とにかく “○○” する。「意見が言えない」悩みを解決するには、結局これが一番いい

加藤彰さんインタビュー「意見を言えるようになるための方法」01

一般的に「日本人はプレゼンが苦手」だとされますが、一方で、「ビジネスパーソンにとってプレゼンテーション力が重要」とも言われます。どうすれば、周囲の人を説得できる伝え手になれるのでしょうか

アドバイスをお願いしたのは、加藤彰(かとう・あきら)さん。ディベートのなかでも競技に用いられる「即興型ディベート」のエキスパートである加藤さんは、まさに「説得力のある伝え手」です。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

説得力を支えるのは「論理」と「感情」の両輪

みなさんは、誰かを説得するときになにが重要だと思いますか? まずは「論理」が挙げられるでしょう。相手に納得してもらうには、大前提として自分の意見が論理立っているものである必要があります。論理として破綻している意見を相手が受け入れてくれるはずもありません。

でも、論理だけでは重要な要素が欠けてしまっています。その重要な要素とは、「感情」です。仮に、相手の感情に注目することなく論理だけで相手を説得しようとするケースを考えてみましょう。

たとえば、意見が対立している上司を説得しようとする場面。あなたの意見の論理は完璧なものであり、まさに正論と言えるものだとします。それをそのまま上司にぶつけ、いわば力技で説得しようとしたら? 上司には上司の立場があります。たとえあなたの意見が正論でありそのことを理解できたとしても、感情として反発し、「どうしても認めたくない」と思われることにもなりかねません。

そうではなく、相手の感情を満たしてあげることが大切。「たしかにそのとおり!」「そうすべきだよな!」と相手の感情をいい意味で動かすような、いま風にいえば「エモさ」が必要というところでしょうか。

このケースなら、「○○さんの意見も理解できます」と上司の感情に寄り添ったうえで「でもその意見にはこういう問題点があるからこそ、こうすべきではないでしょうか」と自らの論理を展開し説得するのです。そうすれば、上司もマイナスの感情が働くことなく、「たしかにそのとおりかもしれないな」と考えてくれるでしょう。

「人間は感情の生き物」とも言われます。論理だけでなく、感情の部分でも相手を納得させることが大切です。

加藤彰さんインタビュー「意見を言えるようになるための方法」02

失敗を恐れることなく、とにかく意見を言ってみる

でも、みなさんのなかには上司など誰かに意見を言うこと自体が苦手だという人もいることでしょう。そういう人は、少し荒療治になるかもしれませんが、「無理やりにでも意見を言う」経験をすることが大切だと思います。

私が専門とする「即興型ディベート」では、議題が出された20分後にはたとえ準備不足であっても討論を始めなければなりません。もちろん、相手の考えを想定しきれないことも、こちらの意見をまとめきれないこともある。それでもとにかく話し始めるのです。

すると、実際に言葉にすることによって自分の思考を客観視し、整理することができます。さらに、相手の反応を見ることもできる。そうして、どのように意見を伝えれば相手をより説得しやすくなるのか、あるいは逆にどうすれば相手は納得してくれないのかといったことも見えてくるのです。また、場合によっては、「微妙かもな」と思っていたハッタリの内容が、じつは「刺さる」ということも少なくありません。

そのようにして、なにがうまくいって、なにがうまくいかず、次はどうすればいいのかと問いかける――いわゆるPDCAを自分のなかで回していくことが大切です。失敗してもいいから、無理やりにでも一度意見を言ってみる。そのなかで改善点を見つけ、今後につなげるのです。

過去、ディベートも含めたさまざまな場で何度も失敗を重ねてきた私からすれば、失敗は悪いことでも怖いことでもありません。失敗した本人はそのことを強く覚えていて、ふとしたことから思い出しては恥ずかしいと感じるかもしれませんが、まわりは意外なほどあっさりとそのことを忘れていくものです。「失敗したらどうしよう……」などと頭を悩ますより、失敗から学ぶつもりで思いきって意見を口にしてみてほしいと思います。

加藤彰さんインタビュー「意見を言えるようになるための方法」03

意思決定の連続である人生はディベート力に左右される

加えて、日常生活のなかでみなさんの説得力を増す方法もお伝えしておきましょう。私がプチ・ディベートと呼んでいる方法です。

ディベートというとなにか特別な場で行なわれるものと思うかもしれませんが、そうではありません。日常はディベートのオンパレードとも言えます。たとえば、会社の同僚と一緒に飲みに行ったとします。たわいもない会話のなかでも、あるテーマをめぐって議論になるようなこともあるはず。その会話だって立派なディベートです。

そのテーマとは、なにも政治や経済のことでなくてもいいのです。転職すべきかどうかといった仕事に関することから、好きなスポーツや芸能人の話などなんでもいい。それをただの飲みの場での会話で終わらせるのではなく、自分と真逆の意見をもつ相手をどうすれば説得できるのかと考え、ディベートの実践の場にしてみてください。その積み重ねが、みなさんの説得力をどんどん高めてくれるはずです。

そして、最後にお伝えしたいのは、少し大げさに思えるかもしれませんが、ディベート力が人生を決めるということです。先に例として挙げた「転職すべきか」といったこともそうですが、人生には数多くの意思決定の場面が訪れます。それこそ「結婚すべきか」というようなことなら、人生を大きく左右する意思決定となるでしょう。いわば、人生とはディベートと意思決定の連続で、節目節目にディベートの機会がおのずと訪れるものなのです。

その場面で、自分のなかで賛成意見と反対意見をぶつけ合って討論するディベート力が不足していたらどうでしょう? ただの思いつきだけで意思決定をすることになり、のちのち大きな後悔の念を味わうことにもなりかねません。仕事で成果を挙げることはもちろん、人生をよりよいものにするためにも、ぜひディベート力を高めてください

加藤彰さんインタビュー「意見を言えるようになるための方法」04

【加藤彰さん ほかのインタビュー記事はこちら】
瞬時に考えて伝えられる人になる! 全ビジネスパーソン必携「3つの力」が身につく最強テクニック
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【プロフィール】
加藤彰(かとう・あきら)
九州大学大学院言語文化研究院学術研究者、跡見学園女子大学兼任講師、ディベート教育国際研究会役員、一般社団法人全国英語ディベート連盟国際委員会アドバイザー。東京大学法学部、東京大学公共政策大学院卒。在学時から即興型ディベートをはじめる。東京大学英語ディベート部元代表、現卒業会顧問。大学生全国大会優勝、審査委員長、アジア大会日本人記録樹立。外務省・文科省後援で世界初のSDGsにコミットする国際大会Kyushu Debate Open設立メンバー兼審査委員長。大学生北東アジア大会審査委員長、日本人初となる高校生世界大会招聘審査員。東大を中心に多数のコーチ実績に加え、日本の20以上の大学・高校・中学校や、企業向けに日本語・英語でのディベート講演経験あり。国際学会発表多数。経営コンサルティング企業マネジャーでもある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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