仕事がうまくいかない。人間関係のことで悩み心が落ち着かない。そのうえテレビやインターネットでは暗いニュースばかり。つらい気持ちがどんどん膨らんでいく……。
そんなあなたに向けて、「つらい気持ちをいますぐ手放せる方法」を7つご紹介します。どれかひとつでもいいので試してみてください。きっと前向きになれるはずですよ。
- 【1】体を動かす
- 【2】心地よいと感じる作業に没頭する
- 【3】人前での振る舞い方を変えてみる
- 【4】つらい気持ちを人に打ち明ける
- 【5】小さなわがままを言う
- 【6】つらい出来事にもプラスの要素を見いだす
- 【7】つらい気持ちを受け入れる
【1】体を動かす
気持ちが沈むと、何もせずにじっとしていたくなるもの。ですが、気持ちを上向かせるためには、体を動かすのが正解です。
ストックホルム商科大学教授で、幸福感について研究するミカエル・ダレーン氏によると、運動して心拍数が上がると、気分までも上向くことが実験でわかったそう。
体を動かすと、ストレスや痛みを和らげるエンドルフィンや、高揚感をもたらすドーパミンなどの “幸せホルモン” が分泌されるため、幸福感が高まるのだとダレーン氏は言います。
激しい運動をする必要はありません。ダレーン氏によれば、エスカレーターではなく階段で昇り降りする程度のごく軽い運動でも、効果が出るとのこと。とにかくじっとせずに動くことが大切だそうですから、家にいるときは掃除や片づけをして、体を動かすのもいいかもしれませんね。
【2】心地よいと感じる作業に没頭する
ニュース番組やSNSから発信される情報を見てつらい気持ちになったら、ひとつの作業に没頭するといい――こう述べるのは、公認心理師の大美賀直子氏です。
情報の発信元となるテレビやスマートフォンをオフにしたうえで、ひとつの作業に没頭すれば、「いま生きている自分」と「心を惑わす情報」とを適切に切り離すことができるそう。作業中の心地よさや感動を味わうことで、しだいにつらさが和らぐと大美賀氏は言います。
たとえば、ヨガ、絵画、散歩など、趣味に没頭してみましょう。これといった趣味がなくても心配は不要です。大美賀氏いわく、料理や食事に時間をかけるだけでも十分。料理の楽しさや食事の美味しさをじっくり時間をかけて味わうようにすれば、心の安定を取り戻しやすくなるそうですよ。
【3】人前での振る舞い方を変えてみる
内気で職場の人と打ち解けられない。怒りっぽくて家族と衝突しがち。人間関係がうまくいかないのは、自分の性格のせいかもしれない……。
このように、自分が嫌になってつらいときは、性格を変えようとするのではなく「行動」を変えて、つらい気持ちを手放しましょう。
精神科医の樺沢紫苑氏は、たとえ違う性格を演じてみても、今度は別の欠点が気になってしまうと指摘します。残念なことに人間は、自分の性格には永遠に満足できないものなのだそう。
そこで樺沢氏がすすめるのが、行動を変えること。行動を変えれば、周囲との関係を変えることができるので、つらい気持ちから解放されるというわけです。
たとえば「内気なせいか、職場であまり話しかけてもらえない……」と悩んでいる場合。「“積極的で社交的な自分” にならなくちゃ」と焦っても仕方がありません。話しかけられたら笑顔で返すといったように、行動をほんの少しだけ変えれば、話しかけられやすい雰囲気をつくれて、職場の人との交流が増えるでしょう。
また「怒りっぽくて家族と口喧嘩になりがちなこと」が悩みなら、言いたいことをすぐ口にしないと行動を変えれば、怒りっぽい性格でも喧嘩は減って、悩みが解消するかもしれません。
自分の性格が嫌になったら、どうすれば周囲との関係がよくなるかを考え、行動を変えてみましょう。「つらい……」と感じる機会を減らせますよ。
【4】つらい気持ちを人に打ち明ける
多くの人があなたに手を差し伸べたいと思っていることに気づいてほしい――樺沢氏はこのように訴え、つらい気持ちを誰かに相談することをすすめています。
樺沢氏いわく、相談することには、悩みの内容が整理できて問題を解決しやすくなるだけでなく、ストレス発散・不安減少などのメリットがあるとのこと。たった1回、30分相談するだけでも、効果があると言います。
親友や家族といった相談相手が近くにいない場合は、自治体に設置された各種相談窓口を活用するとよいと樺沢氏。すべての自治体に、健康、お金、法律などさまざまな分野の相談窓口があるそうです。
