心の整理から記憶の定着まで。面倒くさがりのための3ステップ勉強術

デスクにて、やる気がなさそうな表情で頬杖をつく女性「新しいスキルや知識を身につけて、昇進や新たなキャリアチャンスに繋げたいけれど、取り組むのがおっくうだ……」

勉強する意欲はあるのに面倒くさく感じて行動できず、もどかしい思いをしていませんか? 筆者もそのひとり。忙しいなかでの勉強時間の確保、繰り返さなければすぐに忘れてしまうテキストの内容……考えるだけでやる気が削がれてしまいますよね。

しかし、面倒くさがりな人はムダを省きたい思いが強いため、効率的に成果が得られる仕組みを追求できる人でもあるなんて話も聞きます。

今回は、面倒くさがり屋でも勉強を効率的に進めるコツを、筆者の実践を交えてご紹介していきます。

【ライタープロフィール】
上川万葉
法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している。

ノートに面倒でやりたくないことを書き出す

勉強して新しいスキルや知識を身につければ、昇進やキャリアチャンスを得られるなど自分にとってよいこと尽くしなのに、なぜ勉強を面倒くさいと感じてしまうのでしょうか? それは、心に溜め込んでいる負の感情と、勉強する事実とがごっちゃになっているから。感情と事実を分ければ生産性は上がるのです。

人材戦略コンサルタントの大嶋祥誉氏は、「感情と事実とを混同して考えてしまいがち」なことが、私たちの生産性を下げてしまう原因になっていると述べています。(カギカッコ内引用元:THE21ONLINE|マッキンゼーで学んだ「2冊のノート」の感情コントロール術

たとえば漢字や英単語の暗記といった反復学習に勤しもうとするとき、「疲れそう」「退屈そう」だと感じて、せっかくのやる気が損なわれてしまうことがありますよね。

大嶋氏は、そんな負の感情をうまくコントロールするため、自分の気持ちをノートに書きなぐって感情と事実を分離する「クリアリング・ノート」を推奨しています。

大嶋氏によれば、ノートに「ただ書きなぐるだけで、感情が吐き出され、スッキリしてくる」そうです。「まず、自分の感情を客観的に『認める』こと」で「ストレスを上手に『手放す』こと」ができるのだとか。(カギカッコ内引用元:同上)

つまり、「自分は退屈な勉強方法が辛いんだな」などと自分の感情を認めてあげることで溜め込んでいたストレスを手放すことができ、その結果面倒くさがらず行動に移せるかもしれないのです。

つい勉強を面倒に感じてしまう筆者も、大嶋氏の勧める「クリアリング・ノート」をやってみることにしました。手順は以下のとおり。

  • キャンパスノートとペンを用意する。
  • ノートの左ページに、感情のままに自分の気持ちを書きなぐる。
  • 書き終わったらいったんノートを閉じる。
  • 右ページには、『賢者』になったつもりでアドバイスを書く。

筆者が書いた「クリアリング・ノート」

気持ちを書きなぐってみると、モヤモヤとしていた心のなかがスッキリとした感覚に。さらに、自分がやりたくないと思っていたことを文字として客観的に認識でき、気持ちをいったん受け止めることができたと思います。

次に、大嶋氏が勧めるように「右ページには、『賢者』になったつもりで、左ページの自分へのアドバイスを書」いていくことにしました。(カギカッコ内引用元:同上)筆者は、ミヒャエル・エンデ作『モモー時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語』(岩波書店, 1976)の、傾聴力に長けた主人公“モモ”を賢者に選択。

筆者が書いたクリアリング・ノート

画像は筆者が作成した

モモになりきることで「自分の伸びしろを見つけられてラッキーだと考えることもできるわよ」といった、優しく前向きなアドバイスが浮かんできました。モモの目線を通じて、これからやるべき事実が明確になったように感じたのです。

