「最近、独学が流行っているらしい。自分も興味があるけど、独学っていったい何を勉強すればいいんだろう?」
「気持ち新たに独学にチャレンジしたい!……でも、何を学べばいい?」
そんな方必読。社会人に独学をすすめる知識人たちの見解を参考に、“独学する内容の決め方” についてご紹介します。あなたもこれを読んで、さっそく独学を始めましょう!
「勉強したい社会人必見! おすすめ学習ジャンル3選」でも、ビジネスパーソンにおすすめの勉強ジャンルを紹介しているので、あわせてご覧ください。
なぜ「いま」独学を始めるべきなのか?
そもそもなぜ、私たちはいま独学をしなければならないのでしょうか。識者らの見解をまとめてみます。
独立研究者の山口周氏によると、いまの社会人は50~60年働く必要がある一方、企業や事業が活力を維持できる “旬” の時期はたった10年ほど。同じ仕事で長く活躍し続けることは難しくなっていると言います。テクノロジーなどの急速な変化による会社や事業の変化を乗りきれるのは、自ら学ぶ力がある人だ――山口氏はそう断言します。
また、筑波大学准教授の落合陽一氏は、今後あらゆる仕事がAIに代替されるだろうと指摘。激動の時代において、知識を広げず、既存の価値観に頼りきっているだけの人は、いつしか職を失うかもしれません。
このような、ビジネスの旬が短くて多くの仕事がAIに代替されうる時代でも、勉強を続けて個人の価値を高めれば、兼業や副業といった組織に依存しない働き方が可能になる――こう述べるのは、一橋大学名誉教授・野口悠紀雄氏です。
たとえば、とあるメーカーの営業部員が、他社や他業界に関する知識もつけておけば、仮に自社事業の縮小で職を追われることになったとしても「自社製品のことしか知らない……」などとうろたえずにすみます。他業界の営業パーソンや他職種へと、柔軟にキャリアチェンジできるはず。
「いまこそ」独学すべき理由が、おわかりいただけたでしょう。
独学の「第一歩」としてすべきことは?
独学を始めるにあたりまずするべきは、「誤った思い込みを捨てること」。なぜなら、その思い込みが独学を妨げる恐れがあるからです。
野口氏は、次の3つの思い込みを捨てるようすすめています。
- 「勉強のためには学校に通う必要がある」
- 「独学は難しい」
- 「独学できる人もいるだろうけど、自分にはできない」
こうした思い込みには、学生時代の経験が関係していると野口氏は言います。勉強は先生に教えてもらうものだという考えは、「独学は難しい」「自分にはできない」という思い込みにつながりがち。
ですが、必ずしも学校に通わないと勉強できないわけではありません。有用なツールとして野口氏が挙げるのはインターネット。簡単に新しい情報を得られますし、「毎日ひとつ新しい言葉の意味を調べる」といった手軽な勉強でも、十分独学になると言います。
ですから、独学は決して難しいことではなく、思い込みさえ捨てれば誰にでもできること。「お金を払ってビジネススクールに行かないと……」「先生に教わるような勉強が自分ひとりでできるはずない……」なんて思う必要はないのです。
独学する内容の決め方1.「好き」をとことん深める
独学する決心ができたら、「何を」独学するのか考えましょう。この記事ではふたつの方法をご提案します。ひとつめは「好き」をとことん深めるというもの。
実業家の堀江貴文氏は、こう言います。
――いまは好きなことをしてお金を稼ぐことができる時代。自分の「好き」という感情に純粋に向き合ってひたすらに没頭すれば、いつかそれは仕事になる――
仕事になるレベルまで「好き」を深めれば、会社を辞めて独立したり、定年後も働き続けたりすることができるでしょう。
「そうはいっても、自分が心から好きなことがなんなのかわからない……」という人におすすめしたいのが、「好きなことを100個書き出す」というワークです。
キャリアコンサルタントの池田千恵氏によると、以下のポイントを押さえながら「好き」をどんどん書き出すことで、自分の興味の方向性が見えてくるのだそう。
- 好きならなんでも書いてよい
- 同じようなことを何度も書いてもよい
- 名詞だけでもよい(例:資産運用、読書)
- 文章の長さがバラバラでもよい
- 小さなことでも書いてよい