どんな悩み事に対しても相談相手となってくれる人が必ずいます。つらい気持ちはひとりで抱えず、誰かに打ち明けてはいかがでしょうか。
【5】小さなわがままを言う
本当は残業したくないけれど、「もしそんなことを伝えたら、自分勝手だと思われるだろう」と考え、残業を引き受けてしまう……。このように自分を犠牲にしがちでつらい人は、小さなわがままを意識的に言ってみましょう。
精神科医の井上智介氏によれば、自己肯定感が低いときほど、自己犠牲が多くなりがちだそう。「自分は自分のままでいい」と思えない=自分の本音を無視してしまうことが、他人を優先することにつながるのです。
そんな自己犠牲を続けていたら、いつまでたっても自分のことを大事に思えないまま。そこで井上氏が提案するのが、「小さなわがまま」を言うことです。
たとえば、予定があるのに残業を頼まれたときは、ほかの人に頼めないか相談する。ひとりで過ごしたいのに食事に誘われたのなら、「別の日はどう?」と提案する。小さなわがままを主張して自己犠牲を減らしていけば、「なんだか、最近つらいな……」という気持ちから解放されるかもしれませんよ。
【6】つらい出来事にもプラスの要素を見いだす
いま、あなたがつらさを感じる原因はなんでしょう? その原因を「いいとらえ方」で見られれば、つらさが和らぐかもしれません。
心理学者のタル・ベン・シャハー氏いわく、幸福感を左右するのは「出来事そのもの」ではなく「出来事をどのように解釈するか」だとのこと。あることで失敗したとき、失敗の事実にだけ目を向けて自分を責める人がいる一方で、失敗から何かを学ぼうとする人もいます。シャハー氏によれば、後者のように、どんな状況も「いいとらえ方」をすれば、幸福感が高まるのだそうです。
幸福感を高めるコツは、「何を学べたか」や「どう成長できるか」をじっくりと考えることだとシャハー氏。
ミスをしてつらいときは「ミスのおかげで仕事の効率的な進め方を学べた」。試験に落ちてつらいのなら「次は猛勉強しようと本気になれた」――このように、つらいと感じる出来事にプラスの要素を見いだして、幸福感を高めましょう。
【7】つらい気持ちを受け入れる
ここまでさまざまな対処法をご説明しましたが、つらいと感じてはいけないわけではありません。むしろ「いま自分はつらいんだな」と、その気持ちを受け入れることが心を軽くします。
シャハー氏によると、つらい気持ちに自ら寄り添うと、つらさを和らげることができるそうです。
不安や悲しみが湧いてきたときには、その気持ちに数分間浸り、できるだけ深い呼吸を続けながら、泣きたくなったら我慢せずに泣く。こうしてつらい感情をしっかり受け入れることで、自分に優しくなれて、最終的にその感情を手放しやすくなると、シャハー氏は言います。
もし仕事、人間関係、世のなかのニュースなどに対してつらい気持ちが湧いてきたら、その気持ちを押し殺さずに受け入れましょう。やがてそのつらさから解放されるときが来るはずですよ。
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ご紹介した方法を以下にまとめます。
今回の記事がつらい気持ちを抱えている人の役に立てば幸いです。どれも簡単にできることばかりですので、ぜひ試してみてくださいね。
(参考)
東洋経済オンライン|幸福感の高い人とそうでもない人の間の意外な差
NIKKEI STYLE|幸せ感よぶ脳内ホルモン 「エンドルフィン」の作り方
R25|人間が感じる“幸せの正体”を徹底解説。精神科医が教える「3つの幸福物質」の出し方
All About|怖いニュースを見るのが辛い…不安が強いときの対処法
樺沢紫苑 (2020), 『ストレスフリー大全』, ダイヤモンド社.
厚生労働省|ストレスをためない暮らし方
プレジデントオンライン|産業医が伝授「自己肯定感」がダダ下がったときに効く、自分への質問5つ やりたいことが見つかる問いかけ
タル・ベン・シャハー著, 成瀬まゆみ訳 (2015), 『ハーバードの人生を変える授業』, 大和書房.
【ライタープロフィール】
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。