このように、クリアリング・ノートは感情と事実を分けるのに役立ちます。面倒に感じて行動に移せないときの打開策として、ぜひ試してみてください。

事前テストを勉強の前にする

勉強で面倒なことといえば、知識を記憶する作業。単語を何度も書き出し、暗唱し、テストで確認し……。苦行のような作業に耐えて一生懸命覚えても、すぐに忘れてしまいますよね。しかし、覚えようと勉強する前にテストを行えば、記憶が定着しやすくなるようなのです。

記憶定着アプリ「モノグサ」の最高技術責任者である畔柳圭佑氏は、記憶をする前に行なう自作のテストのことを「事前テスト」と呼んでいます。「事前テストを受けることで、いざ記憶しようとするときには、『あ、これは事前テストに出てきたことだぞ!』と感じて、情報が記憶として定着しやすくなる」んだとか。つまり、覚えようとする前に、勉強範囲のテストを自分で作成しておき、そのテストから勉強を始めるといいのです。

畔柳氏によれば「記憶する前に行なうのですから、もちろん正解率はほぼゼロになる」とのことで、筆者は案の定8割くらい不正解でした。でも大丈夫。記憶する前に行なうのですからわからなくて当然です。(ここまでのカギカッコ内引用元:STUDY HACKER|記憶の強化・保持・活用に効く「テスト」の力。意外にも “覚える前” にやるのが重要だった 太字は編集部が施した)

実際に事前テスト後に教科書をふりかえると、「これは事前テストでわからなかった問題だ」と認識することができ、その知識は記憶として定着しやすかったように思います。つまり、「事前テストでわからなかった」というインパクトがあったからこそ記憶が強化されたのです。

ノートに書き込む人の手元

復習テストに「エビングハウスフセン」を使う

勉強して覚えたことを忘れずにいるためには、面倒でも復習が欠かせません。それも、一度きりの復習ではなく何度も繰り返し復習する必要性は誰もが感じるところですよね。

前述の畔柳氏も、「定期的なテストによって復習し、覚えたことを忘れないようにしていく」ことが大切だと主張しています。(カギカッコ内引用元:記憶定着アプリ開発者「記憶は苦しいものではない」。ラクに効率よく覚えるための4ステップ)つまり、定期的に自分にテストを課していくことが最適な復習の方法なのです。そこで筆者は、定期的な復習テストを叶えるツールを探してみました。

見つけたのはエビングハウスフセンです。エビングハウスフセンとは、「記憶定着のためのベストな復習のタイミングが一目で分かるふせん」で、「ドイツの心理学者・エビングハウスが提唱した、時間の経過と記憶の関係をグラフで示した『忘却曲線』をヒントにしている」とのこと。(カギカッコ内引用元:高校生新聞オンライン|「記憶力がアップ」新発想ふせん 生徒のアイデアが特許取得、学校から大口注文も)計画どおりに復習するために、復習のタイミングを思い出させてくれる画期的なふせんなんです。

筆者が用意した「エビングハウスフセン」

筆者が用意した「エビングハウスフセン」

さっそくエビングハウスフセンを使って復習テストの計画を立ててみました。復習のタイミングとして、「『学習した翌日』『1週間後』『4週間後』」が設定されています。(カギカッコ内引用元:同上)

筆者が用意した「エビングハウスフセン」

画像は筆者が作成した

すでに日付が印字されているので、そのとおりに復習テストを実施し、終わったらはさみで切っていけばいいんですね。これなら面倒くさく感じずに復習できる気がしませんか? たとえば最初のテストを8月7日にすると……1回目の復習テストは8月8日、2回目は8月14日、3回目は9月4日が復習のタイミングとなります。

筆者は現在、1回目の復習テストでは6割程度正解、2回目では7割程度正解。定期的に復習テストをすることで、記憶への定着が実感できています。

事前テストから勉強を始め、最適なタイミングで繰り返し復習テストをしていけば、効率的に知識を記憶することが可能です。

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面倒くさいのはムダなことをしたくないから。本記事でご紹介した「クリアリング・ノート」で感情と事実を分け、「事前テスト」と「復習テスト」をすることで記憶する作業を効率化できれば、今度こそ勉強を継続できるかもしれませんよ。

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