「好き」を100個書いたら、なかでも特に “ぐっとくる” キーワードに○をつけます。そのキーワードを眺めながら「その心は?」「私がこれにぐっとくる理由はなんだろう?」と考えることで、自分の価値観が浮き彫りになるのだそう。
というわけで、筆者もやってみました。
100個の「好き」のなかで○をつけたのは「カフェ」「温泉」「アロマ」など。ここから自分の心を深掘りすると、筆者は「居心地のよさ」「健康」「癒し」といった価値観を大切にしていると認識できました。また、「人」に関するキーワードが複数出たので、人との関わりに喜びを感じる性格なのかもしれません。
そこで、筆者が独学するとしたら「健康や癒しに関すること」かつ「人に喜んでもらえること」について勉強するとよさそうです。一例は心理学でしょうか。自分の心を健やかに保ちつつ人の悩み相談にも乗れるようになるでしょうし、とことん学べばカウンセラーへの道も開けるかもしれません。
あなたも何を独学すればよいか悩んでいるなら、自分の「好き」を深めることから始めてみてください。
独学する内容の決め方2.「3つの分野のかけ算」に挑戦する
好きなことを深めるのもいいけど、もっと本業に近いことを学びたいという人には、「3つの分野のかけ算」に挑戦することをおすすめします。つまり、自分が精通する分野を3つもてるように勉強するということです。
これをすすめるのは、教育改革実践家で元リクルート社フェローの藤原和博氏です。3つの分野それぞれで100分の1(100人中トップ)を目指せば、3分野をかけ合わせたときに
(100分の1)×(100分の1)×(100分の1)=100万分の1
という、オリンピックメダリスト級の圧倒的にレアな人材になれると言います。
「3つも新しいことを独学するなんて無理……」という人でも、心配はいりません。藤原氏いわく、3つのうち1つは本業でよいとのこと。次の基準で3つの分野を選ぶといいそうです。
- 第1の分野……本業
- 第2の分野……本業に隣り合う分野
- 第3の分野……上の2つから遠い分野
特にポイントとなるのは、第3の分野の選び方。第1・2の分野から遠いものを選ぶことで、3分野を頂点とした三角形がより大きくなり、ビジネスパーソンとしての価値が高まるそうです。
たとえば、営業の仕事をしている人であれば、次のような学び方が考えられるでしょう。
- 第1の分野……「営業分野」の知識とスキルを極める
- 第2の分野……営業に近い「マーケティング分野」について学び、顧客と市場の両方を知り尽くした人材になる
- 第3の分野……上記の2分野から遠い分野を学び視野を広げる。たとえば「法律」「国際交流」「世界史」など
こうして3つの分野に精通すると、それぞれをかけ合わせてほかにはない人材になることができます。たとえば、「営業とマーケティングと国際交流」を学べば、国外顧客への売り込み方に詳しいマーケターになれたり、「営業とマーケティングと世界史」を学べば、グローバルな宗教観や歴史観を理解したうえで新商品を立案できる企画者になれたりするでしょう。
この方法は本業が起点となっていますから、「急に新しい勉強を始める勇気がない」人や「もっと本業を頑張りたい!」という人にもおすすめです。簡単にAIに代替される恐れのない、これからの時代を真に生き抜いていける力を手に入れましょう。
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「独学は難しそう……」などと尻込みする必要はありませんよ。好きなことを掘り下げるのもよし、本業に近いことに挑戦するのもよし! 独学に興味をもったなら、ぜひ始めてみてくださいね。
(参考)
J-CAST ニュース|コロナ禍で「独学」ブーム 在宅勤務で勉強時間増、20万部超えの書籍も
ダイヤモンド・オンライン|「独学」できる人しか生き残れない時代になった
落合陽一・堀江貴文(2018),『10年後の仕事図鑑』, SBクリエイティブ.
野口悠紀雄(2018),『「超」独学法 AI時代の新しい働き方へ』, KADOKAWA.
朝時間.jp|早起きがワクワクに変わる!「100個の好き」を書き出すコツと活用法
プレジデントオンライン|自分の価値をかけ算して「レアな人材」になれ
【ライタープロフィール】
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。