「会社の方針だから……」
「上司から命じられたから……」
こんなふうに “言われるまま” 仕事をこなす日々が続き、自分を失ってモヤモヤしている人はいませんか?
チームの一員として働いている以上、時に自分を押し殺す必要があるのは仕方のないことかもしれません。とはいえ、いつもそうでは仕事に対して積極的になれませんよね。「自分はこれをやりたい!」「これをしていると楽しい!」ということに気づければ、それが動力源となってあなたの仕事をもっとブーストさせてくれることでしょう。
そこで今回は、オンライン学習プラットフォーム「Udemy」の講座『オンラインで学べる「直感と論理をつなぐ思考法」!妄想からインパクトを生みだす【ビジョンのアトリエ講座】』より、自分の内面を知る方法を探っていきます。
講師の佐宗邦威氏は、発行部数9万部を超えるベストセラー『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』の著者。かつてP&Gにてファブリーズやレノアなどのヒット商品のマーケティングを手がけ、現在は戦略デザインファームBIOTOPEのCEOとして活躍しています。そんな佐宗氏がすすめるのは、シンプルな「手を動かす」という方法でした。
「手を動かす」と脳はどんどん動いていく
みなさんは普段、何か思考を巡らすときにどんなスタイルをとっているでしょうか。腕を組みながら必死で頭を働かせる……目を閉じてあれこれ考えてみる……そうやって出てきた考えをノートやパソコンにメモしていく――こういう人が多いのではないでしょうか。しかしこれではまだ、脳を十分に使えていないかもしれません。
脳が無数の神経細胞による複雑なネットワーク構造になっていることは、多くの方がご存じでしょう。つまり脳は、コンピュータのようにA→B→Cと直線的な処理をしているのではなく、複数部位が同時並行的に関わり合いながら認知活動を進めているのです。それゆえ、佐宗氏は「多くの場所を刺激すればするほど脳は活性化する」と述べます。「散歩中にアイデアがひらめいた」という話をよく聞くのも、体を動かしたり風景を眺めたり周囲の音を聞いたりすることが脳の刺激になるからなのでしょう。
そして、刺激を生み出すうえで有効な方法のひとつが「手を動かす」ということ。カナダの脳神経外科医ワイルダー・ペンフィールド氏が示したところによれば、私たちの脳の感覚皮質(触覚・視覚・聴覚・嗅覚といった感覚刺激を受け取る大脳皮質領域の総称)のうち、手からの刺激を受け取る面積が非常に大きいのだそう。つまり、手を動かすということは、脳のより多くの場所を刺激する契機となるのです。
「考えて書く」のではなく「書きながら考える」――とりあえず手を動かしてみることは、脳を働かせて思考を前に進めるうえで大切だと言えるでしょう。
1日10分の「感情ジャーナリング」で自分の内面が見えてくる
自分の内面を深掘りしたい方は、佐宗氏がすすめる「感情ジャーナリング」をやってみましょう。これは、自分が感じていることや考えていることを思いつくままに手で書きなぐっていくというもの。無理にまとめたり文章を整えたりしようとする必要はなく、頭に浮かんだことをそのまま綴っていきます。
佐宗氏が提案する、感情ジャーナリングのルールは以下。
- お気に入りのノートを用意
- 毎日「10分」確保できる時間帯を決める(※「起床時」「通勤中」「寝る前」など)
- テーマに沿って1日2ページ書く(※途中で止まっても2ページ埋まるまでは続ける)
- できれば1週間続ける
嬉しいこと、楽しいこと、気がかりなこと、不安なこと、怒り、悲しみ――感情ジャーナリングは、「いまこの瞬間」の感情に焦点を当てます。この効果について、佐宗氏は次のように語っています。
「自分の内面で考えていることは、普段は流れては消えていくだけ。それを止めてみることで、自分というものにアクセスしやすくなる」
「人目を気にして自分を取り繕い続けると、自分の本当の感情がわからなくなる。(感情ジャーナリングを通して)自分が最も蓋をしやすい感情も引き出してあげられる」
自分を押し殺して “言われるまま” 仕事をこなす日々が続いている人は特に、自分の感情と正面から向き合う機会はあまりないかもしれません。でも、自分では感情を「押し殺している」つもりでも、その瞬間瞬間ではきっといろいろなことを感じているはず。それを自覚できないのは、佐宗氏が述べる「感情を止める」ということをしていないからにほかなりません。
ぜひ1日10分だけ時間をとって、自分自身と対話する時間を設けてみてください。手を動かして脳を刺激しつつ自分の感情と向き合えば、それまで見えづらかった本音や仕事に対する隠れた情熱が見えてくるかもしれません。
内面を知ることは「ビジョン思考」の原点となる
ここまで感情ジャーナリングを紹介してきましたが、このメソッドは「自分の内面に気づける」というところを越えて、もっと大きな意義を手繰り寄せてくれます。それは、「大きなイノベーションにつながる『ビジョン思考』の原点になる」ということ。佐宗氏は、ビジョン思考を「自分の内面から出てくるビジョンを具体化し、世に問いかけながら独創性をつくっていく思考法」と定義づけています。
定型的なフローやロジックのもと再現可能なアウトプットを得る――これが一般的なビジネスの現場での思考法でしょう。重要視されるのはマニュアルや論理性。これがあることで、誰がやっても安定的なアウトプットが得られます。無駄がなくスマートだと言えますが、一方でオリジナリティがなかなか生まれないという側面も
一方のビジョン思考は、 “突然変異” が生まれやすい思考法です。新しい発想をするために、まずは意図的に思考を発散させます。数多くの試行を行ないながら、ある種ムダとも言える非線形なプロセスをたどり、徐々にひとつの方向性に収束させていく――このようにしてイノベーションが起こると佐宗氏は述べますが、そのスタート地点が「ビジョン」であり、自分の内面にある「モヤモヤした感じ」「こんなものがあったらいいなという願望」から思考が始まっていくのです。
佐宗氏は、「モヤモヤをどこに向けていいのかわからないなかでも、手を動かしながら形にしていく(=遊んでみながら方向性を見いだしていく)という初期のステージが非常に大事」だと述べています。そういった意味でも、感情ジャーナリングを通して自分の正直な内面に触れることは、独創的なアイデアを生み出す最初のきっかけになるかもしれませんね。
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自分を見失ってしまっては、いい仕事はなかなかできないでしょう。まずは感情ジャーナリングを実践して、自分の内面を探ってみませんか?
※「ジャーナリング」や「ビジョン思考」については、「Udemy」の講座『オンラインで学べる「直感と論理をつなぐ思考法」!妄想からインパクトを生みだす【ビジョンのアトリエ講座】』でより詳しく解説されています。ぜひご活用ください!
「Improving Lives Through Learning(学びで人生をもっと豊かに)」を事業コンセプトとして掲げる米国法人Udemy,Inc.が運営する、世界3,500万人以上が学ぶオンライン学習プラットフォーム。2015年より、ベネッセコーポレーションが日本における独占的事業パートナーとして提携を開始した。C to C(Consumer to Consumer)プラットフォームで世界中の「教えたい人(講師)」と「学びたい人(学習者)」をオンラインでつなげている。最新のIT技術からビジネス、趣味まで幅広い領域をオンラインで学ぶことができ、世界で約13万コースが開講中、約5万7,000名の講師が登録している。
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。