「なんで誰もわかってくれないんだ」と思ったら。“本当の私” を理解してもらうための3ステップ

誰も自分をわかってくれないと落ち込んでいる女性

周囲あるいは目の前の相手に対し、「もっと自分をわかってほしい」と感じることはありますか? 必要なステップを適切に踏んでいけば、その望みは叶えられるかもしれません。「誰も自分をわかってくれない」から「自分は理解されている」に変えていくコツを紹介しましょう。

まずは認知バイアスを知ろう

認知バイアスとは誰にでもある “偏った思い込み” のことです。その人の平常心や自己肯定感を保ってくれることもあれば、大きな問題へと発展させることもあるのだとか。

そこで、まずは「自分を理解してほしい気持ち」に影響を与えうる認知バイアスを知り、できるだけ物事のとらえ方をニュートラルに近づけることからスタートです。ここでは、ふたつの認知バイアスについて説明します。

◎ 透明性の錯覚

コーネル大学心理学教授のトーマス・ギロビッチ氏らは、1998年に「透明性の錯覚」という認知バイアスを明らかにしました。自分の考えや感情が、実際以上に他者に伝わっていると思い込んでしまう錯覚です。

同氏らが行なった実験では、実験参加者らが予想した「自分のうそを見破る人の数」が、「実際にうそを見破った人の数」よりも多かったそうです。

◎ スポットライト効果

また、1999年にギロビッチ氏らは、一般的に “ちょっと恥ずかしいTシャツ” を実験参加者に着せ、人々がいる教室に入って出たあと、「何人くらいがあなたのTシャツに注目したと思うか?」と質問したそうです。人を入れ替え、同じ方法で複数回行なったそう。

するとTシャツを着た当人は、実際にそのTシャツに気づいた人数よりも多い人数を予想したのだとか。このように、自分が他者から注目されている程度を実際よりも大きく見積もることを「スポットライト効果」と呼びます。

皆に注目されていると思い込んでいるビジネスパーソン

思うほど自分は周囲に見透かされておらず、注目もされていないわけです。だからこそ自分を理解してもらうには、能動的に動く必要があります。これらをふまえ、他者に理解してもらうためのコツを段階ごとに説明していきましょう。

1. 相手の見地に立つ

20世紀に最も影響を与えたビジネス書と言われる、スティーブン・R・コヴィー博士の世界的なベストセラー『7つの習慣』には、第5の習慣として「まず理解に徹し、そして理解される」といった言葉が示されています。相手の見地に立ち、相手を深く理解するよう努め、そのあとで自分を理解してもらうことが大切なのだそう。

言葉を受け止めるだけではなく、相手に感情移入し、相手の立場になりながら話を傾聴すれば、いずれ相手は心を開き、今度はあなたを理解しようとするはず。

でも、「どうやって相手の見地に立てばいいのかわからない」という方もいるでしょう。ならば先に次項の取り組みが必要です。

相手に感情移入し、相手の立場になりながら話を傾聴する女性

2. 相手から見た自分はどうか?

一般財団法人日本コミュニケーショントレーナー協会によれば、相手の立場を考えるのが苦手な場合は相手から見た自分について考えてみるといいそうです。そうして自分を客観視できれば、相手の立場にも考えが及ぶようになるのだとか。

「相手から見た自分を、どうやって自分が考えるの?」と自分を客観視すること自体が難しい場合は、次項の取り組みが役立ちます。

「自分を客観視するって……、どうやるのよ?」と開き直る若い女性

3. メタ認知的モニタリング

自分を客観視できるようになりたいなら、メタ認知的モニタリング能力を養いましょう。メタ認知とは、自分が認知(理解・判断)している物事を、もうひとりの自分が認知すること。メタ認知的モニタリングとは、自分の思考や行動の傾向、短所・長所を客観的に確認していく作業です。

クラウド人材管理ツールを提供する株式会社カオナビ運営の「カオナビ人事用語集」によれば、特に「怒り」の感情が湧き上がっているときを狙って自己分析すると、自然とメタ認知的モニタリング能力が高まるそうです。

たとえばイラっときたとき「私はいま何に対して怒っているのかな?」と自分に問いかけてみるのです。自問してみるとわかりますが、意外と何に対して自分が怒っているのか明確に把握できていないもの。

そこですかさず “自分の怒り” を分析すれば冷静になることができ、もれなくメタ認知的モニタリング能力も高まるわけです。なんせ、自分に問いかけたり冷静に分析したりしているのは、自分を客観視するもうひとりの自分にほかならないのですから。

***
どうやって相手の立場になればいいのかわからない、自分を客観視する感覚がいまひとつわからない、といった状態から「自分は理解されている」状態に運んでいきたい場合は、今回紹介した内容を後ろから逆戻りしてみてください。

  1. 自分の怒りを自己分析してメタ認知的モニタリング能力を高める
  2. 相手から見た自分はどうか? と考えながら、相手の立場にも考えを及ばせる
  3. 相手の見地に立ち、相手に感情移入して話を傾聴し、深く理解するよう努める

この取り組みは、周囲があなたを理解しようとする状況をつくるだけではなく、あなたの人間性も高めてくれるはずです。

(参考)
カオナビ人事用語集|【メタって何?】メタ認知とは? 意味、2つの鍛え方、ビジネスの具体例など
一般財団法人日本コミュニケーショントレーナー協会|【解説】誤解される人の特徴と対策とは?
人材育成・研修のリクルートマネジメントソリューションズ|第16回_第5の習慣「まず理解に徹し、そして理解される」その1~「相手の話を聞く、気持ちを汲む」とは?
人材育成・研修のリクルートマネジメントソリューションズ|第17回_第5の習慣「まず理解に徹し、そして理解される」その2~「感情移入の傾聴」とは?
錯思コレクション100 Collection of Cognitive Biases|透明性の錯覚
錯思コレクション100 Collection of Cognitive Biases|スポットライト効果
錯思コレクション100 Collection of Cognitive Biases|錯思コレクション100について
働き方改革研究所|情報伝達の錯覚(2)スポットライト効果
Wikipedia|Thomas Gilovich

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