか【第2回】
NIKKEI STYLE|周囲に合わせすぎ? 同調圧力を逆利用する3つの方法

【ライタープロフィール】
武山和正
Webライター。大学ではメディアについて幅広く学び、その後フリーのWebライターとして活動を開始。現在は個人でもブログを執筆・運営するなど日々多くの記事を執筆している。BUMP OF CHICKENとすみっコぐらしが大好き。

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